私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

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第一章

6.人族と亜人族

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リッチモンドさんに教えを乞いながら、この世界の常識を勉強すること1週間。
なんとなくこの世界の事が分かってきた。

この世界は中世ヨーロッパの生活水準で、魔法があるファンタジーな世界だ。

人間は大きく分けて人族と亜人族の2種類が存在する。
亜人族とは、獣人、ドワーフ、エルフ等の事らしい。そしてこの人族と亜人族、大変仲が悪い。
そもそも、人族が亜人族を奴隷にした事が発端で戦争となり、どちらの国もそれで滅びそうになったのだとか。

現在も冷戦中で、亜人族の国では人族は入国制限されているし、人族の国では亜人族が入国すれば即奴隷に落とされる。

ちなみにこの魔の森は、人族と亜人族の国の真ん中にあり、犯罪者の処刑や自殺志願者等で森の入り口付近に人間が居る事は多々あるという。

「リッチモンドさんがここで暮らした方が良いって言っていた意味が分かったかも……」

奴隷とか怖すぎるし、人族がイカれすぎている。亜人を奴隷にするとかバカなんじゃないか。そりゃ戦争になるわ。

ただ私の見た目は人族なので、街に行くなら結局人族の街になる。

そんなイカれた人間の街に行きたくはない。出来る事なら亜人族の街が良いんだけどって言ったら、リッチモンドさんに、亜人族も人族と変わらないと言われた。

どうやら亜人族の国に入国出来る人族は、主に商人や学者だそうだが、少しでもおかしな行動をすると殺されてしまうのだとか。

「大丈夫だ。わしがそばにいるからな。カナデには指一本触れさせん」

リッチモンドさん格好良い!!

「ところで、カナデは街に何しに行くのだ?」
「えっと、肉や魚は仕入れたいです。後、服や雑貨も見たいかなぁ」
「待て。肉や魚ならこの森で取れるだろう! 服や雑貨もこの家にあるものより良いものなぞありはせん!」
「いやぁ、狩りに行ったら即死んじゃいますって。それに、動物の解体なんて出来ないし」
「誰がカナデに行けと言った。肉や魚が欲しいなら早く言え。わしが取ってきてやるのだからな。勿論解体もしてやろう」

リッチモンドさん素敵すぎる!!

「ありがとうございます!! リッチモンドさん大好きです!!」
「うむ。もっと言っておくれ」

あれ? じゃあ街に行く必要ない、のかな……?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



リッチモンド視点


竜王の地位について数千年。一時期ずいぶん数を減らしたドラゴンも、わしが建国した事を機に個体数を増やしてきた。他種族に比べれば少ないが、それは大きな魔力を持つ事の弊害といえよう。

万年にもなろうという年月を生きてきて、最近は食欲もなくなり、好物だった肉を食べても胃が重くなる一方で、寿命が残り僅かだと感じたわしは、竜王を次代に引き継ぐ事にした。

力の衰えが見えてきた時から、若い竜からは引退を急かされていた事も要因の一つではあった。

長年仕えてくれていた側近らも引退し、今やわしを支持する者など一つもない。
次代が決まった後は特に顕著で、今までは裏でコソコソだった態度も、分かりやすく邪魔者扱いするようになっていた。

それもそうだろう。前竜王という肩書きを持つ老竜など、次代からしてみれば目の上のたん瘤なのだから。

実質ドラゴンの国から追い出されたわしは、終の住処を探すべく、宛もない空の旅を続けていた。

何日そうしていたのかも覚えておらんが、いつの間にか魔の森の上を飛んでおった。
食欲が衰えようとも腹は減るらしい。丁度良いと、狩りをしようと思ったその時、何ともいえぬ良い香りが漂ってきたではないか。

匂いに誘われるように飛んで行くと、そこには信じられん光景が広がっておった。


魔の森の最奥に、人間の村が出来ていたのだ!!


しかも最強種ドラゴンでさえ阻む強力な結界が張られている。あり得ぬ様子に暫し呆然としてしまったが、村はあるのに人間の姿が見えん事に気付く。

一体どういう事だ? 

首を捻っていると、そこへあの美味そうな匂いをさせた人間の娘が現れたのだ。
娘は、最初こそわしの姿に驚いていたが、すぐに美味そうな匂いの元に夢中になった。

それはどうやら“ウドン”というらしく、それはもう美味そうに食うもんだからつい、声を掛けてしまった。

娘はドラゴンの言語を流暢に使い、わしを恐れる事なく会話を交わすものだから、面白くなってつい“ウドン”を食わせてもらえんかと口にしてしまった。

元とはいえ竜王であったわしが、人間の小娘に飯を請うたのだ。

娘は警戒心が無いようで、ドラゴンであるわしを簡単に結界内に入れてしまった。
もしやドラゴンを倒せる強者なのだろうかと思ったが、どうもそのような力を感じる事はできない。

何なのだこの人間は……と観察していれば、わしの為に新しい“ウドン”とやらを用意してくれた。

“ウドン”を一口食せば、今までの食欲不振が嘘のようにつるり、つるり喉を通っていく。

これは何だ!? 魚介のスープか? それだけではない奥深さも感じる。それがこの白いつるつるしたものに絡んで、わしの喉を流れていく。

美味い!! これはいくらでも食べられるぞ!!

夢中になって“ウドン”を食べておったが、“ウドン”とは違う香ばしい匂いにふと手を止める。

こっちは衣のついた野菜? ……ふむ。何とも美味そうな香りだ。

まず目についた黒っぽい野菜にフォークを刺すと、娘が“ダイコン”とやらをすりおろしたソースに付けて食せというので、ソースを付け口に含んだ。

次の瞬間、サクッとした香ばしい歯ごたえの後にじゅわっと拡がった野菜の甘味、そしてさっぱりしたタレの酸味と“ダイコン”とやらのツンとした辛味。それらがわしを虜にしたのだ。

なんという至福!!

ふむ。“テンプラ”というのか。これを食した後に“ウドン”を食うとまたよく合う!! 

“ウドン”、“テンプラ”、“ウドン”、“テンプラ”。そして“リョクチャ”!!!!

いかん。我を忘れて夢中になっておった!

わしがもっと食したいと思っていたからか、娘が「量が少なくてすみません」と謝罪を寄越す。
これ程美味な物。貴重な食材を使用しておったのだろう。それを初めて会った者に馳走してくれるなど、余程のお人好しらしい。

わしはお人好しで警戒心のない娘が心配になり、暫くそばに居る事にした。この美味い飯をまた食したいという思惑もある。

娘に提案すれば、娘は満面の笑みを浮かべて喜んだ。
何の打算もない笑顔で、誰にも必要とされなくなったこの老竜を必要だと、家族だと言うてくれた。

わしは、残り短い竜生をこの娘の為に生きようと心に決めたのだ。

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