私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

文字の大きさ
上 下
25 / 53
第一章

25.ホームベーカリーと理想の旦那様

しおりを挟む


リッチモンド視点


「何事だ!?」

予想通り、男が壁にぶつかった音を聞きつけ、この地下牢の番をしていた者達が慌てて集まりだした。

「レオ、そこの子供を連れて下がれ」
「っはい!」

何が何やら分かっていない幼子を抱え、わしの後ろへ下がるレオに頷き前を見据える。

バタバタと喧しい足音をさせてやって来たのは、3人だった。

「ふむ、3人か。少ないな」
「!!!? な、何者だ!!」

剣や斧を持った男達は、わしの姿を見て一瞬動きを止めたが、すぐに武器を構え直し威嚇してくる。

「殺す気はないが、うまく手加減出来るかわからんからな……。まぁ、出来るだけ死んでくれるなよ」

すぅっと息を吸い込み、男達をひと睨みする───


“ドラゴンの威嚇”


刹那、男達が泡を吹いて倒れたのだ。


「……リッチモンド様、今、何をされたのですか?」

一瞬の事に何が起こったのか分からなかったとレオが聞いてくるので、“威嚇”しただけだと言えば、なるほどと納得したようだ。

「そんな事よりも、領主を捕縛しに行くぞ」
「え? ここに居る子供達は放っておくのですか!?」
「いや、先に解放しても満足に動けぬ子らを連れて領主を探す事は出来ん。それに、何があるか分からんのでな。ここに居てもらった方が安全だろう」

と、その前に転がっている奴らを動けぬよう縛っておくか。

「分かりました。この子は……」

置いて行かれると思ったのだろう。レオの腰に抱きついて離れようとしない幼子の頭を撫でる。

「動けるようだからな。連れて行ってもよかろう」


こうして、わしらは領主を探しに地下牢から出たのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



カナデ視点


「ああっ ついにホームベーカリーが出たぁ!!!」

レベルアップの影響で出てきたホームベーカリーに、やったぁ! と飛び跳ねていたら、イヴリンさんの生温い視線を感じたので、途端に恥ずかしくなり、土に埋まりたくなった。

だってこれで食パンが簡単に作れるようになったんだもん!! 喜んでしまうのは仕方ないでしょ。

「カナデ様、そちらはどう使う物なのですか?」

大人なイヴリンさんは、私の行動を見なかったフリをしてくれて、ニコニコと聞いてくる。

「これはね、パンを焼く機械なんです!」
「パンを……ですか?」

イヴリンさんがチラリとオーブンを見る。

彼女はバゲット作りがとても上手いので、よく作ってもらっているのだが、多分今の視線は、オーブンがあるのにその箱で焼くの? という疑問の視線に違いない。

「あー、いつもイヴリンさんに作ってもらってるパンじゃなくて、食パンを簡単に作れる機械で……」
「はぁ……あの、しょくパンとはどのようなパンなのでしょうか??」

そっか。柔らかいパンって食べた事ないよね。

「せっかくだから、このホームベーカリーで食パン作ってみましょう!」


先ずはホームベーカリーに、牛乳、塩、強力粉、グラニュー糖を入れて、山になった粉のてっぺんを掘って、その中にドライイーストを入れる。
角にバターを置いて、スイッチを入れると後は放置すれば勝手に出来るんだよね!


「?? カナデ様、パンを作っていたのですよね?」
「そうです。この機械は、材料入れてスイッチ押したら、後は勝手に作ってくれるすごいヤツなんですよ!」
「!? まさか、この箱の中には妖精が召喚されて、パンを作るのですか!?」

なんですか、そのメルヘン。

「イヴリンさんって可愛いですよね」
「ふぇ!?」

ほら、その反応も可愛いし。

「だからローガンさんはイヴリンさんに夢中なんですねぇ」
「へ、えぇ!?」

真っ赤になるイヴリンさんが可愛すぎる。

「私もローガンさんみたいに、ずっと一途に想ってくれる人を旦那さんにしたいです。それで、イヴリンさんとローガンさんみたいな夫婦になりたい!」

前世と今世あわせても、そんな人に出会った事ないけどさ。

「まぁ。カナデ様は森から出た事は無いのでしたっけ?」
「一度だけ、人族の街に行った事があるけど、そこら中で怒声が聞こえて怖かったから、ずっとリッチモンドさんの影に隠れてたんです」
「そうですか。カナデ様のように純粋な女神様にとっては、人間は恐ろしく映るかもしれませんね。そもそも、人間では釣り合わないですし」

え、イヴリンさん、私も人間なんですけど……。

「それに、私がカナデ様を人間の男に渡したくありません。だって、この村にいる人間以外皆クソですよ」

あれ? 私の耳がおかしくなったのかな?

「そ、そうかな? 中にはレオさんみたいに良い人もいるかも……」
「私が見てきた人間は、いざとなったら他人を切り捨てる奴等ばかりでした」

うん。それでここに来たんだもんね。

そうだよ。イヴリンさん実は人間不信だったーーー!!!

「ですから、レオさんやリッチモンド様の連れて来られた方であっても、カナデ様に下心を持って近付こうとする者は私がしばきあげます。お任せくださいっ」

しば……!? 待ってぇ!? それだと私、結婚出来ないんですけど!?


「ですがカナデ様。カナデ様の理想の旦那様は、案外身近に居るかもしれませんよ」

「…………へ?」

しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです

との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。 白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・  沈黙を続けていたルカが、 「新しく商会を作って、その先は?」 ーーーーーー 題名 少し改変しました

妹を溺愛したい旦那様は婚約者の私に出ていってほしそうなので、本当に出ていってあげます

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族令嬢であったアリアに幸せにすると声をかけ、婚約関係を結んだグレゴリー第一王子。しかしその後、グレゴリーはアリアの妹との関係を深めていく…。ある日、彼はアリアに出ていってほしいと独り言をつぶやいてしまう。それを耳にしたアリアは、その言葉の通りに家出することを決意するのだった…。

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

処理中です...