41 / 53
第一章
41.日本人だから
しおりを挟む「カナデ様……。承知しました。貴女様はそういう御方だと、だからこそ我々はここに在るのだという事を、再認識させられました」
もう止めはしませんとレオさんに言われ、申し訳ないと思いながらも家召喚を心の中で唱える。
すると、
“別荘地を開拓しますか?”
と見た事がない言葉が目の前に現れたのだ。
え? 村じゃないの!? 開拓?? 村と何が違うの!?
クレマンスさんの所まで結界が広がらなかったらどうしようと不安に思いながら、一か八かだ! とYESを選択すると今度は、
“開拓する場所を選択して下さい”
と地下の地図が現れたのだ。
自分が居る所は赤く点滅しており、スマホの画面のように拡大、縮小も出来るようだ。
私はすぐに赤く点滅している部分を拡大し、クレマンスさんが居る辺りをタップした。
刹那、邪竜らしき黒いドラゴンが消え、クレマンスさんが居る場所が整地されたのだ。
「クレマンスさん!!」
慌てて駆け寄り、リュックの中からスポーツ飲料水を取り出して飲ませる。
正直、血だらけで全身の骨も折れているような状態だったクレマンスさんを見て、生きているのかも分からなかったが、スポーツ飲料水を飲ませると喉が動いたので少しだけホッとした。
「…………ど、して……」
暫くして、意識を取り戻したクレマンスさんは、そう呟き、涙をこぼした。
「目の前で死にそうな人を、放っておける日本人なんていません!」
「……にほ……? よく、分からない、が……、お前が……底抜けの、お人好しだという事は分かった……」
「違います。私はただ、人を見殺しにするという行為をする事が嫌だったんです。ただの自己満足なんです」
「……私は、お前達を……騙していた、のに……。見殺しに、されても……仕方なかった……のに」
「だとしても、見殺しは嫌です!」
「っ…………すま、ない……、すまない……っ」
クレマンスさんは、私達に何度も謝り、涙を流し続けた。
彼女が落ち着くまで、何も言わずに居たのだが、いつの間にか身体の状態は骨も正常に戻り、傷も治って居たので安心した。
「貴様は、何故私達を騙してまでドラゴンの国へ連れて来たんだ」
暫くして、涙も止まったクレマンスさんにレオさんが追及し始めたので、一人であわあわしてしまう。
クレマンスさんは当然の質問だと俯き、口を開いたのだ。
「……先程のあのドラゴンは、赤竜のロッソだ」
え? ロッソって、リッチモンドさんをドラゴンの国から追い出して王様になったドラゴンじゃなかったっけ?
「邪竜の封印を解いたドラゴンか」
「そうだ」
「そいつは、邪竜に殺されたのではなかったのか」
「殺されたように見えた……だが、ロッソの身体を黒い靄が包み込むと、あのような黒いドラゴンの姿になったのだ……っ そして、」
クレマンスさんが私を見る。
「ロッソは言った。リッチモンド様と、一緒にいる娘を連れて来いと…………っ 連れて来なければ、私の家族を皆殺しにする。と」
家族を人質に取られたの!?
それなら、騙してここまで連れて来ようとするのも無理ないよね……。
「あれ? でも、何でそのロッソっていうドラゴンは、私の事を知ってたんだろ?」
「カナデ様、恐らくあれはロッソというドラゴンの身体を操っている、邪竜ではないかと思います」
「例え邪竜だとしても、封印されてたんだよね? 何で私の事も、リッチモンドさんの居る場所まで、知っていたの?」
「それは……邪竜というだけあって、そういう能力があるのではないですか?」
「封印されてたのに?」
「…………確かに、そう言われますと、おかしい気がしてきます」
レオさんが首をひねる。私も同じように首をひねり考えるが答えは出ない。
「真っ黒に変わったロッソは、お前を欲しがっているようだった……」
「え、何で!?」
「私には分からない……役に立てず、すまない」
クレマンスが落ち込むように項垂れ、レオさんはリッチモンドさんと合流しようと言い出す。
「そうだね。先ずはリッチモンドさんと合流しなきゃだよね」
逆鱗のネックレスを服の中から取り出し握り締める。
“リッチモンドさん、聞こえますか?”
念じるように、ネックレスに言葉をかけると、
“カナデ!? やはりそっちでも何かあったのか!?”
“あったのはあったんだけど、家召喚しているから大丈夫です。それより、そっちでもって、リッチモンドさんの方でも何かあったんですか!?”
“こちらは、黒いドラゴンが襲ってきたが、返り討ちにしたから問題はない。そっちはどうしたのだ?”
“じつは───……”
さっきあった事をリッチモンドさんに話す。
その上でリッチモンドさんと合流したい旨を伝えれば、既に此方へ向かっているとの事だった。
さすが行動が早い。
“……でも、邪竜が何故私の事を知っていたのか、分からないんですよね”
“もしかしたら……”
“リッチモンドさん、何か知ってるんですか?”
“うむ……。この話は、合流してからにしよう”
260
お気に入りに追加
3,529
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
妹を溺愛したい旦那様は婚約者の私に出ていってほしそうなので、本当に出ていってあげます
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族令嬢であったアリアに幸せにすると声をかけ、婚約関係を結んだグレゴリー第一王子。しかしその後、グレゴリーはアリアの妹との関係を深めていく…。ある日、彼はアリアに出ていってほしいと独り言をつぶやいてしまう。それを耳にしたアリアは、その言葉の通りに家出することを決意するのだった…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる