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第一章
41.日本人だから
しおりを挟む「カナデ様……。承知しました。貴女様はそういう御方だと、だからこそ我々はここに在るのだという事を、再認識させられました」
もう止めはしませんとレオさんに言われ、申し訳ないと思いながらも家召喚を心の中で唱える。
すると、
“別荘地を開拓しますか?”
と見た事がない言葉が目の前に現れたのだ。
え? 村じゃないの!? 開拓?? 村と何が違うの!?
クレマンスさんの所まで結界が広がらなかったらどうしようと不安に思いながら、一か八かだ! とYESを選択すると今度は、
“開拓する場所を選択して下さい”
と地下の地図が現れたのだ。
自分が居る所は赤く点滅しており、スマホの画面のように拡大、縮小も出来るようだ。
私はすぐに赤く点滅している部分を拡大し、クレマンスさんが居る辺りをタップした。
刹那、邪竜らしき黒いドラゴンが消え、クレマンスさんが居る場所が整地されたのだ。
「クレマンスさん!!」
慌てて駆け寄り、リュックの中からスポーツ飲料水を取り出して飲ませる。
正直、血だらけで全身の骨も折れているような状態だったクレマンスさんを見て、生きているのかも分からなかったが、スポーツ飲料水を飲ませると喉が動いたので少しだけホッとした。
「…………ど、して……」
暫くして、意識を取り戻したクレマンスさんは、そう呟き、涙をこぼした。
「目の前で死にそうな人を、放っておける日本人なんていません!」
「……にほ……? よく、分からない、が……、お前が……底抜けの、お人好しだという事は分かった……」
「違います。私はただ、人を見殺しにするという行為をする事が嫌だったんです。ただの自己満足なんです」
「……私は、お前達を……騙していた、のに……。見殺しに、されても……仕方なかった……のに」
「だとしても、見殺しは嫌です!」
「っ…………すま、ない……、すまない……っ」
クレマンスさんは、私達に何度も謝り、涙を流し続けた。
彼女が落ち着くまで、何も言わずに居たのだが、いつの間にか身体の状態は骨も正常に戻り、傷も治って居たので安心した。
「貴様は、何故私達を騙してまでドラゴンの国へ連れて来たんだ」
暫くして、涙も止まったクレマンスさんにレオさんが追及し始めたので、一人であわあわしてしまう。
クレマンスさんは当然の質問だと俯き、口を開いたのだ。
「……先程のあのドラゴンは、赤竜のロッソだ」
え? ロッソって、リッチモンドさんをドラゴンの国から追い出して王様になったドラゴンじゃなかったっけ?
「邪竜の封印を解いたドラゴンか」
「そうだ」
「そいつは、邪竜に殺されたのではなかったのか」
「殺されたように見えた……だが、ロッソの身体を黒い靄が包み込むと、あのような黒いドラゴンの姿になったのだ……っ そして、」
クレマンスさんが私を見る。
「ロッソは言った。リッチモンド様と、一緒にいる娘を連れて来いと…………っ 連れて来なければ、私の家族を皆殺しにする。と」
家族を人質に取られたの!?
それなら、騙してここまで連れて来ようとするのも無理ないよね……。
「あれ? でも、何でそのロッソっていうドラゴンは、私の事を知ってたんだろ?」
「カナデ様、恐らくあれはロッソというドラゴンの身体を操っている、邪竜ではないかと思います」
「例え邪竜だとしても、封印されてたんだよね? 何で私の事も、リッチモンドさんの居る場所まで、知っていたの?」
「それは……邪竜というだけあって、そういう能力があるのではないですか?」
「封印されてたのに?」
「…………確かに、そう言われますと、おかしい気がしてきます」
レオさんが首をひねる。私も同じように首をひねり考えるが答えは出ない。
「真っ黒に変わったロッソは、お前を欲しがっているようだった……」
「え、何で!?」
「私には分からない……役に立てず、すまない」
クレマンスが落ち込むように項垂れ、レオさんはリッチモンドさんと合流しようと言い出す。
「そうだね。先ずはリッチモンドさんと合流しなきゃだよね」
逆鱗のネックレスを服の中から取り出し握り締める。
“リッチモンドさん、聞こえますか?”
念じるように、ネックレスに言葉をかけると、
“カナデ!? やはりそっちでも何かあったのか!?”
“あったのはあったんだけど、家召喚しているから大丈夫です。それより、そっちでもって、リッチモンドさんの方でも何かあったんですか!?”
“こちらは、黒いドラゴンが襲ってきたが、返り討ちにしたから問題はない。そっちはどうしたのだ?”
“じつは───……”
さっきあった事をリッチモンドさんに話す。
その上でリッチモンドさんと合流したい旨を伝えれば、既に此方へ向かっているとの事だった。
さすが行動が早い。
“……でも、邪竜が何故私の事を知っていたのか、分からないんですよね”
“もしかしたら……”
“リッチモンドさん、何か知ってるんですか?”
“うむ……。この話は、合流してからにしよう”
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