私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

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第一章

13.石焼ビビンバ

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「え……ここ、本当に“魔の森”ですか!?」
「違う。オレ本で見た。ここ、森じゃなく、町」

うーん、ここは町じゃなくて村かな。

庭でまったりした後、子供達と村になってしまった場所へとやって来た。

ルイとアーサーは、北海道の牧場ほどあるこの広い村を呆然と見つめている。
口は開けっ放しだし、目は長い髪の毛で見えにくいが、まん丸に見開いているだろう。

ここにある等間隔に並ぶ建物は、日本の一般的な家で、この子達には見慣れないものかもしれない。

「カナデさん、」
「お母さんね」
「ぇ、あ……お、お母さん……、あの、この町は人が出歩いていませんが、どうしてですか??」
「きっと皆、お昼寝中」

アーサーは自信満々に言うが、そうじゃない。

居ないのだ。村人なんて誰も。

そう言うと、二人は真っ青になって顔を見合わせた。

「魔物に皆、殺された……?」

アーサーの言葉にルイがガタガタと震えだす。

「違うから! そうじゃなくて、元々いないのっ」


私は誤解を解くために、今までの事を二人に説明する事にした。



「───じゃあ、カナデ、お、お母さんは、いつの間にか“魔の森”に居て、身を守るために“スキル”っていう不思議な力で家を建てたら、村人のいない村が出来たんですか?」
「神、様……?」

ルイ、そんなに引かないで!? アーサー、私は神様じゃないから祈ろうとしないの!!

「とにかく、この村と私達の家は結界を張ってるから安全だよ! あ、おすすめはしないけど、もし、森の中に入りたい場合は、必ずリッチモンドさんと一緒に行くこと。街に行きたい時も、リッチモンドさんに連れて行ってもらってね。それ以外は好きに過ごしていいから」
「好きに……、あの、ぼくたち本当に、ここに居てもいいんですか……?」

ルイはまだ、不安そうな顔をしているが、虐待されていたのだろうから仕方ないのかもしれない。

「言ったでしょう。二人は……、ルイとアーサーは私の子供なんだから、ずーっとここに居て良いんだよ」

二人を抱きしめて伝える。

ここでゆっくり、心に負った傷を治してほしい。

「「おかあさん……っ」」

藤井カナデ、異世界で子供が二人出来ました!



◇◇◇



名前:  藤井 かなで

年齢:  15才

レベル:  133  ↑up

HP:  100/100

MP:  1000000/1000000

健康状態: 良好

魔法: 才能なし。例えレベルを上げても使用できません。

スキル:  家召喚、言語翻訳、文字の読み書き

役職: 村長 ←NEW

家族: リッチモンド(年齢不詳)、ルイ(10)、アーサー(10)←NEW



お昼ご飯を作ろうと、冷蔵庫を開けたらなんと!

コチュジャンが入ってました!!

なので久々に自分のステータスを見てみると、役職と家族が追加されていた。

リッチモンドさんの年齢不詳も気になるけど、ルイとアーサーは10歳だったの!? どおりでしっかりしてるわけだわ。
栄養不足や運動不足で成長が出来なかったんだろうな……。

「よし! 二人には沢山食べさせなくちゃね! せっかくコチュジャンがあるんだから、フライパンで作る“石焼ビビンバ”にしよう!!」

必要な野菜は、にんじん、もやし、ほうれん草、あ、ゼンマイが無いや……残念。今回はゼンマイ無しで作ろ。

「ルイ~、アーサー、野菜取りに行くけど、一緒に行くーーー?」

キッチンから家の探検をしている二人の名前を呼べば、丁度近くの階段に居たらしく、パタパタとやって来た。

「お母さん、呼びましたか?」
「野菜って、聞こえた」

緊張も大分解れてきたのか、自然体で話してくれる二人に嬉しくなる。

ルイはまだ敬語だけど、そのうち変わると良いなぁ。

「二人とも探検中にごめんね。これからお昼ご飯用に畑に野菜取りに行くから、興味があったら一緒に行かない?」
「「行く(きます)!!」」


二人の長い髪の毛を束ねて、いつものようにボール(キッチン用品のね)を持ち、家の裏にある畑にやって来た。

相変わらず季節感の無い野菜達や果物達がこれでもかと生っていて、感謝の念に堪えない。

あ、新しくスイスチャードが増えてる!!

家の畑もどれだけ大きくなるだろうか。
ただでさえ、100メートル四方はありそうなのに。これ以上大きくなると草取りも難しいだろう。

「「うわ~っ」」

村の畑よりも大きな畑に、ルイもアーサーも子供らしい声を出して驚いている。

「これから“にんじん”と“ほうれん草”を収穫します!」
「「にんじぃとほーれんそ?」」

この世界には無いかもしれない野菜だもんね。名前が違うかもしれないし。戸惑うのも無理ないかな。

「お母さんが教えてあげるからね」


子供達はとても飲み込みが早かった。
教えた事をすぐ自分のものにし、あっという間に収穫が終わったのだ。

それでも、元気になったとはいえ、まだまだ細く小さい子供達に無理はさせられない。とキッチンへ戻り、スポーツ飲料水を出して休憩させていたら、

「お母さん、他にお手伝いすることは無いですか?」
「オレも、手伝う」

ルイもアーサーも、出来た息子だった。

「そうだなぁ……じゃあ、一緒に“石焼ビビンバ”を作ろうか!」


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