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12&13:デート、どうする?

Bパート

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 なぜか、僕は、映画館で、拙奈さんの隣に座っていた。
 きっかけは、四人で呑んでいる最中に、彼女に届いたラインだった。
 それは、彼女の友人からで、日曜日の映画の約束をキャンセルする連絡だった。
 チケットは、座席指定で購入済で、割引金額なので変更もできない。
 日曜日は、インストラクター仲間は仕事の場合が多く、代わりが見つからなさそう、との話になった。
 先輩は、姉と映画なんて嫌だ、と断固拒否。
 ショージさんは、話題の血まみれホラーだったので、こちらも拒否。
 そこで、僕が生贄、となったのだ。
「カップルばっかりだね」
 チケット代が奢りだ、というので代わりにポップコーンを買ってきて、座るなり言われた。
 ちなみに、山盛りのポップコーンは、彼女のリクエストで、キャラメルとイチゴミルクだ。
 甘党の一家なのだろうか。
 でも、先輩は、半分はチーズとかのショッパイのにしそうだ。
 だから、先輩と比べるのは、止めろ。
 顔が同じでも、別人だ。
 でも、同じ顔が側にいて、ドキドキする。
 気が利いたことも言えないままに、上映開始のブザーが鳴った。

「ほらほら、泣き止んで」
 僕は、映画に感動して、ガン泣きしていた。
 ドロッドロのスプラッターだったのだが、不覚にも、ラストでボロッボロ泣いた。
 それはもう、拙奈さんと周囲が、若干引くほどに。
「だって、だって、ジョニーが、えぐっ」
「うんうん、そうだねー」
 入れ替え制なので、肩を抱かれてロビーに出た。
「顔、洗いにいくのは無理、そうだね」
「じょ、ジョニー。ひぐっ」
 彼女は、僕の背中を摩りながら、
「弟が、いっしょに映画に来たがらなかったのね。中学のときに、同じように泣いたの。ドラえもんだったけど」
 先輩が泣いたのか。
「後で、恥ずかしがって、二度といっしょに映画に行かないって、言われちゃった。泣くのは、恥ずかしいことじゃないのにね」
「・・・いや、恥ずかしいですよ。男としては」
「男とか、関係ないじゃない?」
 僕は、いろいろな恥ずかしさで麻痺していたのか、その言葉に、挑戦的に言った。
「僕、男ですけど、先輩に告白して、フラれました」
 彼女の手がピタリ、と止まった。
「理由は?」
「・・・部下だから、弟というか、家族としか思えない、って」
「それは、仕方ない」
 僕は、顔を上げ、強い目で、彼女を見た。
「仕方ない、ですか?」
「うん」
 彼女は、頷き。
「私だって、弟のことは大好きだけど、家族だもん」
「でも、先輩は?」
「だって弟、馬鹿だもん。気がつかないよ」
 ちょっと、寂しそうに笑って、
「だからって、私に惚れてもダメだぞ。メッキー君も弟みたいにしか、思えないから」
 どうやら僕は、同じ顔の人に、またフラれたらしい。
「呑む?」
「呑みます。顔洗ってきます」
 その代わりに僕は、同じ人を好きになった人と出会えたらしい。

 翌日、僕は二日酔いでギクシャク、と出社した。
 昨日は、先輩への愚痴で盛り上がってしまって、カラオケにまで行ってしまった。
「メッキー、おはよう」
「あ、おはようございます。先輩」
 今朝も先輩は、素敵だ。
 少しだけ、二日酔いが和らいだ気がする。
「あれ?」
「はい?」
 先輩が、心配そうな顔になった。
「昨日、姉さんに連れまわされたんじゃないのかい?」
「ええ、でも、楽しかったですよ」
 彼は、笑顔になった。
 今朝の笑顔も素敵だ。
「そうか。でも、悪口を言ってなかったかい?」
「え、ええ。バレンタインデーのチョコの数で、先輩がお姉さんに勝ったことがないとか」
「それ、母親からのを数に入れたら、勝ってた年、あったんだよ!」
 弟扱いなら、それでもいい。
 姉弟合わせて、身内上等だ。
 先輩がショージさんと付き合った後に、こんな弟分がいて本当に良かった、と先輩たちに、思い知らせてやる。
 それが、この失恋の落とし前だ。
「お姉さん、素敵ですね」
「自慢の家族だよ」

 僕は失恋と同時に、同志と家族を手にいれた。
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