私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

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第一章

8.フラグが立った?

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人族の街は、森を越えてからすぐだった。

感覚としては、2時間以上森の上を飛び、草原に出てからは1分といったところか。

ドラゴンで飛んでこれなのだ。森がいかに広大か分かるだろう。

多分、国一つ分丸々森なのだろうという想像がつく。

「はぁ~。やっと着いたね!」
『そうだな。街から少し離れた場所に降りるぞ』

そう言ってリッチモンドさんは、草原に降りると、人化してステルス魔法を解いた。

「ほら、ゆくぞ」

ここからなら歩いて5分位かな。

おじいちゃんらしくない、しっかりした足取りで歩いて行くリッチモンドさんを、少し早足で追いかけながらさっきの光景を思い出す。

上空から見た街は、異世界らしい外壁に囲まれていて、外国の田舎町のような情緒のある街並みをしていた。
正直ワクワクしているが、リッチモンドさんの話を聞くと怖くもある。

治安も良くないらしいし、私は激弱だから何かあったら一番に死んでしまいそうだ。絶対リッチモンドさんとはぐれないように気を付けよう。



街は、外壁の中に入る為に門を潜らないと入れない仕様になっていて、私達も今、街に入るための行列に並んでいる。

行列の多くは馬を連れていたり、馬車に乗っていたりと、私達のように歩いて旅をしています。というような者は少ない。

地元民って感じの人もいないし。

もしかしたら、街の人が出入りするような門は別にあるのかもしれない。

とはいえ、元の世界では見られないファンタジーな光景に胸がときめく。

荷馬車とか馬とか、初めて見たや。


「で、ここに来た目的は? 観光? こんなとこに観光ねぇ……まぁ何もねぇとこだが、テキトーに楽しんでってくれ。通行証は? あー持ってないなら一人5000ダラーをあっちで払ってね。はい、次」

おおぅ。適当だなぁ。

流れ作業のような入国(街)審査をパスし、リッチモンドさんがお金を払って入った門の中は、まさにファンタジーな世界だった。

石畳で舗装された道、白っぽいレンガで出来た家や、薄緑、空色、黄色などのカラフルな壁の家、通りを行き交う馬車や簡単な作りの服装をした人々、腰に剣をぶら下げ闊歩する冒険者っぽい人。

「すごい……」
「そうか? ここより大きな街はもっと賑わっているぞ。わしの作った国など、様々なドラゴン達が飛び交って、空も地も賑わっていたな」
「へぇ」

いつかドラゴンの国にも行ってみたいなと思いながら、リッチモンドさんの後を追いかける。
結構人も多いからはぐれそうだ。

「リッチモンドさん、ちょっと待って」
「ん? どうしたカナデ」
「はぐれそうだから、手を繋いでもいいですか?」
「おおっ そうだな。手を繋ごう。ほら、手を出しなさい」

傍から見れば、おじいちゃんと孫のお出掛けそのものだろう。

どちらもローブを被って怪しさ満点だけどさ。

「ありがとうございます!」
「早速酒を買いに行くか」

えー、もっとゆっくり街を見たいんだけどなぁ。などと思っていた時だった……、

「テメェ!! 今俺の懐から盗んだろう!!」
「あ? 何か証拠でもあんのかぁ?」

突然後ろから怒鳴り声が聞こえてきたのだ。

「ぅわっ びっくりした……」
「あまり治安は良くないと言っただろう。さっさと用事を済ませて帰ろう」

驚いて固まっていると、リッチモンドさんに手を引かれ、そのまま人混みを縫うようにすいすい進んで行き、いつの間にか飲み屋っぽい建物の前に居たのだ。

ふわぁ~。リッチモンドさん、東京の人混みの中でも余裕で歩けそうだね。

「酒はこういう場所に売ってるんだ」
「へぇ。酒屋じゃないんだぁ」
「“サカヤ”が何かは知らんが、普通は商人がこういう所に酒を卸し、そこに集まって酒を飲むか、容器を持っていって量り売りしてもらうな」

なるほど。この世界に酒屋は無いと。

「あれ? でもリッチモンドさん容器持ってないよね?」

量り売りしてもらえなくない?

「なに、問題はない」

空間魔法使えるから、収納してるのかな?




「酒を3樽貰おうか」

まさかの樽買いだったーーーーー!!!!!

「お、おぅ。裏に回ってもらっていいかぃ」

店の人も引いてるからね!?

「リッチモンドさん、そんなに買って大丈夫なの?」
「ん? 空間魔法が使えるからな。問題ない」

そうじゃなくて、3樽も料理に使わないよ!?

「ククッ 酒は保存も効くし、わしも飲むしな。あればあるだけ良い」
「はぁ、そんなもんですか……?」
「そんなもんだ」


「さて、酒も買ったし帰るぞ」

空間魔法を使い、お酒を3樽とも収納してしまったリッチモンドさんは、そう言ってすぐに帰ろうとするので、せっかく来たのにちょっと残念だと思いながら、でも怖い気持ちの方が勝ったので、大人しく帰る事にした。

滞在時間は短かったが、この街がどんな所かは何となく理解したので良しとしよう。

来たかったらまた連れてきてもらえばいいもんね。

そう思いながら、来た時と同じようにリッチモンドさんの背に乗って、森へと帰路についたのだった。


「はぁ~、迷子にならなくて良かったぁ」

フラグ立ちそうとか思ってたけど、そんなマンガみたいな事は早々起こらないよね!

『そうだな。カナデは目を離すとすぐ迷子になりそうだ』
「へへっ でも、何事もなく帰れそうで良かった!」
『そうだ…………、カナデ、そうもいかないようだぞ』
「え?」

リッチモンドさんに促されて地上を見れば、森の入口付近で、今にも魔物に襲いかかられそうな子供を発見してしまったのだ。


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