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19.愚か者達の末路3

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騎士団長次男ゴルド・レトバリー


昨日は、というか、日付けが変わった深夜まで、通信魔道具でアイリーンとお喋りを楽しんでいたからか、まだ瞼が重い。不細工ルドルフの退学の話で盛り上がり、ついつい長話になってしまったが、あいつは俺の寝息を聞きながら寝たい、と可愛い事を言ってくれるから、通信魔道具も繋いだままにしていた。俺こそが、アイリーンの寝息を聞きながら眠りたいと思ったが、結局いつの間にか寝落ちしていたな。

「そういえば、今日も早朝訓練に間に合わなかった」

最近は早朝訓練に参加しなくなっているが、俺はこの国の騎士団長の息子だ。才能は誰よりもある。だから少々訓練をしない日があっても支障はないだろう。

「今日の放課後にはアイリーンとやっとデートが出来る。殿下には悪いが、あいつは俺に夢中だからな」

殿下や友人たちにも秘密の関係は、背徳感があってとても燃えるものだ。

朝食を取ろうと、家の食堂へ向かうと、いつもはいない父の姿があって驚いた。

騎士団長という立場の父は、昔からほとんど家にはいなかったからだ。幼い頃は寂しい思いもしたが、今はこの厳しい人がいない方が、自由に出来て良いと思っている。それなのに今日は休みでも取ったのだろうか。面倒な……。

父が居るという事は、兄も居るのかと思ったが、食卓には父と母の姿しかない。母はうつむき、俺に挨拶もしなかった。

「……ゴルド、なぜ早朝訓練に参加しなかった」

俺が席に着く前にお小言を口にした父に、心の中で舌打ちしながら椅子に座り、「体調が優れなかったもので」と言い訳をする。父は目を閉じ、眉間に皺を寄せていた。

自分から聞いておいて、俺が話しているのに目を閉じているなんてふざけるなよ。

「ゴルド、お前はもう学校に通わなくて良い」
「は……?」

今日は休めという事か? 休むのは構わないが、アイリーンとのデートの約束を破るわけにはいかない。

「父上、殿下の護衛も兼ねていますので、学校を休む事は出来ません」
「第二王子ももう、学校には来ないだろう」

どういう事だ……まさか城で何かあったのか? それで俺も父と共に登城しなければならないのだろうか。

「王族に何かあったのでしょうか。すぐに登城する必要があるのですか?」

そう聞いた俺に、父は眉をしかめ、母は目に涙を溜めて首を横に振っていた。

一体何だっていうんだ。

「何かあったか、だと……? お前は……っ、何という愚かな……!!」

ダンッと拳を机に叩きつけた父は、俺を睨みつけると真っ赤になった顔で怒りに震えている。その隣で、とうとう母が泣き出し、俺は困惑しきりで席をたった。

「父上が何を言いたいのか、さっぱりわかりません」

もうこれ以上話すのは面倒だ、と部屋で朝食を取る気で扉に向かっていたその時、顔面に強い衝撃が走り、両足が床から離れていくのがスローモーションのように見えて、そのまま後ろの机にめり込んだのだ。

「ぐぅ……っ、う、ア゛ァァァ!!」

背中に痛みが走ったが、それよりも顔面が熱く痛い。

「お前のような愚か者が、私の息子だと思うと吐き気がする!!」
「ぃだい゛!! 顔が……っ、身体が……ぃたいよぉ!」
「黙れ!!」
「ヒィッ」

どうしてこんな事を!? 俺が一体何したって言うんだ!

「ぅう……っ、あなた……っ」
「このように愚かになったのは、私のせいかもしれん……。忙しさを理由に、家族を放置し教育を怠った……」

俺は誰よりも優秀なのに、何言ってんだ!?

「騎士団長を辞しただけでは足りぬ。コレをレトバリー家の籍から外し、私もまた、レトバリー家から出ていこう」
「ち、父上……?」

騎士団長を辞した……? 俺を、レトバリー家から外す……? 冗談だろ……何で、

「私を父と呼ぶな!」

え……

「ルドルフ・スレイン公爵子息を長年に渡り侮辱し続け、どこぞの阿婆擦れに騙され溺れ、あげくに訓練も満足に出来ぬような腑抜けの愚か者など、息子ではない!!」
「……ルドルフ……っ、あ、あの不細工が、父上に何を言ったのかしらないが、アイツを信じないでください! アイツは昔から俺の才能に嫉妬して嫌がらせをしてくる、虫けらのような奴なんですっ」
「っ……何が才能か! 貴様に才能などない!! ルドルフ殿の方がよほど才に恵まれているわ! しかも貴様と違い努力も怠らぬ」

俺に、才能がないだと……? あの不細工に、この俺が負けている……?

「違う!! 俺は、騎士団長の息子で、誰よりも才能もあって……、王族の護衛も任されている。アイリーンもそんな俺に夢中で……っ」
「何という事だ……っ、お前を、レトバリー家から追放する事は間違っていた」

父上が両手で顔を覆い、膝をつく。母がそんな父に寄り添って、未だ涙を流している。

「ハハ……ッ、間違いを認めてくれたんですね、父上……」
「ああ。私が間違っていた……っ、お前は、一生監視し続けなければならない、絶対に外に放っては駄目な類の人間だ」
「へ……?」
「お前は、私が責任を持って幽閉する」

どうして……、どうしてこんな事になったんだ……

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