私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

文字の大きさ
上 下
35 / 53
第一章

35.ガパオライス

しおりを挟む


「ドラゴンさん!? 大変っ スポーツ飲料水飲ませなきゃいけないのに、気を失ってる……っ」

確か、意識の無い状態で飲み物を飲ませると、器官に詰まる可能性が高いんだよね!?

どうしよう……っ

「カナデ様、大丈夫です。スポーツ飲料水を飲ませましょう」

ヒューゴさんがやって来て、スポーツ飲料水を渡してくれた。

「このスポーツ飲料水は状態異常を回復するポーションです。つまり、喉に詰まっても、状態異常回復が勝るに違いありません」

なるほど! さすがヒューゴさんだ。

「じゃあ、飲ませてみます」

ドラゴンの大きな口と牙に一瞬怯んでしまったが、村の人達に手伝ってもらい、口を開けて貰う。かなり前に出てきていた脚立に乗って、口の奥にスポーツ飲料水を持った手を突っ込み、流し込んだのだ。

『ぅ……っ』

口が閉じられそうになったので、村の人達と急いで退避する。

びっくりした……。

もう少し遅れていたら腕が無くなっていたかもしれない。

ボロボロの羽や千切れかけていた尻尾がゆっくりと治っていっている。

まるで時間が巻き戻っているみたいだ。

「良かった……喉にも詰まってないし、怪我も治っていってる」
「カナデ様、暫くしたら目覚めるはずですから、ドラゴン様のお食事を作って参りますね」
「あ、イヴリンさん。私も一緒に作ります。丁度お昼ご飯も作ってる途中だったし。あ、皆さん、ドラゴンさんをお任せしても良いですか?」
「勿論です!」

イヴリンさんが料理を作るというので、昼食を作っている最中だったのを思い出し、キッチンへ行く事にした。

ドラゴンさんは巨大なドラゴンの姿のままなので、皆には気をつけるように伝えて移動した。

「あのドラゴンさん、女性の方でした」
「そうなんですか? ドラゴンの姿だと性別が分からないですが、カナデ様はお分かりになったのですね」
「声が女性の声だったので」

ヘラリと笑いながら、イヴリンさんと話しつつ料理を作っていく。

今日の昼食は、ガパオライス!
子供達が居ると、昼食は丼ものが一番なんだよね。

ナンプラーが出てきたし、リッチモンドさん達が取ってきてくれた鳥肉があるから、沢山作れそう!!


先ずはパプリカ、ピーマン、玉ねぎ、ニンニクを切って、フライパンで目玉焼きを作ります!

私は半熟の目玉焼きが好きだから、焼きすぎないように注意して……よし、出来た!

フライパンから目玉焼きを取り出したら、そこへニンニクと豆板醤を入れて炒めて……鳥を挽肉にした物を炒めたら野菜を入れてさらに炒めます!

「カナデ様、“なんぷら”と“おいすたソース”、お酒と砂糖を混ぜ終わりましたよ」
「ありがとうございます! じゃあそれをフライパンの中に入れて下さい」

イヴリンさんに混ぜ合わせてもらっていた調味料を入れてもらうと、ジュワッと音がたって、それと共に美味しそうな匂いが鼻孔をくすぐる。

はぁ~。いい匂い。

このまま水分をある程度飛ばして……

「イヴリンさん、後はご飯を器に盛ってもらったら、これと目玉焼きとサラダを入れて完成ですよ!」
「あら、でしたら子供達を呼んで来なければなりませんね! カナデ様、私が行ってきますので少々お待ち下さい」
「ありがとうございまーす」

イヴリンさんが子供達を呼びに行ってる間に盛り付けて……サラダにドレッシングをかけてレモンを添えたら完成!!

彩りも良いし、あの青いドラゴンさんも食べてくれるかなぁ。

「カナデ様、昼食の準備を手伝いに来ました!」

ぴょこんと扉の影から顔と耳を出したラヴィちゃんが、ほとんど出来ている料理を見て「え!? もう出来たんですか!?」と驚いている。

そういえばいつもより少し作るのが早いもんね。

あれ? ラヴィちゃん、もしかして青いドラゴンさんが来た事知らないとか?

「ラヴィちゃん、さっきね、ボロボロのドラゴンさんが庭にやって来たの」
「え!? リッチモンド様が怪我をされたんですか!? た、大変じゃないですか!!」
「違う、違う。リッチモンドさんじゃなくて、別のドラゴンさんがやって来たの。だからいつもより早く昼食を作ったんだよ」
「へ? 別のドラゴンさんですか??」
「うん。少し早いけど、皆でお昼食べよっか」

ラヴィちゃんはきょとんとした顔で瞳を瞬かせて、暫く考えた後、「はい!!」ととても良い返事をしたのだった。

子供達とイヴリンさん達家族、そして自称メイドチームには先に昼ご飯をしてもらい、私は青いドラゴンさんのところへガパオライスを運ぶ。

皆は私がわざわざ運ばなくても良いと言うが、青いドラゴンさんは人間の言葉が分からないかもしれないから、私が行った方が良いだろう。

前にリッチモンドさんは、自分は長く生きているから、人間の言葉が分かると言っていたしね。

庭に集まっている村人達の間を通り抜けて、さっき頼んだ村人とヒューゴさんに声を掛ける。

「ドラゴンさんの目は覚めましたか?」
「あ、カナデ様っ 目は覚めたようですが、私には何を仰っているのかわからず……今、ヒューゴ様が対応しております」

そういえば、ヒューゴさんはリッチモンドさんにドラゴンの言葉を習ってたよね。

『ここは、“魔の森”ではなかったのか……?』
『ココハ、“マノモリ”ノナカ、アル。カナデサマノムラダ』
『カナデ様?』
『サッキ、アナタタスケタ、オカタダ』

おおぅ。ヒューゴさん、片言のドラゴン語だね。

「ヒューゴさん、ドラゴンさんの事、ありがとうございます」
「カナデ様。いえ、私のドラゴン語がなんとか通じているみたいで、自信に繋がりました!」
「そ、それは良かったですね」

ハハッと笑って、青いドラゴンさんへ向き直る。

『ドラゴンさん、身体の調子はいかがですか?』
『お前は……先程の人間か。私は一体……、死にかけていたが、目覚めたら傷が全て治っていた。どんなに優秀な治癒魔法の使い手でも、無傷にするなど出来ないはずだが……』

自分の尻尾や羽を見て首を傾げているドラゴンさんに、安心するよう微笑む。

『それより、お腹空いてませんか? 食事を用意したので、良かったら人化してもらって、お食事にしませんか?』
『……良い匂いがすると思っていた……』

ドラゴンさんはそう言って、人化したのだ。

『有り難くいただこう』

私の目の前には、艷やかな黒みがかった青い髪を風に靡かせた、スーパーモデルのような美人さんが立っていたのだ。

しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです

との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。 白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・  沈黙を続けていたルカが、 「新しく商会を作って、その先は?」 ーーーーーー 題名 少し改変しました

妹を溺愛したい旦那様は婚約者の私に出ていってほしそうなので、本当に出ていってあげます

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族令嬢であったアリアに幸せにすると声をかけ、婚約関係を結んだグレゴリー第一王子。しかしその後、グレゴリーはアリアの妹との関係を深めていく…。ある日、彼はアリアに出ていってほしいと独り言をつぶやいてしまう。それを耳にしたアリアは、その言葉の通りに家出することを決意するのだった…。

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

処理中です...