31 / 53
第一章
31.プロポーズ?
しおりを挟む「死んでしまうって……?」
何で……?
「そうか。カナデは知らなかったな」
リッチモンドさんを見上げれば、頭を撫でられる。
「この世界の者には大なり小なり魔力があるのだ。夫婦、もしくは恋人となった者同士の魔力に差がありすぎると、交わった時に、魔力が少ない方は魔力酔いを起こしてしまう」
ま、交わるって、つまり、そういう事だよね。
「何で魔力酔いっていうのが起こるんですか??」
「うむ。粘膜の接触はお互いの魔力を交換する事とイコールだ。接触した箇所から魔力が流れていき、差があればあるほど、魔力酔いを起こしてしまう。いつも飲んでいる酒よりも、より多くの酒を飲むと酔ってしまうだろう。それと同じ事が起きるのだ」
「なるほど。じゃあ、リッチモンドさんはその魔力が普通よりも多いから、相手は魔力酔いどころじゃ済まなくて、死んでしまうと?」
その通りだ。と頷く彼は、それならばドラゴンの国でずっと、独りぼっちだった事になる。
「何千年も、ずっと独りだったんですか?」
「いや、それは違うぞカナデ」
違うの?
「確かに家族は居なかったが、わしには支えてくれる臣下も居たし、守らねばならない民達も居た。決して一人ではなかったのだよ」
そう語るリッチモンドさんの瞳は、とても穏やかな色をしていた。
「そっか……」
でもきっと、リッチモンドさんは、自分の子供が欲しかったんじゃないかな……。
子供達に接してる彼は、本当に子供が好きなんだなぁって感じるから。
「まぁ、それもこの年になれば、不要だと捨てられたがな」
ハハハッと笑うが、やっぱりさっき見せたみたいに寂しげな瞳をしてるよ。
「不要じゃないよ」
「カナデ……?」
「リッチモンドさんは不要じゃない! 私はリッチモンドさんが必要だし、この先もずーっとずーっと必要です!!」
絶対捨てたりしない!
「私のそばに、ずっと居て下さい!!」
ぎゅうっと抱きつくと、リッチモンドさんは暫く固まっていて、でも、そのうち、ククッとくぐもった笑いをもらし、抱きしめ返してくれたのだ。
「……カナデはいつもわしの欲しい言葉をくれるな」
抱き合ったまま、そう呟いたリッチモンドさんは、突然私を抱き上げ、自分の膝の上に降ろすと、もう一度抱きしめてくれた。
「カナデに初めて会った時、言ってくれた言葉に、わしはドラゴンの国に捨てられて良かったと思ったんだよ」
「え……?」
「わしを家族だと言ってくれただろう」
「はい」
頷けば、イケメンが極上の笑みを見せる。
「家族を持てないわしが、初めて家族を持てたんだ。こんな嬉しい事はない」
「そ、そっか……。ヘヘっ 私も嬉しい。……実は私も、子供が産めない体だったから」
「!? まさか、カナデも魔力が多いのか!?」
あれ? リッチモンドさん勘違いして…………いや、私の魔力1000000だったよ。多いよね!?
じゃあ、今世も子供作れないって事ぉぉぉ!!!?
「……私の魔力量、1000000あるんです……」
「なんだと!!!? わしが600000いや、いまはもっと……800000はあるか。まだまだ上がりそうだが……」
「そうなんですか! じゃあ、リッチモンドさんと私は魔力多くて子供作れない仲間ですね~」
今世も子供が産めないとか、どんな呪いだと思ったけど、リッチモンドさんが居るから寂しくないや。
「いや、カナデ……。わしらがつがえば子は出来るぞ」
「へ……?」
「わしの魔力もまだ上がっているからな。もう少し待っていてくれれば、カナデとつがえる」
つがう?? つがうって、け、結婚するって事……?
「こんなジジイでは嫌か?」
「へぅ!? いや、そんなっ あの、でもっ 私美人でもないですし、リッチモンドさんに釣り合うかなぁって!? いや、リッチモンドさんの事は大好きだし、問題があるわけじゃないですよ!? 嬉しいし!! けど、リッチモンドさんが私だと嫌かなぁとか思って……たり…………」
だんだんと語尾が小さくなっていき、最後にはかき消えた私の声に、リッチモンドさんが黙って目を閉じてしまった。
「うむ。つまりカナデを口説き落とせば、わしとつがってくれるという事だな」
何でそんな話になるの!?
「こんなジジイだが、これは頑張らねばならんな!!」
「り、リッチモンドさん?」
「カナデ、今日からわしは、この若い姿のままで居る事にしよう」
「何でですか??」
「若いお前からすれば、ジジイは恋愛対象外になるのであろう? 」
「は!?」
「だから、この姿のまま口説く事にする」
膝に乗せられたまま、そんな事言われたら……………、
そんなの、惚れちゃうでしょうがーーーーーーー!!!!!
329
お気に入りに追加
3,530
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】偽物と呼ばれた公爵令嬢は正真正銘の本物でした~私は不要とのことなのでこの国から出ていきます~
Na20
恋愛
私は孤児院からノスタルク公爵家に引き取られ養子となったが家族と認められることはなかった。
婚約者である王太子殿下からも蔑ろにされておりただただ良いように使われるだけの毎日。
そんな日々でも唯一の希望があった。
「必ず迎えに行く!」
大好きだった友達との約束だけが私の心の支えだった。だけどそれも八年も前の約束。
私はこれからも変わらない日々を送っていくのだろうと諦め始めていた。
そんな時にやってきた留学生が大好きだった友達に似ていて…
※設定はゆるいです
※小説家になろう様にも掲載しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
妹を溺愛したい旦那様は婚約者の私に出ていってほしそうなので、本当に出ていってあげます
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族令嬢であったアリアに幸せにすると声をかけ、婚約関係を結んだグレゴリー第一王子。しかしその後、グレゴリーはアリアの妹との関係を深めていく…。ある日、彼はアリアに出ていってほしいと独り言をつぶやいてしまう。それを耳にしたアリアは、その言葉の通りに家出することを決意するのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる