私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

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第一章

39.裏切り

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リッチモンドさんが言うように、ドラゴンの国の王都には邪竜の邪の字も無かった。

ドラゴンの姿も……というよりは、建物すらも瓦礫に変わり、とても街があったとは思えない惨状だった。

1週間前と言っていたけど、何かが焼け焦げたような匂いがまだ漂っている……。



「ここが、ソレルーナドラゴ王国です……」

人型に変わったクレマンスさんが、下唇を噛み肩を震わせ俯いた。

「……そうか」

リッチモンドさんは一言呟いたまま、黙って瓦礫に変わった故郷を眺めていた。

その寂しそうな背中を見て、本当は抱きしめたかったけど……私は声を掛ける事も、触れる事も出来ず、ただ見つめる事しか出来なくて、そんな自分がとても情けなかった。

こんな時に、大切な人の力になれないなんて……っ




暫くそこへ佇んでいた二人だったが、王宮に向かって歩き出したので、レオさんと共に後を付いていく。

「お城って、あの瓦礫の山なのかな……」
「そうですね……。本当に地下があるのでしょうか……」

相当大きなお城だったのだろう。瓦礫の山と言う言葉の通り、本当に日本にある山のような大きさで崩れ落ちているのだ。

「この瓦礫を退かさないと、地下へ行けそうもないけど、どうやって退かせばいいんだろう……」
「カナデ、レオ、少し下がっていなさい」

リッチモンドさんがそう言ってドラゴン化し、私達が下がるのを確認して、ドラゴンブレスという魔法? を口から吐いたのだ。

「ひぇ……っ」

爆弾が爆発したような音と同時に、ボババババッと台風の中に立っているような強風が顔にぶつかり、暫く目が開けていられなかった。

これがレオさんの後ろに庇ってもらっての衝撃なのだ。レオさんは大丈夫だろうか。

「カナデ様、お怪我はございませんか?」
「ぅ、うん。大丈夫。レオさんは?」
「私は平気です。慣れておりますから」

慣れてるの!?

よく見ると私は髪がボサボサなのに、レオさんはサラサラと風になびいているだけだ。
近くにいるクレマンスさんもサラサラで、何で私だけ!? と慌てて手櫛で髪を整える。

「カナデ、驚かせてしまったか? すまぬな」

リッチモンドさんに頬を撫でられ、ふぬぅっと変な声が出た。

「ほら、地下への入口が出てきたぞ」

彼の声にさっきまであった瓦礫の山が、綺麗サッパリ無くなっている事に気付く。

ええ!? 山だよっ あの山一つ消したの!!!?

「今のブレスで邪竜がこちらに気付いたかもしれぬ。わしはこの周辺を飛んでくるのでな。カナデは地下に入ったらすぐに“家召喚”を行うのだぞ」
「は、はい!」

うぅ……。段々緊張してきた……。

「レオ、カナデを頼んだ」
「畏まりました。この命に変えてもお守りします」
「レオ、己の命も守ってこそ、本物の騎士なのだぞ」
「っ……リッチモンド様……」
「カナデと己の命を守りきれ。良いな」
「はっ」

彼はもう一度ドラゴン化すると、その翼を広げる。

『リッチモンドさん!!』
『カナデ、何かあればわしを呼べ』

リッチモンドさんは、彼から貰った逆鱗のネックレスがある部分に、ちょんっと鼻先で触れ、飛び立っていったのだ。

「カナデ様、参りましょう」
「……うん。クレマンスさん、地下を案内してくれますか?」
「ああ……」

クレマンスさんを先頭に、その後ろを私、最後尾をレオさんという順で、地下への階段を降りる。

「ドラゴンさんのお城なのに、地下への階段は人間仕様なサイズなんですね」
「ここは元々隠し通路だからな。このように人型でないと通れないのだ」
「ん? 隠し通路なら、出口があるはずですよね?そこから皆で逃げなかったんですか?」
「先程の瓦礫の山を忘れたのか? 当然出口も塞がれている。地下に逃げ込んだドラゴン達は、閉じ込められてしまったのだ」

んん? 何か違和感があるんだけど、なんだろう??



「……カナデ様、ここで家召喚して下さい。私とリッチモンド様以外入れぬように」

レオさんが階段を下る途中でこっそり囁いてきたのだ。

私もさっきから変な違和感があるし、レオさんの言う通り、家召喚をする為にステータスを出すことにした。

ステータスから家召喚を選ぶと…………、


“別荘を召喚しますか?”


別荘!? 何それ。離れた所で家召喚すると別荘扱いになるの!?

とりあえず、召喚します!!


“整地します”


だよね。そうなるよね。
でもここ、階段なんだけど!?


家召喚というスキルに階段など関係なかった。


私とレオさんをその場に残し、階段の幅などなんのその、壁をぶち抜き地面は段差の分だけ埋め立てられていく。

これはもう整地じゃない。地下帝国でも作る気なのか。

「な!? 人間っ 一体何をしたのだ!?」

クレマンスさんは整地された外側から叫んでいるが、レオさんは私を後ろに庇い、彼女を警戒しているではないか。


やっぱりそうなのか……。


「人間っ 私も入れてくれっ どういう事か聞かせて欲しい!!」
「黙れ。貴様はリッチモンド様や我々をここに連れてきて、一体どうするつもりなのだ!」
「!? なんの事だっ どういう事か私には分からないのだが!?」

クレマンスさんは意味が分からないと必死でレオさんに叫んでいる。

「貴様は先程、カナデ様にここが隠し通路だと話していたな」
「あ、ああ……そうだが、」
「そして出口は先程の瓦礫の山の下だと言ったな」
「それがどうかしたのか?」

クレマンスさんは、本当に分からないといった体で、レオさんを見ると首を傾げたのだ。

「通常、城に作られる隠し通路は、城の“外”へと繋がっているものだ。なぜなら、城から脱出する為のものだからだ。にもかかわらず、貴様は城の瓦礫の下にあると言い切った」
「そ、それは違うっ 城の外も同じように瓦礫の世界が広がっているだろうっ 言い間違えただけだ!」
「言い間違えたとしても、出口は城が瓦解した山のような瓦礫の下ではなく、当然ドラゴンならば退かせられる程度の瓦礫の下だろう」
「く……っ」

彼女が言葉に詰まり、拳を握る。
レオさんは険しい顔をして彼女を睨みつけていた。


やっぱりクレマンスさんは……、私達をここに誘き出す事が目的だったんだ。


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