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第一章
52.帰りはラクラク?
しおりを挟む「それで、オルゲン。リッチモンドさんと魔力を半分ずつに分ければ、つがえる者も出てくるかもしれないと教えてもらったって言っていた件だけど、誰に教えてもらったの」
多分、この流れから一人しかいないだろうけど……。
「さっきのあのドラゴンだ! あいつが我に教えてくれた!」
「やはりロッソか……。オルゲンを騙し、わしの魔力を奪おうとしたのは……」
確か、リッチモンドさんの魔力は、オルゲンに半分奪われたんだよね……。
でも、リッチモンドさんの魔力を奪いたかったのはロッソでしょう? どうしてオルゲンを経由したの? ……もしかして、その魔術が完成していなかったとか?
あ、まさか器の問題……?
もしくは、オルゲンの身体に何らかの魔術を掛けていて、それが今発動し、オルゲンから魔力を奪っているとか?
「オルゲンは、ロッソといつ出会ったの?」
「ぬ? あやつは“村”に居た者だ。幼い頃から知っているが、別に仲が良かったわけではないぞ」
村……。リッチモンドさんを生贄にしようとし、二人のお母様はその地に縛られている。そして、お父様と眠りについた村……。
どう考えても怪しいよね。
リッチモンドさんを見ると、同じ事を考えていたのか、目が合って頷かれた。
「オルゲン、その村に行って見たいのだけど、案内してもらえないかな?」
「構わんぞ! でも、今は誰も住んではおらぬから、建物は崩れて廃れてしまっているがよいのか?」
「建物、崩れてるんだ……」
という事は、キャンプ道具一式、必要になるよね。
「だが、我は“うどん”を食べてからでないと、行かんぞ!」
そこは譲る気がないようで、オルゲルはうどんを食わせろと主張する。
ブレないやつだ。
「分かったから……。クレマンスさんやご両親も、レオさんが今スポーツ飲料水を飲ませているから元気になるとは思うけど、一旦私たちの村に戻って準備を整えたいのが本音かな」
「わしもその意見には賛成だ。オルゲンも魔力を吸われているし、わしも先程の戦いで消耗が激しい。それに、ロッソはおかしな魔術を使うようだしの。慎重に行動したほうが良いだろう」
リッチモンドさんも私の意見に賛成してくれたので、クレマンスさんの目が覚めたら、私たちの村に戻ろうという事に決まった。
その時───
“村と別荘の道が出来ました”
突如私のスキルの文字が目の前に現れて、ん? と首を傾げる。
何これ? 道……? 村って、私たちの村……?
“村と別荘が、転移陣で移動出来るようになりました”
転移陣!? なにそれ……っ
「リッチモンドさん! 突然ここと村が、“転移陣”で行き来出来るようになりました!」
「転移陣?」
リッチモンドさんは私の言った“転移陣”を探しているのか、キョロキョロと周りを見回す。
そう言えば、転移陣ってどこにあるんだろう?
「カナデ、もしかしてあれか?」
饅頭をもぐもぐと食べながら、窓の外を指差すオルゲンは、見た目は5歳児なのに、何でかおじいちゃんに見える。
「あそこに、怪しげな扉がある」
「扉?」
転移陣って言うくらいだから、魔法陣的なものだと思ってたんだけど、扉??
オルゲンの指差す先には、未来型ロボットがポケットから出すような扉がポツンとあり、そこだけが何だか異質だった。
「カナデ、扉の下を良く見てみなさい。陣が拡がっている……。間違いなく、あれが転移陣だ」
リッチモンドさんが言うように、扉の下に魔法陣が書かれていて、仄かに光を帯びているではないか!
「じゃあ、あれで村に戻れる!?」
「そのようだの」
「うどんが食べられるのか!」
来る時は結構時間がかかったので、正直かなり嬉しい。
しかも、温泉旅館と行き来出来るようになったのだ。ロッソの事と、住む場所を失ったドラゴンたちの事を考えなければ、かなり嬉しい出来事ではある。
それに、もしこの別荘が私のレベルによって拡がっていくなら、生き残ったドラゴンたちもここに住めるようになるかも……。
「カナデ、帰ろう。わしらの村へ」
「はいっ、リッチモンドさん!」
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