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15.証拠
しおりを挟むルドルフ視点
「あの人が、女生徒に酷い扱いをした人でしょう」
「えぇ!? あんな不細工なのに、心まで汚いとか、救いようがないな」
「昔から不細工だったけど、増々不細工になってね?」
「女の子を馬車ではねたんでしょ。サイテー」
「鞭で打ったって聞いたよ!!」
ヒソヒソと話している言葉は、隠す気がないのか全て僕の耳に届いている。
こんな事は昔から日常茶飯事だったけど、あの女生徒と出会ってから特に酷くなった。何故ならあの女は、僕には身に覚えのない事をあちこちに触れ回っているからだ。
最近では、第2王子とその取り巻き達と仲良くしているようで、第2王子が有りもしない事で絡んでくる事が増えた。
本当にいい迷惑だ。
けど、こんな事も一人で解決出来なくては、ユーリと結婚するなどとても認められないだろう。
僕は絶対にあのおかしな女にも、第2王子にも負けない。
「───やだぁ! オリバー様ったらぁ」
「ははっ、アイリーンは可愛いな」
廊下を歩いていれば、前から腕を組んでやってくるカップルが1組。
廊下の真ん中を歩いており、他の人の邪魔になっている。
なんて迷惑なんだ、とその顔を見てウンザリする。
第2王子とあの女生徒だ。
「げ、嫌なもの見ちゃった」
「ん? フンッ、不細工か。見ただけで目が腐りそうだ」
向こうもこちらに気付いたのか、嫌そうな顔をして暴言を吐いてきた。
この学校の方針で平等を謳っているからと、教師は注意すらしないが、何が平等だ。こんなものの何処が平等なんだと抗議したい。
この学校は昔からどこかおかしいのだ。
「ご機嫌麗しく。オリバー殿下」
「話しかけるな。不細工め」
僕だってお前に話しかけたくなどない。何故こんなのが王子なんだ。
「やだぁ。こわぁい! オリバー様ぁ、私この人に馬車で轢かれそうになったしぃ、鞭で叩かれそうになったのに、謝りもしないし、今睨まれてるぅ」
「何ぃ!? 貴様、アイリーンを睨むとは何事か!」
「睨んでいませんし、視界に入れてもおりません。たった今、殿下の目を見て話していたではありませんか」
何を言ってるんだコイツらは。
「ぐっ、煩い!! 不細工のくせに生意気なっ」
「殿下、いくらここが学校とはいえ、御自分の言動にはご注意下さい」
「な……っ、貴様、言わせておけば!!」
「そうよっ、あんた何様なわけぇ? オリバー様は王子様なのよ!!」
「王子殿下だからこそ、発言や行動に気をつけるべきだと申しているのです。この事を陛下や王妃様がお知りになったらなんと言うでしょう」
「っ……不細工と話していると吐きそうになる!! アイリーン、行くぞっ」
「きゃっ、オリバー様ぁ!? どうしてあんな不細工に何も言い返さないのですかぁ」
乱暴に女の手を引いて去って行ったが、アレは本当に王族なのだろうか。
それに、第2王子には確か婚約者がいたはずだが……。
「婚約者を大事に出来ないなんて、信じられないな」
僕は何よりも、ユーリが大事なのに。
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ユーリ視点
心配だわ……。
クラウス公爵家の諜報員の報告では、ルドルフ君はおかしな女と第2王子達に嫌がらせをされているらしい。
恐らく、そのおかしな女が乙女ゲームのヒロインに違いないのだろうけど……。
今朝私の手元に届いた、ルドルフ君の馬車に取り付けておいたドライブレコーダーには、信じられない暴挙に出るお馬鹿な女の子が映っていた。
ルドルフ君じゃなかったら、この子不敬罪で死んでるから。
高位貴族の馬車が通る邪魔をし、暴言を吐いて馬車に乗ろうとし、その上さらに不細工だなんだと……っ、あり得ない!! 私のルドルフ君にこんな無礼千万!!
だけど、諜報員が持ってきた画像はこれだけではなかったのだ。
クソ王子に、クソ取り巻き、そしてクソ教師。
このクソ共の暴言のオンパレードに、私の頭の血管がブチ切れそうだ。
しかもコイツら、全員見事に攻略対象者だった。
「このアスデフィラ国立学校、高位貴族の子息が虐めにあっているのに、どうして無視しているのかしら……。平等を謳っているから? それならば尚更、虐めには対処すべきでしょう」
何だか嫌な感じだ。
「私がアスデフィラ国立学校に乗り込んでしまおうかしら……」
「お嬢様、それはお止めになった方が宜しいかと思います」
領地の屋敷の侍女兼諜報員が、私の言葉に首を横に振る。
「どうしてですの?」
「男性というのは、とてもプライドが高いのです。もし、好きな女性に認められる為に一人で解決しようとしているのに、その好きな女性が助けに行ってしまったら、どう思いますか。しかも虐めに遭っているのですよね? 格好悪い所を見られてしまったと思うのではないでしょうか」
「確かにそうですわ……。でも、それならどうすれば宜しいの? ルドルフ様が傷付くのを見ていられないわっ」
「お嬢様は、ルドルフ様が受ける理不尽な証拠を集めておくのです。そして、それを最後の手段として陛下と王妃様に提出してしまえば宜しいのですわ」
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