私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

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第一章

45.囚われのカナデ

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皆が躊躇いなく進む中、私だけはへっぴり腰でビクビクしながら進んでいた。

あまりに怖いので、何か違う事を考えようと無理矢理思考をホラーから逸らす。

スキル。そう、スキルの事について考えよう。

さっき家召喚をした時、何でか初期設定の家でなく、“別荘”という大きなものが現れた。
しかも、村を作ろうとしたら、村ではなく、別荘地を開拓するかっていう文字が現れたけど……、ん? そういえば、整地はしたけど開拓ってくらいだから、何か続きがあるんじゃ……。

でも文字は出てきてないよね??

ステータス画面を出しても何も変わっていない。

うーん……。


「リッチモンド様、前方に何か見えます」

レオさんの声に思考が霧散する。

何!? ゾンビいる!?

「……牢か」

牢屋!? 何で脱出用通路にそんなものがあるの??

「これは……土魔法で作られていますね」

岩を削って出来たような牢屋を見て、レオさんが魔法で出来ていると断言する。

「恐らく邪竜の仕業だろう。中にクレマンスの家族はいないか?」
「こちらは誰もいません」

牢屋はあるけど、誰も居ないって……邪竜はなんでそんな牢屋を作ったの?

「父上っ 母上!!」

その時、クレマンスさんが家族を見つけたのか走り出した。

「待てっ クレマンス! 一人で動いてはならんっ」

リッチモンドさんとレオさんもクレマンスさんに意識を取られていた時だ。

牢屋の格子の部分が手の形になり、私の身体を掴んだのだ。

「ヒィ……ッ」

そのまま、牢の中に引きずり込まれ、あまりの恐怖に喉が引き攣り、声が出なくなった。

「カナデ!?」

私の小さな引き攣り声に気付いたリッチモンドさんが、すぐに手を伸ばしたがすでに牢屋の中で、触れる事すら出来なかった。

「カナデ!! すぐに助ける!!」

いつも冷静な彼が、慌てたように魔法を放つが、透明な壁のようなものがそれを阻む。

「クソッ」

何度も攻撃魔法を放つが、びくともしない。

「ごめ、ごめんなさいっ 私がとろとろしてたから、皆の足を引っ張ってしまって……っ」

激弱なのに、捕まってしまい、リッチモンドさんに迷惑をかけてしまっている。

「カナデのせいではないし、足を引っ張ってもいない。情けないのはわしだ。守ると大口叩いておいて、大切な女性を捕らえられてしまうとは……っ」
「リッチモンドさん……っ」

どうやったらここから出られる……家召喚する?

助けようと必死に魔法を放つリッチモンドさんを見ながらそんな事を考えていると、

「いやぁぁぁぁぁ‼!! 父上っ 母上ェェェェ!!!」

クレマンスさんの悲鳴が上ったのだ。
レオさんがすぐに動いたが、ドラゴンのクレマンスさんが悲鳴を上げる相手に人間のレオさんが勝てるわけがない。

「リッチモンドさんっ レオさんとクレマンスさんを助けてあげて!!」
「カナデ……っ」
「私はここから動けないけど、命を脅かされているわけじゃないし、大丈夫! それに、私には“家召喚”があるから!!」
「っ……すぐに助けに戻る。待っていてくれ」

リッチモンドさんは悲鳴が上がった方へ駆けて行った。

【手に入れた───……ついに、手に入れたぞ───】

家召喚を試そうと思った時、

頭の中に直接語りかけてくるような声がし、私の視界が揺れ、気がつけば牢屋ではない、違う場所に立っていたのだ。

「え……?」

何が起きたのか分からず、キョロキョロしていれば、地鳴りのような、低く唸るような声が辺りに響いた。

ゾッとして鳥肌が立ち、心臓がバクバクと大きな音をたてる。

多分地下は地下なのだろう。周りは先程まで居た岩壁と同じで薄暗い。

【───……娘、やっと手に入れたぞ……】

またさっきの声だ。

一体何処から……。

【お前の能力、お前の魔力……我に必要だ。娘、我に尽くせ】

上から聞こえる……?

怖くて吐きそうだが、息を整えて覚悟を決める。

上を見上げるんだっ

気合いを入れて上を見ると、わたしの視界を覆い尽くす位大きな、真っ黒のドラゴンの顔があったのだ。

ロッソじゃない……。

リッチモンドさんとは正反対の、ただただ真っ黒な鱗を持つドラゴン。

「邪竜………………っ」

グルル……と唸ったそれは、目だけが赤く鋭く光っていた。


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