私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

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第一章

40.黒いドラゴン

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リッチモンド視点


『……おかしい。邪竜がいくら王都を滅ぼしたとしても、ヤツは昔からこの地に執着していたはず。だからこそ、まだ近くに居ると踏んでいたのだが……』

わしは飛んできた方を向き、胸騒ぎに不安を覚えた。

カナデと離れたからか……?
レオがいるから大丈夫だとは思うが……やはり一旦戻った方が……、


グルルルル……


『!? 何だ……』

今、瓦礫の下から聞こえたような……?

刹那、瓦礫が盛り上がり、その中からドラゴンが出てきたのだ。

グルゥアアアアァァァァ!!!!

『黒だと……!?』

そのまま体当たりしてきた漆黒のドラゴンに愕然とする。

漆黒はこの世で、邪竜だけのはずだ……っ

グルゥアアアアァァァァ!!!!

『ふんっ その程度の体当たりも咆哮も、わしには効かぬ』

尻尾で叩き落とし、地面に転がった黒いドラゴンの様子を窺う。
するとドラゴンの漆黒だった身体が、徐々に緑へと変化していったのだ。

やはり、此奴は邪竜ではない。


一体どういうことだ───……



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



カナデ視点


「何が目的だ」
「…………っ 私は……」


グルル……


「ヒィ……ッ」

え、何!? 今、空気が震えるような音が、地下の奥から聞こえてきた……っ

「カナデ様、クレマンスが怯えているようです」
「どうして……??」
「ドラゴンの国の騎士である彼女が怯えるのです。答えは一つしかありません……」
「それって」

“邪竜”がこの地下に居るっていう事?!

レオさんを見れば、彼は真剣な顔で頷き、冷や汗をかいているではないか。

レオさんの顔色が悪い。これは、マズいのかもしれない。

「は、早くこの結界を解いてくれ!!! 早く……っ」

悲壮な叫び声を上げるクレマンスさんの尋常ではない様子に、助けた方が良いんじゃないかと思ったその時、

「カナデ様っ クレマンスを結界の中に入れてはいけません!!」

その声に驚いて、クレマンスさんから目を離してしまった。


「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


瞳の端に赤が見え、つんざくような悲鳴が地下に響く───


「見てはいけません」
「レオさ……っ」

レオさんに目を覆われ、何も見えなくなった。

「たす、助けなきゃ……っ」

クレマンスさんが……っ

そう思うのに、足が震えて動かない。

「カナデ様、屋敷の中へお入り下さいっ」

レオさんは、その光景を見せないようにしなから、震えて動けなくなった私を別荘の中に押し込めようとする。

グルル……

“何か”が、クレマンスさんの傍にいる。

“何か”が、クレマンスさんに………………。

「な、何が起きて……っ」

喉が、恐怖でぎゅっとしまり、上手く話せない。

「大丈夫です。結界内には何者も入っては来れません」

いつの間にか抱き上げられ、別荘の中へ運ばれていた。

「レ、オさ……っ」
「カナデ様は絶対に出てきてはいけません」

そう言ってレオさんは、別荘の入口を閉めたのだ。

「レオさん!!」

もし、あの“何か”が、この結界内に入ってきたら……?
レオさんがもし、結界の外へ出てしまったら?

「リッチモンドさん……っ」

逆鱗のネックレスを握るが、ハッとする。

リッチモンドさんは、結界の外にいる。
もしリッチモンドさんがここに戻ってきて、あの“何か”と鉢合わせしたら…………っ

嫌だ。

ネックレスから手を離す。

どうしたら良いの……っ 何で私は攻撃力が皆無なの!!

「レオさん!!」

レオさんだけは、守らないとっ

そう思い、扉を開けて外に飛び出した。
そこで見た光景は………………、

「クレ、マンスさ…………」

漆黒のドラゴンの足に押さえつけられ、血を流している彼女の姿だった。

「カナデ様っ 出てきてはダメだと言いましたよね!?」
「だ、だって、レオさんに何かあったら……っ」
「私は結界内に居るので大丈夫です。カナデ様は、あのドラゴンの目に入らぬよう、屋敷の中へ居て下さい」
「嫌!! だって目を離したら、レオさんまで襲われるかもしれないッ」
「カナデ様……」
「それに、クレマンスさんをあのドラゴンから助けなきゃ……」

まだ、生きてる。
微かに、呼吸音が聞こえるから、間に合うかもしれない。

「クレマンスは我々を裏切ったのですよ!?」
「うん。でも、裏切りたくて裏切ったわけじゃないでしょ? 多分、あのドラゴンに脅されてたんだよ」

漆黒なのに、よく見れば所々に赤い鱗がある邪竜を見遣る。

「クレマンスさんを結界内に入れて、あいつを遠ざけるには、ここをもっと拡大するしかない!」
「ですが、どうやって……」


「私のスキル、“村”をここに作る!!」


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