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6.美の女神との邂逅 〜ルドルフ視点〜
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「おはつにお目にかかります。わたくしはユーリ・クラウスと申します」
なんてきれいな子なんだろう。
母上からお友達こうほだという令嬢をしょうかいされた。彼女は見たこともないようなきれいな少女だった。僕は妖精か天使……ちがう。女神様だ。美の女神様が現れたんだと思った。
けど、僕の見ためはこんなだから、僕と話すと女神様がけがれると思ってうまく話せなかった。きっと嫌われた。でもしかたないんだ。だって僕はこんなにみにくいから。
女神様は楽しそうに兄上とお喋りしている。兄上は僕とちがってかっこいいし優秀だから、きっと一緒にいて楽しいだろう。そう思ったら自分がみじめで、情けなくて、悲しくなった。
「ルドルフさまともっとお話ししたいのですが、よろしいでしょうか?」
なんで? 聞きまちがい?
「ルドルフさま、お庭をあんないしてくださいますか?」
でも女神様は僕を見て、庭を案内してほしいって言ってくれたから、聞き間違いじゃなかったって嬉しくなって、でも恥ずかしくて、つい母上たちから逃げるように手を引っ張って庭に連れ出してしまった。
というか、僕にお願いする女神様が可愛すぎて、なんでか胸がドキドキしてる。
女神様と繋いだ手も熱いし、顔も熱い。さっきから胸のドキドキもうるさいくらいで……けど、女神様はどうして僕なんかと話したいって言ってくれたんだろう。みにくい僕と話すだけで、他の人に嫌われてしまうかもしれないのに。
「わたくし、おなじとしごろの子とおはなしするの、はじめてですの。だからお友だちになってほしいのですわ」
女神様は誰もがみとれるような笑顔でそう言って、「わたくしにはルドルフさまがみにくいとはおもえませんわ」なんておかしなことを言い出すものだから、僕はつい、だったら僕とケッコンできるのか!! ってイジワルなことを言ってしまったんだ。
なのに女神様は、ケッコンできるって……そのうえ『ひとめぼれ』だって言ってくれた。
さいしょはひとめぼれって言葉がどういういみがよくわからなかったけど、女神様が教えてくれたんだ。
「一目見たそのときから、相手を好きになること」だって。それを聞いて僕は、僕こそが、女神様に“ひとめぼれ”したんだって思った。だって、一目見たときから大好きになった。このきれいな子とたくさん話したいって、僕を見てほしいって思ったんだ。女神様が……ユーリが僕にひとめぼれしてくれたのは信じられないことだけど、離したくないって思った。この子と離れないためにはどうすればいいのか考えたら、前に父上が言っていたことを思い出したんだ。
「私はケイティと片時も離れたくないから結婚したんだよ」
『ケッコン』すればユーリと離れなくてすむ。なら、僕はユーリとケッコンする!!
僕はすぐ、母上とクラウス公爵夫人へユーリと結婚したい事を伝えた。けど、クラウス公爵夫人にはすぐにケッコンはできないんだと言われ、『コンヤク』することになった。
コンヤクはケッコンする約束のことだって聞いた。本当はすぐにケッコンしたかったけど、大きくなればユーリとケッコンできるんだって思うとすごく嬉しかった。
ユーリに好きでいてもらうためには、たくさん努力しないといけないって父上にも母上にも言われた。そんなのわかってる。だからこわい家庭教師にもがまんした。たくさんたたかれたけど、ユーリに好きでいてもらうためだからって思ったらがまんできた。
でも、そのがまんはしちゃいけないがまんだったんだ。
ずっとがまんしてたら、こわい家庭教師がもっとこわくなって、もっとたたかれるようになって、そしたらこわくて声もでなくなった。家庭教師を前にすると体が動かなくなる。誰か助けてって言いたいけど、こわくて言えない。
「貴方のように醜い子に勉強を教える者などワタクシぐらいですわ。もしワタクシが辞めたら、貴方は勉強も出来ないバカな子供として公爵家からも出してもらえなくなるでしょうね。だって公爵家の恥になりますもの」
そんなことになったら、僕はユーリとケッコン出来ない。そんなの嫌だ!! がまんしなきゃ。
そんなとき、たまたま遊びに来たユーリに見られたんだ。たたかれて、こわくて動けない、こんな情けない僕の姿を。
だけど、ユーリは僕を抱きしめて大丈夫だって。もうこんなことはおきないし、させないって、怖い家庭教師から助けてくれた。
その後、すぐに侍医がやって来て腕を手当てされた。ユーリにもっとそばにいてもらいたかったけど、父上も帰ってくるだろうし、後始末もあるだろうから自分は邪魔になると言って帰ってしまった。
ユーリの言うとおり父上が帰ってきてから、母上も使用人も忙しなく動き回っていて、僕は部屋で大人しくしていたんだ。
そんな中、兄上が部屋に来てくれて、「気付いてやれなくてごめん」って兄上が悪いわけじゃないのに、つらそうな顔をするものだから困ってしまった。
僕の方こそ、誰にも言えなくてごめんなさい。
「もう我慢したらだめだよ? すぐ僕に相談すること」と優しく頭をなでてくれた。
ありがとう。兄上。
それからしばらくして、父上もやって来て僕を抱きしめてくれた。僕はみにくいけど、家族にはこんなに大事にされてるんだってユーリがいなければ気付かなかったかもしれない。
カッコよくて優しいユーリ。こんな僕を好きだと言って抱きしめてくれる。かわいい、かわいいユーリ。
僕はもう、君がいないと生きていけないんだ。
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