日本人顔が至上の世界で、ヒロインを虐げるモブA君が婚約者になりました

トール

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18.愚か者達の末路2

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アスデフィラ国立学校教師、デクスター・テイル視点


ルドルフ・スレインは外見と中身が醜悪な、アスデフィラ国立学校の膿だ。
それをやっと退学に追いやり、スッキリとした気持ちで、やっと清々しい教師生活を送れると、奴のいない教室を見てニヤける顔を抑えるのにひと苦労してしまった。

「アイリーン……、今日も良かったよ……」

この学校の教師に与えられる個室で、生徒であるアイリーン・トラバルトとの情事を終え、彼女の項にキスを落として服を整える。

「え~、デクスター先生ぇ。もう終わりぃ? もっと先生とイチャイチャしてたい~」
「私もそうしたいのはやまやまだが、今から緊急の教員会議があるのでね。明日また、ここで会おう。今日の分も可愛がってやるからな」
「絶対よぉ」

アイリーンは可愛く頬を膨らませ、自分の服を整えると、私にキスをする。

可愛いやつだ。

生徒とこのような関係にある事は、教師として有るべき姿ではないと分かっているが、アイリーンが卒業したら結婚するのだ。それまでは誰にも見つからないよう、逢瀬を重ねれば大丈夫だろう。


「───……生徒と不純な関係を持ち、一方の話しか聞かない者を果たして教師と言えるのだろうか」

なのに、どうしてこうなったんだ!?


緊急の教員会議が入ったのは午後。アイリーンが私の部屋に来る直前、連絡が来た。
まだ時間はあるとアイリーンを招き入れてから、二人の時間を過ごし、やって来た緊急会議には、既に教師陣が勢揃いしていた。

「まだ会議の時間にはなっていませんが、皆様早めに集まられたのですか?」

私を見る皆の目が、冷たいような気もしたが、隣に座る教師に話しかける。

「緊急会議は30分も前から始まっていますよ」
「え?」

その場に居た教師陣が一斉に私を見る。

何なんだこれは……。

「さて、本日の主役が登場した所で、会議を再開しようか」

上座に座っていた、見慣れぬ者に訝しげな視線を送れば、その者の後ろに立っていた男に「無礼者が!!」と怒鳴られた。

「フレディ皇太子殿下に対して何という無礼な態度!!」

皇太子殿下だと!? 何故このような所に皇太子が……っ

「騎士団長、彼は私の顔を見た事がないのだ。分からないのも無理はないだろう」

そう言って怒鳴る男を止め、私を見る皇太子の瞳は冷え切っていた。

「し、失礼な態度を取りました事、お許し下さい」

頭を下げ謝罪をすれば、皇太子は「今回だけは許す。席につきたまえ」と言って目を細めたのだ。その様子に慌てて座り、この異様な雰囲気に息をのむ。

「それで先程の続きだが、本人が来たのだし、彼に説明してもらうとしようか」

皇太子は私に冷え切った目を向けると、

「デクスター・テイル、君は教師でありながら、ある生徒を不当に扱い退学に追いやったと聞いたが、間違いないないか」

やはりルドルフ・スレインの事か……っ、どうせ親に泣きついたのだろう。まさか皇太子が出てくるとは思わなかったが、まぁいい。私は己に恥じるような事は一切やっていないのだからな。

「お言葉ですが皇太子殿下、私は生徒を退学に追いやってなどおりませんし、不当にも扱っておりません」
「ほぅ……、ならば、我が父の元に届いたこの映像は何か、教えてもらおうか」
「映像?」

皇太子が流した映像には、私がルドルフ・スレインを叱っている所だけでなく、アイリーンとの関係にまで及んでいた。

「これだけでなく、君は教師に与えられた部屋にもこの女生徒を連れ込んでいたようだな」
「な!? それは、その女生徒に配布物の整理を頼んでいただけで……っ」
「なるほど、これが配布物の整理か」

皇太子は誰かに目配せすると、また何かの映像を流し始めた。

『ぁ……ん、せんせぇ、きもちいぃのぉ……っ』
『ああ……っ アイリーン、すごくイイ……っ』

「な!?」

これは、先程の……!?

「何故こんな映像が……っ 個人の部屋に、監視カメラを付けていたのですか!? あり得ないっ」
「個人の部屋? 勘違いしないでもらいたい。ここは国営の学校だ。個人の部屋などない。教師一人ひとりに充てられている部屋も、職場であり、プライベート空間ではないのだよ」
「っ……」

周りを見れば、皆が軽蔑したような目で私を見ているではないか!

「我々が会議を開いている間、君は職場で、女生徒と情事に耽っていたようだが」
「これ、は……っ、いえ、この生徒とは卒業後、婚姻も考えており……っ そんな事よりも、この事と生徒の退学とは関係ありません!! このようなプライベートな事をこのような場であげつらうような真似をされるなど、許される事ではありません!!」
「許される事でないのは貴様だ!! デクスター・テイル!!」

皇太子の怒鳴り声に、会議室が静まる。

「貴様は、職場で生徒と不純な関係を持ち、その者の話しか聞かず、優秀な生徒を虐げ、挙句退学に追い込んだのだ。そのような者を、果たして教師と言えるのだろうか!」
「そ……っ、ルドルフ・スレインは、その権力を使って、アイリーンに暴力をふるっていたのだ! そのような者は、退学になって当然ではないか……っ」
「入学式の日から、全ての監視カメラの映像を調査した。無論、ルドルフ・スレインの馬車に取り付けてあったカメラの映像もだ。貴様が言う、暴力など、一切確認出来なかった」
「な!?」
「それどころか、逆にアイリーン・トラバルトが、私の愚弟の権力をかさにきて、ルドルフ・スレインを罵っていた」
「まさか……っ」

アイリーンがそのような事をする筈はない!!

「アイリーン・トラバルトは、この学校の平等というルールを盾に、スレイン公爵家の次男であり、次期クラウス公爵家当主、そして私の親友で側近でもある者を虐げたのだ」

クラウス……!? この国……、いや、この世界で最も影響力のある貴族……。我々のような平民でも知っている……っ、その、次期当主だと……?

「あの、不細工が……?」
「言っておくが、ルドルフ・スレインは貴様ごときが乏して良い存在ではない。この国の大貴族だ。そして、皆勘違いしているようなので正しておくが、平等とは、一方に肩入れする事ではない。この学校においての平等とは、全ての生徒に授業を受けさせ、学ばせる事を言う。生徒の学びを取り上げる事など、あってはならぬ!」
「っ……お、お許しください! 私は、第二王子に指示されて……っ」
「平等を盾にしていた貴様が、王子に指示されたと申すのか……っ」

どうしてこうなった……っ こんなはずでは……、

「貴様に教師の資格などない! 今日中に荷物を纏め、この学校から出て行け! そして、見て見ぬふりをしてきた教師陣。貴殿らも己がした事をよく反省せよ。ここに居る者は皆、3ヶ月の減給に処す」

どうして……っ こんなはずではなかったのに……。

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