29 / 53
第一章
29.リッチモンドさん、若返る!?
しおりを挟む「カナデ様、おはようございます!」
「あ、バーモントさん、おはようございます! 畑のお世話の後は、家具作りですか?」
「はい! リッチモンド様とレオ様が、森で立派な木を取ってきて下さったんです!!」
村に新たな住人がやって来てから2週間が経った。
皆、レオさん達と同じように、日本の建物や設備に初めはかなり戸惑っていたが、イヴリンさんやローガンさん達が丁寧に教えてあげて、すぐに順応してくれた。
毎日新しいものが現れるが、そこも女神の力だとヒューゴさんが押し切り、誰もふれなくなってしまった。
それで、皆にそれぞれ住んでいる家の畑の管理を任せたのだが、ローガンさん達が仕事をしているのを見た皆さんが、自分達もと言い出した為、今は自分の特技を仕事にしてもらっている。
このバーモントさんというレオさんと同じ年頃の男性も、家具作りが得意らしくて、色々作ってもらっているのだ。
「そうなんですね! あ、バーモントさん。家具作りが終わってからでいいんですけど、作ってもらいたい物があって……バーモントさんの時間がある時に少し相談にのってもらっても良いですか?」
「勿論です!! 何なら今からでも大丈夫ですよ!」
「本当ですか! じゃあお願いしても……「カナデ、こんな所に居たのか」リッチモンドさん、どうしたんですか?」
バーモントさんと話していたら、リッチモンドさんがやって来て私達を見るなり、なぜだか眉を下げてしまったのだ。
「リッチモンド様、おはようございます!」
「うむ。バーモントよ、元気そうで何よりだ」
あれ? いつものリッチモンドさんに戻った。
「カナデ様、僕はいつでも大丈夫ですので、ご遠慮なくお声掛け下さい。何でもお作りしますので! では、失礼しますっ」
バーモントさんは畑の世話に戻り、私はリッチモンドさんへ向き直る。
「リッチモンドさん、何かあったんですか?」
「いや、今日はカナデとゆっくりしようと思ってな」
「え、今日は森に行かないんですか?」
「うむ。カナデはいつも忙しなく働いているからな。少しは休ませねばと思っていたのだ」
何てことだ。リッチモンドさんは私の為に休みを取ってくれたらしい。
「へへっ 何か嬉しいです」
久しぶりに二人で過ごす気がしますね。と言うと、リッチモンドさんは目を細めて頷いてくれたのだ。
「カナデ、少し散歩しながら話をしよう」
「はい!」
リッチモンドさんと二人の時には、よくこうして村を巡りながら話をしていたっけ。
「リッチモンドさん、最近若返りましたよね」
「ん? そうだな。ここに来てから調子が良くてな。全盛期の力が戻ってきたようだ」
「そうなんだぁ! だから見た目も若返ったんですね」
「本当はもっと若返らせる事も可能だぞ」
リッチモンドさんの爆弾発言にぎょっと目を剥く。
「ええ!? うそっ リッチモンドさんの若い顔見たい!!」
「何だ? カナデは年寄りの外見が好きだったのではなかったのか? いつもスマートで“だんでぃ”で“ろまんすぐれえ”だと褒めてくれていたではないか」
「そうですけど、若くなれるならその姿も見てみたいんです! 絶対格好良いと思うからっ」
今ですら格好良い、リッチモンドさんの若い姿ってどんななんだろう。
ワクワクと見ていたら、「仕方ないな」と笑いながら、姿を変えてくれたのだ。
「どうだ。カナデ」
枯れかけた素敵な声ではなく、バリトンの美しい声が私の名を呼んだ。
腰が砕けそうなそれに、言葉を失っていると、「カナデ」ともう一度呼ばれ、顔がブワッと熱くなる。
「り、リッチモンドさん?」
「そうだ。同じ顔だろう」
同じ顔って、確かにそうだけど……。
おじいちゃんだった時の白い髪は青みがかった銀髪になっており、瞳は変わらずの金色。端正な顔はそのままだけど、シワがなくなり、シュッと引き締まっていて、男らしい格好良さと美人さんが丁度良い具合に混ざったような、絶妙なバランスのイケメンがそこにいたのだ。
手足も長くて、雑誌に載ってる外国人モデルのようなスタイルだった。
「うわぁ……っ」
「もしや、あまりの格好良さに驚いたか?」
その言葉に、こっくり頷いて、ますます熱くなる顔を手で仰ぐ。
暫くして、リッチモンドさんが黙っている事に気づいて顔を上げると、なぜだか、リッチモンドさんの顔が真っ赤に染まっていたのだ。
「リッチモンドさん?」
「…………っ 仕方なかろう! カナデが褒めてくれたんだから……。ゴホンッ すまんな。どうも照れてしまって」
照れて……? リッチモンドさんが?
よく見ると彼の耳も、真っ赤に染まっていたのだった。
287
お気に入りに追加
3,529
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
妹を溺愛したい旦那様は婚約者の私に出ていってほしそうなので、本当に出ていってあげます
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族令嬢であったアリアに幸せにすると声をかけ、婚約関係を結んだグレゴリー第一王子。しかしその後、グレゴリーはアリアの妹との関係を深めていく…。ある日、彼はアリアに出ていってほしいと独り言をつぶやいてしまう。それを耳にしたアリアは、その言葉の通りに家出することを決意するのだった…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる