32 / 53
第一章
32.好きというのは
しおりを挟む???視点
ドラゴンの国 ── ソレルーナドラゴ王国 ──
「リッチモンドは出て行ったのか」
赤竜である現国王、ロッソ様が、あの方のを気にされている。
前国王である、リッチモンド様……。
お年による力の衰退さえ無ければ、私も未だあの方を支持していたとうのに……。
あの方は日に日に食欲もなくなり、寿命も後2、300年というところだった。
これ以上の国王としての業務は、あの方の負担になり、残り少ない寿命を削るだけだろうと、自らが死ぬまで国民に尽くす気だったあの方を、無理矢理退かせる他無かったかのだ……。
しかし、
「はい。今や国民さえもあの方の国外追放を願い、出て行かざるを得なくなりましたから……」
「フンッ 愚かな民共が。リッチモンドのあの噂を、私が流したとも知らずに、今まで民の為に尽くした男を自ら追放するとはな」
なぜ、ロッソ様は追放などと愚かな事をしたのだ……っ
「……なぜ、あの方をあのような噂で追い立てたのですか? 貴方様ならば、何もしなくとも王になれたはずです」
「そんなもの決まっているだろう。奴を賢帝のまま退位させれば、俺が馬鹿共に侮られるだろうが」
そんな事で……っ
「そんな事の為に、リッチモンド様が国民の税金を私的に流用しているという噂を流されたのですか……。さらに自らの力がリッチモンド様を上回るとまで……」
赤竜は確かに、若いドラゴンの中では突出した力の持ち主だ。
しかし、お年を召したリッチモンド様の魔力には到底及ばない。
それなのに、自らの力をあの方より上などと!!
「何だ、善人面か? お前も俺に加担しただろう。今更俺を責めるなど、お門違いも良いところだ」
「っ……そう、ですね…………私に、貴方を責める資格などない」
私とて、あの方に生きて欲しいからと愚かな選択をした一人。
ロッソを責める資格などないのだ。
リッチモンド様……、私の愛する貴方は、今どちらで何をされているのでしょうか……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
カナデ視点
「今日はカナデの好きなボアピグを狩って来るので待っていてくれ」
「ひぇっ は、はいっ」
あれから、リッチモンドさんは本当に毎日好意を示してくれるようになった。
そして、とっても甘々になった。
「お母さん、おじいちゃんはどうしておじいちゃんじゃなくてお兄さんになったんですか?」とルイに聞かれた時は、どう答えたら良いのか分からず、口を鯉のようにパクパクさせてしまった。
「ルイもアーサーもミミリィも、カナデの事を頼んだぞ」
「「「はい!!」」」
子供達は、リッチモンドさんの言葉に大きな返事をして、頭を撫でられている。
リッチモンドさんって、やっぱり子供が好きだよね。
「カナデ、ではレオとカイを連れて行ってくるのでな。何かあれば、わしが渡した鱗を握り、話し掛けるのだぞ」
カイとは、新しく村にやって来た若者の一人で、レオさんと同じように剣の才能があったのか、リッチモンドさんの訓練を受けているのだ。
「はいっ」
私は胸元に光る、白く美しい鱗を握り、リッチモンドさんに笑顔を見せた。
この鱗はドラゴンの逆鱗らしく、つがう相手にアクセサリーに加工して与えるものなんだとか。
これを握って魔力を流しながら話すと、電話のように会話が出来る便利アイテムだ。
私はネックレスに加工されたそれを、リッチモンドさんから頂いたのである。
「では皆、行ってくる」
3人は、村の結界を越え、魔の森の中へと消えていったのだ。
「おじいちゃん、若くなってからすっごく格好いいね~」
「おじいちゃんは、おじいちゃんの頃からカッコよかったです」
「そう。おじいちゃんは、おじいちゃんでも格好いい」
「そうだね! ミミリィおじいちゃんだーいすき!!」
「僕も大好きです!」
「オレも」
子供達がリッチモンドさんを絶賛している中、私はリッチモンドさんのプロポーズ? にきちんと返事が出来なかった事に落ち込んでいた。
「カナデ様、草取りの続きをしながらお話いたしましょうか」
にっこり笑うイヴリンさんに頷いたのだ。
「───では、プロポーズにお返事されていないのですか? 好きなのに?」
「……はい。だって、ずっと家族だったし、そんな風に見てなかったのに、若くなって口説かれたから好きになりました。なんて……」
「まぁ。カナデ様はリッチモンド様が若く美しくなったから好きになったのですか?」
「それは……っ リッチモンドさんは皺のある顔でも、変わらず素敵で、顔だけじゃなく、全部が格好良いです!! だけど……実際プロポーズされてから好きになったわけだし……なんか、それはどうなのかなって……」
ブチブチと畑の草を抜きながらイヴリンさんに愚痴る私は、リッチモンドさんのように素敵な人にはとても釣り合わないだろう。
「リッチモンド様は、そんな事は気にされないと思いますが……。カナデ様は、本当に出会ってから今まで、一度も、男性として好ましいと思った事はないですか??」
「え……」
「この人が旦那様だったらいいのに。この人との間に、子供が生まれたらこんな感じかしら? などと、考えた事はないのですか?」
「あ……っ」
「あるのですね」
いつも、こんな人が旦那様ならって思ってた。
こんな人の子供を生めたらいいのにって……。
「男性として見れない人に、そんな事を思う女性はおりません」
そうか。私は、リッチモンドさんが最初から好きだったんだ。
314
お気に入りに追加
3,529
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
妹を溺愛したい旦那様は婚約者の私に出ていってほしそうなので、本当に出ていってあげます
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族令嬢であったアリアに幸せにすると声をかけ、婚約関係を結んだグレゴリー第一王子。しかしその後、グレゴリーはアリアの妹との関係を深めていく…。ある日、彼はアリアに出ていってほしいと独り言をつぶやいてしまう。それを耳にしたアリアは、その言葉の通りに家出することを決意するのだった…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる