日本人顔が至上の世界で、ヒロインを虐げるモブA君が婚約者になりました

トール

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17.愚か者達の末路1

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「ルドルフ様!!」

王都にある、スレイン公爵家の廊下を早足に抜け、勝手知ったる部屋の扉をノックする。
部屋の主の了解を得て中へ飛び込むと、窓辺にある椅子へ腰掛け、憔悴しているルドルフ君が此方へ顔を向けていた。

ああ……っ、なんて事! こんなにやつれて……っ

「ユーリ……すまない」

すぐに駆け寄り抱きしめる。

「ルドルフ様が謝る事はございませんわ。それに学校は、お義父様がクラウス学園に転入届を出されましたので、退学ではなく転校になります。ご安心下さいませ」
「……僕が上手くやれなかったから、皆に迷惑をかけた……」

あのお馬鹿ヒロインとお馬鹿攻略者達のせいで、ルドルフ君はすっかり自信を失っていた。

成績は首席を常にキープし、人格者で、私から見れば美形なルドルフ君が、どうしてこんな目に遭わなければならないのか!

「違いますわ。ルドルフ様は証拠となる映像も、理事長や教師に提出しました。陛下にも。学生の身分で、出来る事は全てされました。なのに何もしなかった陛下や、証拠を握り潰した学校側に問題があるのです」

既にクソ陛下には退位してもらう事が決定している。
スレイン公爵家とクラウス公爵家を敵に回したのだ。クーデターを起こされなかっただけ有り難いと思ってもらいたい。
後継はフレディ殿下に決まり、殿下は飛び級制度を使用しクラウス学園を卒業する準備に入った。

元々優秀な方で、すでに卒業までの資格は取っていたので問題はない。
ただ、本人は婚約者と学園生活を満喫したいと残っていただけだったから。

そして、アスデフィラ国立学校は───




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




アスデフィラ国立学校、理事長視点


「な、なぜ、寄付金が無くなった……っ」

会計課からの報せに愕然とする。

私はただ、王子に言われた通り、ルドルフ・スレインを退学処分にしただけだ。最近生徒が減ってきているのも、アレがいるからだ。だからワシは……、あの化け物のような容姿を持つ生徒さえ居なければ、伝統ある我が校はどこにも負けぬ。そう思って……っ、なのに何故……!!

「スレイン公爵家からは、ご子息を退学処分にするような学校に寄付金は払えぬと……、クラウス公爵家からも、『次期クラウス公爵』を軽んじ、処分する学校などに寄付金や修繕費、維持費は払えぬと断られました。特にクラウス公爵家には、年間にかかる費用の半分を負担して頂いておりましたので、この先アスデフィラ国立学校をどう維持していけばよいか……っ」

今、何と言った?

「次期、クラウス公爵!? 一体どういう事だ!? 退学処分にしたのはスレイン公爵家の次男で、公爵家でも恥と言われていた者ではなかったのか!?」

スレイン公爵家も持て余しているお荷物だと噂になっている。

「それが……ルドルフ・スレインはクラウス公爵家の唯一の姫君であらせられる、ユーリ・クラウス様のご婚約者だと……」

ユーリ・クラウス様は、女神の再来と言われている美貌と才をお持ちの御方! その御方が、あの化け物と婚約だと……!!!!?

「な、な……っ」
「理事長、どういたしましょうか……」
「だ、第二王子は!? 王家に費用を捻出してもらえば……っ」
「愚弟は、アスデフィラ国立学校を休学させる事に決まった。全く、愚かな事をしてくれたものだ」

突然ワシの部屋の扉が開き、何者かが勝手に入ってきた。

「誰だ!?」
「無礼者!! アスデフィラ国第一王子、フレディ王太子殿下に対し、何という口の聞き方!!」

こ、皇太子殿下だと!!?

ワシの前に鷹揚と歩いてくる美しい少年に見惚れ、そのまま呆然と見つめてしまった。

「頭が高い!!」

護衛から怒鳴られ慌てて平伏せば、王太子殿下は、美しい弧を描く唇を開く。

「さて、王家はこの学校の現状にとても危機感を抱いている」

そうかっ、王太子殿下も、公爵家の横暴が目に余る行為だと思われているに違いない! ここで二家を訴えれば、学校の窮状にも手を貸してくれるだろう!!

「王太子殿下、恐れながら、我が校は平等を謳っておりますが、スレイン公爵家とクラウス公爵家がそれを脅かそうとしているのです!」
「王太子殿下の話を遮るとは、何という無礼!! 手討ちにしてくれる!」
「ヒィィィッ」
「騎士団長、待て」
「ハッ」

き、騎士団長!? 王国の騎士団長はレトバリー様だろう!? この男は、どう見てもレトバリー様ではないぞ!?

「理事長、君は先程『平等』と言ったか?」
「は、はい……」
「では、何故君は虐められている生徒の訴えを聞こうとしなかったのだ?」
「い、虐めなど我が校にはございませんっ」
「ほぅ……。私の父の元には、このような映像が届けられていたが?」

王太子殿下は魔道具を取り出すと、暴言を吐く教師や王子達の映像を壁に映し出したのだ。

「こ、これは……っ」

ルドルフ・スレインめ!! ワシだけではなく、陛下にもこのようなものを送っていたのか!!

「君の元にも、この映像は届けられたはずだ」
「い、いえ。ワシは知りません。このようなものを見れば、注意しました」
「ほぅ……、君がこの部屋で、ルドルフ・スレインと共にこの映像を見ている映像を、私は持っているのだがな」
「な!? ワシの部屋に、監視の魔道具を付けていたのですか!?」

ずっと、監視されていたというのか!?

「勘違いするな。ここは君の部屋では無く、国立学校の理事長室だ」
「? ですから、ワシの部屋ですが……」
「愚か者め。ここは国立学校。つまり、この建物は国のものであり、君の私物ではない。監視カメラを設置しているのは当たり前だろう」
「!?」

まさか、この学校の至る所に監視の魔道具が!?

「……それで、平等を謳う学校の雇われ理事長が、平等の意味を理解せず、愚かな真似をして学校と王家を危機に陥れようとしてくれた責任は、当然取ってくれるのであろうな」
「ヒッ」

そんな……、ワシはただ、この学校の為に、化け物を廃除しようとしただけだ。

ワシは───

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