私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

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第一章

22.村を作ります

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「このサケとかいう夕日のような色をした魚、ショーユとの相性が抜群だな!」
「おじいちゃん、このアユの塩焼きも美味しいですよ」
「どっちも、美味しい」
「お父さん、お母さん、ミミリィもお魚穫るお手伝いしたんだよ!」
「すごいじゃないかミミリィ!」
「お魚って……っ あんな大きな魚をミミリィが捕獲したの!?」
「夕日色の身をした魚……見たことがない。どうしてこんな色なんだろうか?」
「私もこんな魚初めて食べます……」

自然と、食事は皆揃って食べるようになった我が家の小食堂は賑やかだ。
皆が言いたい事を好き勝手口にするから、常に誰かの声がするし、こんなに人数が居るのだから大食堂で食べればいいのに、何故か皆小食堂に集まる。

そんな所が、何だか家族って感じで嬉しい。

「どうしたカナデ。何をニヤついている?」
「いえ、何だか家族って感じがして良いなって思ったもので」
「ん? 成る程、確かにそうだな」

リッチモンドさんは目を細め皆を眺めると、うなずいた。

「なぁカナデ、わしはずっと考えていたのだが……」
「なんですか? リッチモンドさん」
「こやつらのように、人族の街にも亜人族の街にも要られぬ、心優しき者を、この村に招き入れてやってはどうか」

リッチモンドさんの言葉に、騒がしかった小食堂が静まった。

「わしは、腐った人間どうぞくから苦しめられ、捨てられる者を何人も見てきた。行くあてのない彼等に待っているのは死だけなのだ」

その言葉に皆は悲しそうな顔をして私を見る。

「カナデ様、私からもお願いします」

イヴリンさんが頭を下げ、言ったのだ。

「私達は運良く、リッチモンド様に助けられ、こちらへと参りました。しかし、森の中で……いえ、街でも、誰にも手を差し伸べられず、死んでいくものがほとんどなのです」
「その中には、子供もおります」

今度はローガンさんが。

「人々はいつからあのように腐ってしまったのでしょう」
「民を守るのが騎士であるというのに、実際にはそんな騎士はいもしない。己の保身に必死なのです」

ヒューゴさん、レオさんと続く。

そして、

「カナデお母さん、僕達を助けてくれたみたいに、」
「他の人達も、助けて」
「カナデお姉ちゃんっ」


子供達に、家族にここまで言われたら、

「……期待に答えないわけにはいかないか」

皆が、瞳を輝かせて私の言葉を待つ。


「捨てたなら、私が拾っても構わないでしょ!」


藤井 カナデ(15)。
捨てれた人を拾って、村を作ります!!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



そう決めてから数日後、リッチモンドさんがレオさんと共に街へ行ってくると言い出した。

「街って、亜人族の?」
「いや、どちらの街にも行ってくる予定だ」
「え!? リッチモンドさんは大丈夫かもしれませんが、レオさんは耳と尻尾があるんですよ!? 人族の街に連れて行くのは危険なんじゃ……っ」
「外套で隠すので問題はない。それに、奴も剣の扱いがそれなにりなってきておる。そこらの人間には負けはせん」

そんなにすぐ強くなれるものなの!? 訓練しだしてからまだひと月くらいだよね!?

「それで、街のスラムを見て来る予定だ」

“スラム”って……、怖いイメージしかないのだけど。

「すらむにはひっそり暮らす孤児も多い。本人の気質と意思次第にはなるが、望めばここへ連れてくる予定だ」
「そっか。さっそく実行するんだね」
「ああ。わしも元とはいえ、国を治めていた王。出来れば苦しんでいる者を見捨てる事などしたくはない」

やっぱりリッチモンドさんは格好良いドラゴンだ。

立派な王様だったんだろうなぁ。

「心がはやるのはわかるけど、無理だけはしないでね」
「安心しろ。わしは強いのだ。レオにも危険な事はさせんからな」
「……」

フラグが立った気もしなくもないけど……。

「本当に気をつけてね」

こうして、リッチモンドさんとレオさんは街へと向かったのだ。

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