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第二部 第1章
226.都市伝説 〜 イザベル視点/ネロウディアス視点 〜
しおりを挟む「ディバイン公爵夫人、テオバルド様はお元気ですか」
「ディバイン公爵夫人、テオバルド様がデレたとは本当ですの!?」
「ディバイン公爵夫人、テオバルド様の新たな情報を何でも良いのでくださいませ!」
子供パーティーで殿下たちの親しい友人を集めてとなると、当然皇后様の親しいママ友が集まるわけで……、やはり来たのね。テオ様ファンクラブのメンバーが。
「皆様、相変わらずテオ様推しですのね」
乾いた笑いしか出てこないが、テオ様ファンクラブの面々は目を見開いて情報を待っている。若干血走っていて恐ろしい。
「あの、テオ様の体調は万全ですわ。バランス良く毎日お食事を取っております。デレ……というのでしょうか……その、わたくしや息子には笑顔を見せてくれますのよ」
ちょっと照れながら伝えれば、各々その情報(?)を噛み締めていらっしゃるので、やっぱりちょっと怖い。
「はぁ……、ディバイン公爵夫人が羨ましいですわ。うちの主人なんて、最近は枕が臭くて……」
「あら、加齢臭? ウチは抜け毛が酷いの」
「わたくしの夫なんてすでに抜ける毛もないですわよ」
まぁっ、オホホッ、と笑い合っているが、皆様旦那様が禿げている事はそんなに気にされていないようだ。それよりも体調や、食べ物、お酒にタバコと、病気が心配なようで、何だかんだと愛を感じる。
「その点、テオバルド様はそんなこと絶対ないですものね」
絶対かはわからないが、確かにテオ様は髪もふさふさで、体臭も薄い。なんなら良い匂いですし、お腹も出ているどころか、シックスパック……。肌もツルツルですわね。
「テオバルド様は年を取らないって都市伝説、本当なのかしら……」
「10年前より若くなっている気もしますわよ」
そんなバカな……。
「実は人間ではなく、妖精王ではないかって噂、ご存知?」
「知っていますわ! わたくしテオバルド様は妖精王だと信じておりますのっ」
実際に妖精を顎で使っておりますから、その噂も間違ってはいないのかもしれませんわね。ですが、何故そこまで噂を盲目的に信じられるのか……。
「テオ様が人間じゃない説、出回っているわよ」
皇后様まで。妖精を顎で使っている事を知っているからか、パチンッと音がしそうな勢いのウィンクをした後、ニヨニヨ笑っておりますけど、その笑い方、おかしいですわよ。
「テオ様の事は置いておくとして、こちらに皇帝陛下はいらっしゃいませんが、お仕事ですの?」
「え? あら、本当、ネロったらどこに行ったのかしら」
皇后様、偶には推しだけでなく、ご自身の旦那様も見てあげてくださいまし。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
皇帝ネロウディアス視点
「お菓子の家だ!」
「本物?」
「すごーい!!」
朕も作るのを手伝ったお菓子の家に、子供らが群がってすごい! 可愛い、美味しそう!! と、大人気なのだ。
そうだろう、そうだろうと頷きながら、我が子らの晴れ舞台を見守る。
「へ、陛下……あの、やはりその格好はどうかと……」
「ぬ? どこかおかしいだろうか??」
「いえ、おかしいというか……その、皇帝陛下がなさるような格好では……」
「? 自分で言うのもなんだが、朕はなかなかにこの格好が似合っていると思うのだ」
「え……」
「子供らも気付いていないのだぞ」
子供パーティーに朕が忍び込んだ事は、誰も気付いていないのだ。もしかしたら、朕にはスパイの才能があるのかもしれぬな!
「はぁ……、皇帝陛下がまさか、シェフの格好をしているとは、誰も思いませんから……ただ、殿下たちは……」
大人は入室禁止の子供パーティーで、唯一入れるのはシェフと護衛と侍女だけなのだ。だから、朕はこっそりシェフに紛れて入ってきた。
「ネロおじさま、どりゃやき、くださーい!」
「おおっ、ノアか! 朕のどらやきが食べたいのだな。よしよし、大きいのをサービスしてあげるの、だ……ん?」
「おっきぃ、どりゃやき!」
「の、ノア……何故、朕だとわかったのだ!?」
「? ネロおじさま、ネロおじさまよ??」
ノアは、もしや真実を見抜く目を持っているのか!?
「ちろい、およーふくの、ネロおじさま!」
「さすが公爵の子だけはあるのだ……。ノアよ、イーニアスには内緒にしてほしいのだ」
「? アスでんか、ないちょ?」
「うむ。イーニアスは最後まで子供だけでパーティーをやりきりたいと思っている。朕がここにいるとわかったら、気が散るやもしれぬからな」
「? はい! ネロおじさま、ないちょ!」
「うむ。良い返事だ。ノアは公爵の子とは思えぬほど素直で可愛い!」
よし。ノアの口止めは上手くいったのだ。イーニアスにバレて、騒ぎになってレーテに報告されると、朕が怒られてしまうからな。
「……殿下たちはみんな、陛下がいらっしゃる事はご存知だと思いますよ……って、聞いてないですよね……ハァ……」
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