私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

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第一章

38.出発

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「えぇ!!? リッチモンドさんが封印したんですか!?」

衝撃の発言に、その場に居た皆が呆然とリッチモンドさんを見ている。

「そうだ。わしが全盛期の頃に、苦労してやっと封印したのだ」
「リッチモンド様でも、苦労されたのですか……」

リッチモンドさんの力をいつも間近で感じているレオさんが、冷や汗をかいて愕然としている。

邪竜は相当危険なドラゴンなのかもしれない。

「ですが、何故そのように危険なドラゴンの封印を解いてしまったのでしょう?」

誰もが思っていた事を、イヴリンさんが口にすると、リッチモンドさんは「わからぬ」と首を横に振った。

「だが、あやつ……ロッソという赤竜が封印を解いたらしいのだが、あれは自身の力に酔っておったからな。勝てるとでも勘違いしたのだろう」
「なんと愚かな……っ」

レオさんがボソリと零した言葉に皆が頷く。

あの青いドラゴンさんは、封印は1000年しか保たないと言っていた。私達からしてみれば、1000年は気が遠くなる程長くても、ドラゴンからしてみれば、1000年は10年位の感覚なのかもしれない。

それでも、国を滅ぼす力を持つドラゴンと自分の力を比べれば、どっちが強いか分かりそうなものだけど……。

「ロッソが何を考えていたのかは分からぬが……わしにとってはヤツも大切な民の一人だったのだよ」
「リッチモンドさん……」

優しいこの人は、国を追い出されてもなお、恨んではいなかったんだ。

「とにかく、私とリッチモンドさんはドラゴンの国に行ってくるので、皆には子供達をお願いしたいんです」
「!? お待ち下さいっ 何故お二人だけでそのような危険な場所に行こうとなさるのですか!?」

レオさんが椅子から立ち上がり声を上げた。

「レオさん?」
「お二人をお守りするのは私の役目です!!」
「レオ、おぬしを邪竜の前に連れて行くわけには……「私はお二人の護衛です!!」」

レオさんの意思は固く、これはもう置いて行くわけにはいかなくなった。

リッチモンドさんと目を合わせ、頷きあう。

「分かった。レオ、ついておいで」
「ありがとうございます!!」

レオさんって、猫なのに犬みたいな忠誠心があるよね。

「私もご一緒したいですが……足手まといになりそうなので諦めます……」

イヴリンさんが項垂れ、ローガンさんの肩に顔を埋める。

「イヴリン……」
「イヴリンさん、大丈夫ですよ。私にはリッチモンドさんとレオさんがついてますし、家を召喚出来るスキルもありますから!」
「カナデ様……っ どうか、無事にお帰り下さいっ」

イヴリンさんに手を握られ、無事を祈られる。
ローガンさんやヒューゴさんも無事を祈ってくれて、皆の優しい気持ちにほっこりした。


そして、


私達はドラゴンの国、ソレルーナドラゴ王国へと出発したのだ。

『クレマンスさん、逃げたドラゴンさん達が隠れられそうな場所ってあるんですか?』
『王都の近くだと、王宮の地下に逃げ込んだ者もいるとは思うが……果たして生き残っているかは分からない』

リッチモンドさんの背中から隣を飛ぶクレマンスさんに話しかける。

クレマンスさんは元王様の背中に私とレオさんが乗っている事に抵抗があるのか、チラチラと私達とリッチモンドさんに視線を移動させながら質問に答えてくれた。

『邪竜が滅ぼした国にいつまでもいるとは思えない。すぐに去ってくれていれば、城の地下でドラゴン達が生き延びている可能性は高い。ドラゴンの生命力は強いからな』

クレマンスさんの答えに、リッチモンドさんはそうフォローし、彼女を安心させてあげようとしていた。

どこまでも優しい人だ。

リッチモンドさんの背中を撫で、前を見る。

どこまでも続く青空と、自分がいる場所よりも下にある雲。そして眩しい太陽の光を美しいと感じるが、これから行くのは、すでに滅びたリッチモンドさんの故郷なのだ。

そんな理由がなければ、清々しい気持ちでいれただろうに。

『カナデ、王都に着いたらすぐに城の地下へ家を召喚するのだぞ』
『はい。分かってますから、リッチモンドさんは自分の事を一番に考えて下さい』
『カナデ……』
『私は大丈夫です。地下でドラゴンさん達を見つけたら保護しますね! 大量にスポーツ飲料水を持って来たし、心配しないで』

背中のパンパンになったリュック見せながら笑えば、リッチモンドさんはそれでも心配そうにしていたけど、貴方の方が危険なんですよと言いたい。

だって、リッチモンドさんは邪竜を探しに王都周辺を見て回ると言うのだから。

『……カナデ、わしもカナデからもらった“すぽーつ飲料水”を沢山インベントリに収納している。他にもカナデが作ってくれた料理もあるしな。これさえあれば誰にも負けぬよ』

白い翼を羽ばたかせながら、そう言って空を飛ぶリッチモンドさんは、本当に素敵だった。

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