私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

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第一章

4.おじいちゃんがやって来た

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「農家の大変さが少しだけわかった……」

村を作ってから少しして、畑や果樹園の世話を一人でしなければならない事に気付き泣きそうになった。

ただでさえウチの畑が拡がって大変なのに、他にもいくつも畑を回らないといけなくなったのだ。

ご飯を食べれば体力が回復するから良いんだけどさ。全部回るのは1日がかりだよ。

「しっかし、野菜も果物も足りてるけど、そろそろ肉とか魚が食べたいな……」

午前中の草取りを終え、最近出てきた薄力粉でうどんの麺を打ちながら、手に入らない肉や魚に思いを馳せる。

「チートなおウチ様の事だから、その内出てきたらいいなぁ」

なんて贅沢な事を考えていたからいけなかったのか。

うどんと天ぷらが出来上がり、たまには外で食べようと庭に出てそれらを机に並べていた時だった。
日当たりの良いこの庭が、突然暗くなったのだ。

太陽が雲に隠れたにしては暗い。と驚いて空を見れば、そこにいたのは、蝙蝠のような羽に鋭い爪、蜥蜴のような身体は岩のように凸凹として固そう………………って、

「ど、ど、ど、ドラゴンんんんんん!!!!!?」

高層ビルを横にしたような大きさの真っ白なドラゴンが、空を飛んでいた。

「グルルルルル……」

何か見てる。こっち見てる。ギョロッとした目と合った!

「大丈夫。結界があるから、私はこのザ・異世界の風景を見ながらご飯を食べていれば良いんだ」

かなり怖いが、自分を納得させてうどんがのびないうちにと食べ始める。

「いただきます」

打ち立てのうどんをすすれば小麦の香りが鼻を抜け、素人が打ったにしてはコシもありなかなかに美味しい。

「はぁ……、久々のうどん美味しい」

次は野菜の天ぷらだ。ナスと大葉、玉ねぎと人参のかき揚げを作ってみた。
ウチの新鮮で味の濃い野菜は薄めに衣を付け、なんとオリーブオイルでカラッと揚げているのだ。
オリーブオイルで揚げるなんて贅沢は、いくら使っても無くならないと分かっているから出来る事だ。

サクッサクで、さっぱりしててとても美味しい。
オリーブオイルの仄かな香りが鼻から抜けていく。

「大根おろしのポン酢タレがさっぱりして合う~!!」
「グルルルルル……」
「ん?」

上を向けば、ドラゴンがガン見してた。

ヨダレを垂らして。

「……ドラゴンって、うどん食べるの?」

いや、そんなわけないか。多分私の事が食料に見えているんだろう。それはそれで怖いが。


『───それは“ウドン”というのか?』


ん? 今誰か喋った? 

周りを見るが誰も居ない。

『わしだ。そなたがドラゴンと言うておったものだ』
「は!?」

上を見ると、またしてもドラゴンと目が合う。

「え、ドラゴンって喋れるの!?」
『わしは長い事生きているからな。人語は理解出来るが、今はそなたがわしらの言語を喋っておるぞ』

そういえば言語翻訳のスキルがあったっけ。使用する事もないから忘れていた。

『しかしその“ウドン”とやら、随分と美味そうだ』
「ドラゴンって肉食じゃないんですか!?」
『何でも食うが、最近肉は腹にもたれてな』
「そ、そうなんですか」

胃がもたれるドラゴンって……。

『ものは相談だがその“ウドン”、わしにも分けてもらえないだろうか? 礼ならする』
「良いですけど、そんなに身体が大きいと量の面で問題が……」
『身体なら人化すれば問題ない。それよりも本当に分けてもらえるのか?』
「はい。あ、でも結界内に入ってきて攻撃するとか止めてくださいよ!?」
『そんな事はせん』
「なら入って良いですよ」

そういえば、一瞬驚いたような顔をしたドラゴンは、目を細めて『感謝する』と言い、少し離れた場所に降り立った。

と同時に光り、人型に変化したのだ。

「本当に人間になった……」
「まさか結界内に入れてくれるとは思わなかった」

ニコニコしながらやってきたのは、品の良いロマンスグレーのおじいちゃんだった。想像していた通り外国人の顔立ちでかなり美形だ。

「新しいうどん持ってきますので、ちょっと待っていてください」
「ありがとう」

優しげに微笑んで、私がすすめた席に座ると嬉しそうに待っている。

すぐに家の中からうどんと天ぷら、緑茶を持って庭に出ると目を輝かせて「美味しそうだ」と目尻のシワを深くした。

「お箸は使った事ありますか?」
「“オハシ”とはそなたが使って食べていたその2本の棒の事か?」
「そうです。えっと、使い慣れてないとお箸は難しいので、良かったらフォークを使って下さい」
「うむ。ではいただくとしよう」

フォークを手に取り、パスタのようにうどんを食べ始めるおじいちゃん。

「うまい!! このあっさりとした味が良い!! いくらでも食べられそうだ!!」
「良かったです。あ、天ぷらはこのたれ……ソースにつけて食べてみて下さい」
「うむ! ……ムムッ これもまた美味い!! これは野菜か? 見たことがない。サクッとした噛みごたえの後に甘く濃い野菜の味、少しこってりしているのに、このソースがあっさりとして、酸味と少しの辛味が食欲を増してくれる……っ たまらん!!」

美味い、美味いと食べてくれるので嬉しくなる。それに、久々に人(?)と会話をしたので楽しい。

相手はドラゴンだけどさ。

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