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第一章
3.もう一度家召喚してみた
しおりを挟む蜘蛛もどきを見た事で、薄々気付いていた事だが、ここは異世界だと確信する。
きっとあの蜘蛛もどきは魔物というやつだ。
しかも火炎系の魔法を森の中でぶっぱなすイカれた奴だった。火事になったらどうするつもりなのだろう。
「早々に家召喚して良かった」
あのまま森をさ迷ってたら、今頃はモンスターの餌食になっていただろう。しかも私が最も苦手とする虫系モンスターの餌だ。絶対無理。
「でもさ、あんなモンスターがうろうろしてるなら、私はここから出られないって事だよね……」
詰んだ。
異世界に来て若返って、新たな人生を歩もうとしたらまさかモンスターが蔓延る森に閉じ込められるなんて。
「はぁ。今世は夫と子供が欲しかったのにな……」
せめてレベルが上げられたら、土地が拡がって動ける範囲も増えるんだけど。
ここで寂しく独り生きていくしかないのかな……。
今後の事を考えるとテンションが下がっていく。
暗い気持ちで先のことを考えていたら、いつの間にか日が暮れていた。
晩御飯を作る気力も、食欲もわかないので、今日はもうシャワーを浴びて眠る事にしよう。
シャワーから出て寝袋に入ると、外に虫系モンスターがうようよしている事を想像して眠れないかと思っていたが、案外、疲労のせいかあっという間に夢の中へと旅立った。
気付けば朝で、自分が意外と図太い事を知る。
恐る恐る外を見ると、結界の周りには数匹のモンスターの死骸が転がっていた。いずれも虫系だった。
「げっ、朝から酷いものを見た……っ」
惨状にまたテンションが下がる。しかし夜食べなかった事もあり、お腹は空くわけで……。
「芋でもふかすか……」
冷蔵庫を開け、芋を取りだそうとして手が止まった。
昨日無かったものが、冷蔵庫の中に鎮座していたからだ。
「こ、これは……っ マヨネーズ!!!!」
何で!? どういう事? 調味料が増えてるって事は、まさかレベルが上がってる!?
「す、ステータス見なきゃ!!」
名前: 藤井 かなで
年齢: 15才
レベル: 2 ↑up
HP: 100/100
MP: 1000000/1000000
健康状態: 良好
魔法: 才能なし。たとえレベルを上げても使用できません。
スキル: 家召喚、言語翻訳(文字の読み書き)
嘘でしょう!? 本当にレベルが1上がってる!!
え? まさか1日1レベル上がって行くとかそんなチョロい仕様なの?
落ち込んでいた気持が少し浮上した。
これは、明日またステータスを確認しなきゃいけない。
◇◇◇
私の希望的観測は翌日を迎える事で確信に変わる。
日を跨ぐにつれ、レベルが上がっていったのだ。
ちなみに3日目はケチャップが増えていた。
それから日を追うごとに、ある日はチューブのわさびが。またある日は食器がグレードアップし、畑の野菜の種類が増えていた事もあった。
そして───……早いものであれから約3ヶ月が経った。
現在の私のステータスはこうだ。
名前: 藤井 かなで
年齢: 15才
レベル: 90 ↑up
HP: 86/100
MP: 1000000/1000000
健康状態: 良好
魔法: 才能なし。たとえレベルを上げても使用できません。
スキル: 家召喚、言語翻訳(文字の読み書き)
今私が住んでる家は、とんでもない事になっている。
まず土地は、一軒家が3軒建つくらいの広さに拡がり、畑にはナス、きゅうり、トマト、とうもろこし、白菜、レタス、大根、人参、枝豆等が増え、果樹園はりんご、みかん、葡萄、ナシ、レモン等がたわわに実っていた。
この畑、季節も種類も関係なく出来る不思議畑らしい。
家はハウスメーカーが建てた大きめの一軒家みたいなものに変化し、家の中もそれに並ぶ立派なものに変わっている。
調味料もポン酢やお好みソース、ウスターソース、焼き肉のタレなど充実している。
そして何が一番変わったかというと、図書室が出来たのだ。
これが本当に便利だった。
何しろこの世界の事について書かれた本や、ポーションの作り方、料理本等々、様々な本が置かれているのだから。
その中で、この森について書かれている本があったので読んでみることにした。
───この森は“魔の森”と呼ばれており、強い魔物が集う森らしい。奥に行けば行くほど魔物のレベルが上がっていく。
魔物の強さがどの程度かというと、森の入り口付近はBランクの冒険者パーティーで勝てるレベル。
少し入るとAランク冒険者のパーティーでないと進む事も無理なレベルに変わり、さらに奥に進むとSランクのパーティーで何とかなるかな? なレベル。
そして私が住んでる最奥の場所は、人類では到達できないレベルらしい。
ちなみに冒険者とは、あのファンタジーの定番の冒険者という認識で間違いないらしく、ランクも存在する。
Sランク: 冒険者最高ランク。伝説
Aランク: 一流。憧れ
Bランク: 一目置かれる存在
Cランク: 一人前
Dランク: もう少しで一人前
Eランク: 調子に乗って死ぬ
Fランク: 頑張った結果死ぬ
Gランク: 新人
簡単にいうとこんな感じなのだそう。
で、肝心なのはここがそんなヤバい森の最奥だったって事。
私としては家の土地をどんどん拡げていって、この森から脱出する事を目標にしてたんだけど、このままじゃ何十年かかるか分からない。
で、考えた結果、ウチの隣にも『家召喚』する事にしたわけだ。
「家を増やす事によって土地が拡がるもんね!!」
等と安易な考えで家召喚を唱えたんだけど、何か選択肢が出てきたぞ。
“別宅を召喚”
“村を作る”
「…………ん? 村?」
土地を拡げたいなら絶対『村を作る』だよね。私しか住んでないけど。
“村を作る為に整地します”
やはり最初の頃のように光って、北海道の牧場かっていうくらいの面積が整地された。
「え? これ大丈夫? 環境破壊にならない? 魔物達激怒しない?」
“家を召喚します”
そこへ初期設定の小屋がいくつも建てられ、畑と果樹園も出来る。
ほわぁ~……。本当に村っぽくなった。
「うわぁ……今度はチートな村様? 誰も住んでないのがもったいないや」
しかし私は気付いていなかった。
この村の畑を世話を、一人でしなくてはならない事に。
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