継母の心得

トール

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第二部 第1章

221.炭酸水

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『ところでイザベル様、ノアちゃんからイーニアスに、シュワシュワのお水の報告が入ったのだけど、それってなぁに? また何か作ったの?』

まぁ、ノアったら早速イーニアス殿下に教えてさしあげたのね。あの粉末は、ノアが欲しいと言ったからカミラに預けておりましたし、きっと二人でキャッキャとはしゃぎながら、あのシュワシュワを眺めていたのでしょうね。その光景、見たかったわ。

「シュワシュワというのは、炭酸水のことですのよ」
『炭酸って、あのエールや、偶に湧水にもあるあの炭酸?』
「ええ。その炭酸ですわ」

皇后様のいうエールというのは、ビールに似ているが、発酵方法の異なるお酒だ。ビールより香り高く芳醇な味が特徴で、庶民に好まれている。

ちなみにわたくしはビールの方が好みですのよ。すっきりして飲みやすいの。前世の記憶があるから余計にかもしれませんわ。

『待ってちょうだい。確かエールは発酵させる時に炭酸が発生するのよね? ノアちゃんが見たのは、炭酸水の湧水というわけでもないんでしょう?』
「実は、あるハーブが炭酸を発生させる事がわかったのですわ」

炭酸水を作る方法は案外簡単で、クエン酸と重曹を水に溶かすだけで二酸化炭素が発生し、炭酸水になるのだが、この世界のハーブに、二酸化炭素を発生させるものがあり、このハーブの粉末を水に溶かしただけで炭酸水が出来上がったのだ。

妊婦や赤ちゃんでも食べることの出来るハーブなので、安全性は高く、これを図鑑で発見した時は小躍りするぐらい喜んでしまいましたわ。
ただ、ハーブなのに粉にすると無味なので、甘さをどうするかが問題なのよね……。今のままでは知育菓子に使えないわ。

『炭酸水なんて一部の地域でしか飲めないじゃない! 取り寄せようとしても炭酸がすぐ抜けてしまうもの。それが、ハーブの粉末を水に溶かすだけで出来るの!?』
「ジュースの中に入れると、シュワシュワのジュースになりますわね」
『なりますわね。じゃないのよ……っ』

あら? 皇后様ったら、何をそんなにぷりぷりしていらっしゃるのかしら?

『あのね、イザベル様。あなた新種のハーブを発見した自覚があるの!?』
「新種のハーブ? わたくし、図鑑に載っているハーブで試しましたのよ??」
『なら、ハーブの新たな使用方法を確立したって事じゃない!』

水に浸けると泡を発生させると書いてあったのだけど……??
と思っていたら、『誰も粉末にして水やジュースに溶かすなんて方法試してないでしょうがっ』と皇后様に怒られてしまいましたわ。

「まぁ、そうですわね。わたくしも知育菓子に使おうと思って粉末にしましたのよ」
『知育菓子?』

やはり皆、こういう反応になりますわよね。

テオ様やミランダに説明したことを説明すると、同じように驚かれる。

『あら、でも無味の方が良かったじゃない』
「え?」

皇后様の意見に目をパチパチさせ、口をあんぐり開いてしまう。

『だって色んな味付けが出来そうだし、色んなものに混ぜる事も出来るじゃない』
「! 確かにそうですわねっ」

わたくし、ハーブに甘味料を混ぜて粉末にしないとって思っておりましたけど、炭酸の粉として別に考えれば、後は味付けが自由ですわよね。

「さすが皇后様ですわ!」
『え? あら、おほほっ。アタシ、役に立てたかしらね』
「とっても!」

よし、また実験しますわよ!

こうして、皇后様がご機嫌のまま妖精通信を終えると、わたくしは他の植物の粉末なども合わせたり、水を加えたりと色々実験を繰り返したのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「どうして私が……っ、あんな小娘に追い出されなくてはならないの!」
「お、奥様っ、落ち着いてください!」
「……っそういえばあなたたちも、あの時私から距離を取ったわね……」
「「「「ヒィッ」」」」
「絶対に許さない……っ。あなたたちも、イザベル・ドーラ・ディバイン……、あの女も!!」



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