私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

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第一章

47.やれば出来る子、オルゲン

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ぐうぅぅ~。

邪竜(?)のお腹の音が地下に響き、だんだん気が抜けてくる。
さっきのグルル……って唸り声も、本当はお腹の音だったのかもしれない。怖がって損をした気分だ。

「うどんを作るのはいいんですけど、今リッチモンドさん達がピンチなんです! だから、助けた後でも良いですか?」
【何!? 我の目には、娘と地下を散歩していたように見えたのだが!?】
「貴方を探してたんですけどね!! って、そうじゃなくて、クレマンスさんのご両親が貴方に捕らわれてるって聞いてたんです!! それで、実際土魔法で作られた牢屋の中に居たらしくて、でも悲鳴が聞こえて……っ」
【悲鳴の聞こえる牢屋!? な、何だその恐ろしい牢屋は!? 我はそのようなもの作っておらぬ! それに、誰かを捕らえてもおらぬぞ!?】

だと思った!
しかもこのドラゴン、私と同類のホラー嫌いの匂いがする。

【リッチモンドが危ないのならば、我も行きたいが、どうも力が戻らぬ。これでは動けぬのだ】
「そういえば、リッチモンドさんが前に、ドラゴン化した方が魔力を使うから、人化の方が良いって言ってたけど、力が戻らないのに何でドラゴンの姿なんですか?」
【あ】
「あ?」

もしかして……。

【我はドラゴンとして生まれたのだから、ドラゴンの姿をするのは当たり前だろう!! 何だその目は!!】
「もういいから、人化して下さい」
【もういいとは何だ!! 失礼極まりない娘だなっ】

邪竜(?)はぶつぶつ言いながら、黒い霧に包まれ、それはシュルシュルと形を変えていった。

そして人化したのだが…………、

「なにやらぁ……動きにくいのぉ……」
「巫山戯てるんですか?」

何故かヨボヨボのおじいちゃん姿でふるふると足を震わせている邪竜(?)に、思いっきりハリセンをお見舞いしたくなった。

「我、人化をする事があまりなくて……力も上手く使えんのぉ……」

か細い声とふるふる震える足もあってか、今すぐぽっくり逝きそうだ。

「やり直しです! リッチモンドさんはおじいちゃん姿でもそんな風じゃなかったですよ!! ロマンスグレーの素敵なおじいちゃんでした!」
「……え? 何て??」

耳も遠いんかぃ!!

「もぉ! そんな事してる場合じゃないんですってば! ほら、もう一度、今度はもっと若くっ 魔力も消耗しないような人化をお願いします!!」

叫ぶような大声を出せば、「うるさい娘だのぅ」と言うのでイラッとした。

「……うむ。これなら良いだろう!」

またもや黒い霧がシュルシュルっと邪竜(?)の身体を包み、出て来たのだが…………、

「今度は子供じゃないですか!!」
「仕方なかろう!? 魔力もあまり使わずだと、小さな身体が一番良いのだ!!」

ものすごい生意気な5才児の姿に変わった邪竜(?)は、くりくりとした大きな瞳がドラゴンの時と同じ赤で、サラサラの黒髪に、肌は浅黒い。
悔しいがリッチモンドさんの双子のお兄さんだけあり、顔がそっくりでとても可愛かった。

「わかりました。もうそれで良いです」
「何か失礼な娘だな!」
「それより、本当のお名前聞いても良いですか?」

邪竜(?)は面倒だし。

「我はオルゲンだ。娘は義妹だからな。オルゲン兄様と呼んでも良いぞ」
「オルゲン、行くよ!!」
「呼び捨ての上タメ語!? まて娘! 我にだけ名乗らせて行こうとするでない!」
「私はカナデだよ。ほら、行くよオルゲン!」
「何故かとても下に見られている気がするが、分かった。今は何も言うまい。今はな!」

邪竜(?)改めオルゲンと共に先程の場所へ転移? したのだが、

「何で牢屋の中に居るの!?」
「カナデが先程の場所へと言ったのであろう!? 我は言う通りにしただけだっ」

胸を張る5才児に呆れる。
それより、

「リッチモンドさん! どこに居るんですか!?」
「リッチモンド、何処だ!?」
「…………オルゲン!! 今こそリッチモンドさんの見てるものを見てよ!?」
「ハッ!」

ちょっと、この自称邪竜の頬をつねってもいいかな?

「カナデ! 大変だっ リッチモンドが、我の力を貸してやったものと戦っておる!!」
「何処で!?」
「分からん!!」
「…………とりあえず、この牢屋から出よう」
「そうだな!」

格子がぐにゃり動いたと思ったら、ボロボロと崩れ始める。

「オルゲン、やれば出来るんだね!」
「そうだろう! 我はやれば出来る子だと父上と母上からも言われていた」
「クレマンスさんの両親がこの奥の牢屋に捕らわれてたみたいだったから、奥に行ってみよう」
「無視か!?」

さっきリッチモンドさん達が走って行った方へ進む。

しかし、音もしないし誰もいないのだ。

「オルゲン、リッチモンドさん達は本当に戦ってるんだよね?」
「間違いない」
「おかしくない……? ドラゴン同士がこんな地下で戦っているなら、普通何らかの音はするはずだよ。なのに音が一切しないのは異様じゃない?」
「確かに! カナデ、お前は小さな頭の割に頭が良いのだな!」
「喧嘩売ってる!?」

私達二人の声しか響いていない地下にますます違和感が湧く。

「恐らく、空間が歪められておるのだろう」
「空間……? オルゲン、その空間に干渉出来る?」
「任せておけ。我は凄いのだからな」

そういうと、オルゲンは5才児とは思えない慣れた手付きで何やら魔法を使い始めたのだ。

すぐにぐにゃりと目の前の空間が歪み、リッチモンドさんと、黒いドラゴンが戦っている姿が目に飛び込んできた。

黒いドラゴンは鱗の所々が赤く、何者なのかすぐに理解出来た。


あれは、ロッソだ───


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