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14.幼馴染
しおりを挟む「ルドルフ様に会いたいわ……」
クラウス学園内にあるカフェテラスで、溜め息を吐きながら弱音を溢す。
つい最近会ったばかりだろうなんて言わないでほしい。私達は、ラブラブの恋愛関係になったばかりなのだから。
「はぁ……。憂う表情をされているユーリ様も美しいですわぁ」
「わたくしがその憂いを払って差し上げたいわ」
「艷やかねぇ。最近増々お美しくなられて……」
「まぁ。静かだと思ったら、男性の皆様は鼻血を出して倒れていますわよ」
何故か私の席の周りを空け、ドーナツのような形で満席になっているカフェだけど、いつもの事なので気にしたら負けだろう。もしかして新手の虐めにあっているのだろうか。とは最近思い始めたところだ。
「クラウス令嬢は相変わらずルドルフに骨抜きだね」
突然話しかけられ、顔を上げればそこにいたのは、
「まぁ、王太子殿下、ブランシュ様、ご機嫌よう」
「君の周りはいつでも席が空いているから、とても便利だよね」
失礼な事を言ってハハッ、と爽やかに笑って目の前に座る、ほっとするようなこの平凡日本人顔の彼は、この国の王太子フレディ様だ。
「フレディ様、ユーリ様に失礼が過ぎますわ!」
そしてその隣にいるのが王太子の婚約者である、ブランシュ・カスティーユ侯爵令嬢だ。
彼女も日本人顔だが、少々平凡寄りのアイドルのような、可愛らしいお顔の女性である。
「そんなに怒らないで。私の可愛いブランシュ」
「もうっ、そんな風に仰ってもだめですわ!」
「君は本当にクラウス令嬢が好きだね。妬けてしまうよ」
「フレディ様ったら」
二人はとてもラブラブの婚約者で、いつもこうやってイチャイチャしている。
勿論、クラウス学園は完全実力主義なので、こう見えてとても優秀な人達だ。
私としては、心の中で地味顔同盟だと思って接している友人達なのである。
「王太子殿下にブランシュ様よ!」
「いつ見ても理想のカップルですわねっ」
「クラウス学園の至宝が勢揃いですわ~!」
「素敵よねぇ」
周りのハーフ顔グループと比べ、地味な日本人顔グループが浮いているのは間違いないが、とても好意的な声が耳に届き、どうも慣れなくて恥ずかしい。
「ところで、ルドルフはいつになったらこの学園に来るんだい?」
「そうですよね。ルドルフ様の実力でしたら、こちらの学園の試験も問題なく合格出来そうですのに。そもそも、どうしてルドルフ様は王都の学園へ入られたのでしたっけ??」
二人はルドルフ様の外見を気にしない、この世界では数少ない人達で、私とともにルドルフ様の幼馴染でもある。勿論、私がルドルフ様にメロメロな事も知っているので、よく相談させてもらっている、頼りになる友人達だ。
「ルドルフ様は学園を卒業しましたら、私と結婚いたしますでしょう」
「はい。クラウス公爵家の次期当主となられるのですよね」
「はい。ですから、私の父がルドルフ様を離そうとしませんの」
「ああ、後継者教育を施しているんだね」
「あら? ですが、ルドルフ様は優秀ですし、クラウス公爵家の後継者教育も幼い頃から受けておりますよね。3年程度ならば、王都を離れても良いのではないですか? しかもここはクラウス領ですし」
「私もそう思うな。むしろ、クラウスの後継者であるなら、クラウス学園出身である方が良いだろう」
王太子とブランシュ様は顔を見合わせ首を傾げる。
「ですから、私が長期休暇で必ず王都へ戻るように、ルドルフ様を離さないのですわ」
つまり、ルドルフ君は、領地へなかなか戻る時間の無い父が、私と過ごす為の人質なのである。
「「ああ……」」
理解していただけて良かったです。
「父にも困ったものですわ」
「でも、仕方ありませんよ。こんなにも美しい娘さんを持つお父様では、そうなるのも無理はありません! 私だって、ユーリ様のお父様の立場でしたら、きっと同じ事をしました!」
ブランシュちゃん……。
「けれど、そろそろルドルフには私の傍に付いていてもらいたい」
王太子の最側近候補だもんね。候補というか、もう決まっているようなものか。
次期スレイン公爵であるルドルフ君のお兄さんと、次期クラウス公爵であるルドルフ君は、次期国王の王太子には絶対に必要な二人なのだから。
「まぁ王太子殿下、ルドルフ様は私の愛しい方ですのよ」
「ハハッ、分かっているさ。君の邪魔は絶対にしないよ。約束しただろう。この国を外見ではなく、能力重視の実力主義国家にしてみせると」
「そうですわね。そのお約束を守って下さる限り、私は貴方様の臣下として尽くしますわ」
「それは頼もしいね!」
ハハハッ、ホホホッ、と笑い合う私達は、まるで悪役のようだと思いながら、ルドルフ君に何事もありませんようにと祈るのだった。
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