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第一章
12.家族だよ
しおりを挟む子供達はスポーツ飲料水と重湯を食べてから、見る間に元気になった。
2日目の朝は、胃に優しいうどんを出し様子を見たが、固形物も食べられそうだと判断したので、昼はお腹に溜まるものを出してみようかと考えている。
まだ骨ばっているけど、目の窪みもなくなり、髪に艶が出てきて、部屋も歩き回れるまでに回復していたので、本人達の希望もあって、家の中を少し案内する事にした。
「しんどくなったらいつでも休んでいいからね?」
「大丈夫です。不思議な事にすごく体が楽で、今まで生きてきた中で一番調子が良いんです!」
「オレも、ルイと同じ」
おウチ様の健康維持が効いてるみたいで良かった。
少しシャイなのかな? アーサー君は口数が少ないけど、元気そうだし、このまま沢山食べて子供らしい体型になってもらわないとね!
「まず一階からね。玄関を入ってすぐのホールがここね。玄関の右隣にある部屋は待合室で、お客様を最初にお通しするところなんだって。左の部屋は書斎でその隣が応接室ね。廊下を挟んだこのホールの正面にある部屋は小食堂。ここでいつも食事してるから、ご飯の時間にはここに来てね」
「「は、はい……」」
何だか戸惑っているみたいだったけど、後で聞いてみようと思い、説明を続ける。
「で、その隣が大食堂。お客様が来たときに使う食堂で、その奥が配膳室、その奥にも階段があって、そのさらに奥がキッチンだよ。その他にもいろんな部屋があるけど、あまり使ってないかな。二人も、もう家族の一員だし、お屋敷探検して遊んだらいいよ。特にここに入ったらダメって制限もないし。あ、家が大きくなる時があるから、気を付けてね
「「!???」」
どういう事!? という顔をしていたので、「詳しくは後で説明するね」と言って、今度は庭へ移動した。
「疲れてない? ちょっと休憩しよっか」
テラスへ移動し、二人を椅子へ座らせる。
「今日は少し暑いから、冷たい麦茶でも持ってくるね」
二人を残してキッチンへと向かい、麦茶を淹れて戻れば、ルイもアーサーもキョロキョロと、興味深そうに周りを見ていた。
「何か面白いものでもあった?」
机に麦茶を置き、ヘラリと笑いながら聞くと、ルイが「お花をこんなに近くで見たのは初めてで」と恥ずかしそうに言うのだ。
「草も、土も、森に入って、初めて踏んだ……」
アーサーがぼそりと呟く。
「え……もしかして、外に出たことがなかったの?」
二人が頷く。
「あなたに、会った日に、初めて出た」
その言葉に衝撃を受けた。
何それ……っ 監禁されてたって事!?
「ぼくたち、ずっと塔の中の部屋にいました」
「カギ、かけられてた」
やっぱり……っ
「何でそんな事を……っ」
あまりの怒りに、ぎゅっと拳を握る。
二人はお互いを見て、悲しそうに俯くと消え入りそうな声で呟いた。
「“忌み子”、だから……」
いみご??
「ふむ。おぬしら、双子だったか」
「「!!?」」
首を傾げていたら、リッチモンドさんが突然後ろからでてきて、心臓が止まるかと思った。
「リッチモンドさん、突然出てこないで下さいっ びっくりしたでしょ!」
「すまぬな、カナデ。しかし、こやつらが双子だとは分からなかった」
あれ? 私、リッチモンドさんにこの子達が双子って言ってないよね? 何で分かったんだろう。
「あ、二人とも、紹介するね。この人はリッチモンドさん。ドラゴンで私の家族だよ」
「「ドラゴン!?」」
「うむ。わしはカナデの家族だ。おぬしらも家族になったのだし、わしの事はおじいちゃんとでも呼ぶが良い」
リッチモンドさんの自己紹介に、ルイとアーサーはぽかんと口を開けたまま固まってしまった。
さて、ドラゴンおじいちゃんの登場に驚いて固まっていた二人を合わせ、四人で麦茶を飲み、やっと双子の緊張が解けてきた時だ。
ルイが私達にこんな事を言ってきたのだ。
「ぁの、先程からお二人が、ぼくたちを“かぞく”だと言って下さってるんですが……どういう事なんでしょうか??」
その言葉に、私とリッチモンドさんが顔を見合わせ笑い、双子にも微笑んだ。
「家族は家族だよ。二人はもうウチの子になったの」
「うむ。わしはおぬしらのおじいちゃんだ」
「オレたち、忌み子……」
「そうですよ! ぼくたちは忌み子で、だから……っ」
泣き出しそうな声でそう言う二人に、私は言ったのだ。
「“いみご”が何かしらないけど、どうでもいいよ。私はもう君たちを家族にしたんだから、二人は私の子供だよ!」
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