8 / 20
8.プレゼンをしよう
しおりを挟む「ルドルフ様、学校では楽しく過ごされておりますか?」
「ぇ……あ、そうだな……」
あ、マズい。
私の中ではルドルフ君はものすごい美形だけど、この世界ではものすごい不細工になるんだった。しかも貴族は容姿で優劣を判断しがちな生き物でもある。ルドルフ君は高位貴族だから、表立って虐めてくるような人はいないだろうけど、この反応だと距離を置かれているのかもしれない。
「……ユーリは?」
「え?」
「ユーリは、学校……楽しいか?」
「そうですわね。わたくしは、ルドルフ様に会えないので楽しくありませんわ」
「!?」
予想外の答えだったのか、私の返事にキョトンとしているルドルフ君も大変可愛らしい。
「いつも、ルドルフ様は今頃何をされているのかしらって、そればかり考えてしまいますの」
「っぼ、僕も! 僕もユーリの事ばかり考えてる!」
「まぁ、それは嬉しいですわ」
ヘラリと笑えば、ルドルフ君は顔を真っ赤にさせ瞳を潤ませる。なんて可愛いんだろうか。
「僕、ユーリの婚約者として相応しくなれるよう頑張るから、だから、だから、捨てないで!」
「捨てるだなんてっ、わたくしがルドルフ様をどれほど想っているか、伝わっておりませんでしたか?」
どさくさに紛れて彼の両手を握れば、頭をふるふると振って困ったように笑うので、つい抱き締めてしまいたくなった。
「ユーリが僕の事を大切に思ってくれてるのは分かってるんだ。けど、僕はこんな容姿だから……」
不安なんだと漏らす言葉に、胸がギュッと締め付けられる。
ルドルフ君は世界一可愛いから!!!!
声を大にして叫びたいが、きっと誰にも分かってもらえないのだろう。
「何度も言っておりますでしょう? 貴方の容姿も含め、貴方の全てが好きなのです」
「っユーリ……」
「不安であれば、何度でも申しましょう」
わたくしの婚約者は、いいえ、わたくしの旦・那・様は、ルドルフ様ただお一人ですわ。
12歳にあるまじき告白をした後、泣き崩れたルドルフ君を甘やかしまくってから別れ、我が家に帰ってきた私は、彼の為に『新たな学校を創る』決意を固めた。
もし、ルドルフ君が学校を退学になっても、受け入れる学校が他にあるなら問題ないのではないか。と考えた結果だ。
容姿や出自で差別される事のない、完全実力主義のインターナショナルスクールを、私は創る!! この有り余る財力と権力を使ってな!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「海外に進出する商家が増えている昨今、内向的な授業カリキュラムは時代にそぐわないのでは、との考えから、我が国の伝統を守りつつも、新たな風を取り入れた学校が必要ではないかと熟考致しました。そこでご提案いたしますのは、我が国初のインターナショナルスクールです」
「しかし、国営の学園が存在するのだ。今更学校を建ててもなぁ……」
「優秀な留学生を多く誘致する事は、我が国の今後を考えても利点がございます。例えば、他国との繋ぎになるだけでなく、多文化に触れられる事により、語学力の向上や、探究型の思考が育ちやすくなる事、等です。留学生との交流を持って国際社会で活躍する人材を育成し、今後来るであろうグローバル化に対応する能力を持った、優秀な人材を多く生み出すという事は、我が国の重要な───」
学校を創ると決めた私は、さっそく資料を作り、祖父と父、その補佐である執事長を加えた三人にプレゼンを行っている。いくらお金が有り余っているとはいえ、所詮12歳の子供だ。さすがに学校を勝手に創るわけにもいかないわけで、大人に頼る必要がある。
それに、一人前の貴族として認めてもらえる学校は、国の認可が必須なのだ。特に王族の御墨付をもらうには、父や祖父の協力が必要不可欠というわけである。
「ふむ。確かに近年他国との交流が増え、外交に強い人材の育成は重要事項と認識はしていたが、新たな学校か……」
「さっすがユーリちゃん!! ウチの娘は天使で女神で天才だよ!!」
「その美しさも天上の如くでございますが、資料も非の打ち所がございません。お嬢様の多才ぶりには驚きを隠せませんね」
この中で唯一真剣に話を聞いているお祖父様は良い。執事長もまぁ良いとして、お父様、きちんと話を聞いてます?
「はぁ! 愛らしい瞳が私を映してる!!」
ブレないな、父よ。
しかしこんな風だが、この人かなり有能らしく、父が公爵家を継いでから増々繁栄しているらしい。解せぬ。
「ふむ。では、実際に教鞭をとる者や授業カリキュラムなどを具体化した上で、国の認可を貰ってこよう。王家には何らかの功績を出さねば認められぬが……」
「存じ上げております。人材育成には時間もお金もかけねばなりません。結果が出るのはまだ先の話になるでしょう。ただ、お祖父様もお父様も、他国の王侯貴族に伝手がお有りだとお伺いしました。出来れば、留学生は高位貴族や王族などの誘致が望ましいかと存じますわ。お二人のお力でお誘いいただけませんでしょうか?」
「勿論だよ! 他国の高位貴族だろうが王族だろうが、引きずってでも連れてくるからね!」
引きずったらダメだからね!
「うむ。ならば世界中から優秀な教授陣も集めようぞ。やるからには、この国……いや、どこの国にも負けぬ学校を、我が領地に創るのだ」
「はい! ありがとうございますっ」
持つべきものは孫と娘に激甘な大金持ちの権力者である。
443
お気に入りに追加
1,374
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜
朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。
(この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??)
これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。
所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。
暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。
※休載中
(4月5日前後から投稿再開予定です)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!
お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。
……。
…………。
「レオくぅーん!いま会いに行きます!」
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる