私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

文字の大きさ
上 下
42 / 53
第一章

42.衝撃の事実

しおりを挟む


クレマンス視点


───……連れて来い。リッチモンドと、あの娘を連れて来るのだ───……

真っ黒に変わったロッソを殺そうとしたが、私の力ではどうにもならず、家族まで人質に取られ、息も絶え絶えでやって来た“魔の森”。

ここはドラゴンですら近付く事を恐れる森だった。

そんな所にリッチモンド様がいらっしゃるのか?

不安に駆られながらも空を飛んでいた時、村のようなものが見えて我が目を疑った。

“魔の森”の最深部に、“村”があるだと!?

しかも、人間が暮らす村だ。
強力な結界が張ってあり、入れそうもない。

恐らく、ここにリッチモンド様とロッソの言う“娘”が居るのだろう。

どうしたものかと村の上空を旋回していれば、人間の娘が降りて来いと手招きするので、そのまま降りていく。すると、結界を簡単に通り抜ける事が出来たのだ。

しかし、ロッソから受けた攻撃のダメージが、酷く、私は気を失ってしまった。

目覚めると、嘘のように傷が治っており、さっき手招きしていた娘が近くでドラゴンの言葉を話していた。

もしかしたら、リッチモンド様が教えたのかもしれない。

人間の娘は親切に怪我を治療してくれ、食べた事もないような美味しい食べ物を与えてくれた。

しかも、この村にいつまでも居て良いと言う。

娘の優しさに、人質をとられてさえ居なければ……と何度思った事だろう。

しかし私は、リッチモンド様と彼が愛したという“娘”を連れて戻らねばならない。


私の愛する御方が愛した方……。

黒く変化したロッソからそれを聞いた時は、胸が酷く痛んだが、そもそもあの方を追い出した私が、彼を愛する資格などないのだと、どれほど自分に言い聞かせただろう。

そしてまた、裏切ろうとしているのだから。


……リッチモンド様が愛した娘……。

出来るなら、この人間のように優しい娘であってほしいなどと、思う事も許されないのかもしれない。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



カナデ視点


「リッチモンドさん!」

地下へと降りてきたリッチモンドさんを見た時、心底安心した。

あの黒いドラゴンとリッチモンドさんが鉢合わせなくて良かった……と。

「カナデっ 怪我は無いか?!」

リッチモンドさんに抱きしめられ、怪我がないか確認される。

恥ずかしいけど、すごく嬉しかったのはナイショだ。

リッチモンドさんの声に安心して力が抜けてしまった時、私は自分が随分緊張していたんだと初めて知った。

「私は大丈夫です。レオさんが守ってくれましたから」

リッチモンドさんに支えられながら、なんとか話をする。

「そうか。レオも怪我はないか? よくカナデを守ってくれた」
「いえ、カナデ様が結界を張ってくださいましたので無事でした。結界が無ければアレには勝てなかったでしょう……」
「レオ、そう落ち込むでない。邪竜に勝てる者などわししかいないのだからな」

ニヤリと笑うリッチモンドさんに、レオさんも安心したようで、困ったように笑っていた。

「それと、リッチモンド様……クレマンスですが」

レオさんの言葉に、クレマンスさんの肩がビクリと震える。

「どうした? 怪我でもしたのか」
「それはカナデ様が治療しました。……クレマンスはどうやら、黒いドラゴンに家族を人質に取られているらしく、リッチモンド様とカナデ様をここへ連れて来るよう命じられていたのだそうです」
「そうか……」

リッチモンドさんがクレマンスさんを見る。

「リッチモンド様……っ 申し訳ございませんっ」

顔面蒼白で謝罪するクレマンスさんに、

「クレマンスよ、辛かっただろう……」

リッチモンドさんはそう、優しく声を掛けた。

ああ、もう。
この人は何て優しい人なんだろう。

「っ……ぅ、あ…ぁぁぁぁッ」

クレマンスさんはその言葉に、子供のように泣き出し、私も貰い泣きしそうになった。


リッチモンドさんを好きになって良かった。
こんな素敵な人に出会えて良かった。


この世界に来てから、貴方に出会ってから、私は幸せな事ばかりだよ。リッチモンドさん。


◇◇◇



「───……リッチモンドさん、私は邪竜に会った事もないのに、どうして邪竜は私の事を知っていたんですか?」

クレマンスさんが落ち着いた頃に、逆鱗の通話でも聞いた事をもう一度聞いてみる。

リッチモンドさんは何かを知ってる風だったから、ずっと気になってたんだよね。

「うむ……。何から話すべきか……」

彼は暫く考えてから、口を開いた。



「邪竜は、わしの双子の兄なのだ───」



しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです

との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。 白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・  沈黙を続けていたルカが、 「新しく商会を作って、その先は?」 ーーーーーー 題名 少し改変しました

お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました

蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。 家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。 アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。 閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。 養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

【完結】婚約者は私を大切にしてくれるけれど、好きでは無かったみたい。

まりぃべる
恋愛
伯爵家の娘、クラーラ。彼女の婚約者は、いつも優しくエスコートしてくれる。そして蕩けるような甘い言葉をくれる。 少しだけ疑問に思う部分もあるけれど、彼が不器用なだけなのだと思っていた。 そんな甘い言葉に騙されて、きっと幸せな結婚生活が送れると思ったのに、それは偽りだった……。 そんな人と結婚生活を送りたくないと両親に相談すると、それに向けて動いてくれる。 人生を変える人にも出会い、学院生活を送りながら新しい一歩を踏み出していくお話。 ☆※感想頂いたからからのご指摘により、この一文を追加します。 王道(?)の、世間にありふれたお話とは多分一味違います。 王道のお話がいい方は、引っ掛かるご様子ですので、申し訳ありませんが引き返して下さいませ。 ☆現実にも似たような名前、言い回し、言葉、表現などがあると思いますが、作者の世界観の為、現実世界とは少し異なります。 作者の、緩い世界観だと思って頂けると幸いです。 ☆以前投稿した作品の中に出てくる子がチラッと出てきます。分かる人は少ないと思いますが、万が一分かって下さった方がいましたら嬉しいです。(全く物語には響きませんので、読んでいなくても全く問題ありません。) ☆完結してますので、随時更新していきます。番外編も含めて全35話です。 ★感想いただきまして、さすがにちょっと可哀想かなと最後の35話、文を少し付けたしました。私めの表現の力不足でした…それでも読んで下さいまして嬉しいです。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

家の全仕事を請け負っていた私ですが「無能はいらない!」と追放されました。

水垣するめ
恋愛
主人公のミア・スコットは幼い頃から家の仕事をさせられていた。 兄と妹が優秀すぎたため、ミアは「無能」とレッテルが貼られていた。 しかし幼い頃から仕事を行ってきたミアは仕事の腕が鍛えられ、とても優秀になっていた。 それは公爵家の仕事を一人で回せるくらいに。 だが最初からミアを見下している両親や兄と妹はそれには気づかない。 そしてある日、とうとうミアを家から追い出してしまう。 自由になったミアは人生を謳歌し始める。 それと対象的に、ミアを追放したスコット家は仕事が回らなくなり没落していく……。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

処理中です...