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03:運動、どうする?
Aパート
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きっかけは初日夜、歓迎会での会話だった。
ちなみに、仕事場最寄り駅の側にあるマンションの地下にあるお店で、ビールが美味しかった。
看板猫さんもいて、猫好きの佐伯さんは、常連なのだとか。
そうか、猫好きなのか、メモメモ。
ラグを敷いた上に置かれたローテーブルの周りを囲んで、クッションで座るのが、なんだか初めて友達か親戚の家に来たみたいで、新鮮だった。
椅子に座るより、佐伯さんとの距離が近い気がするのもいい。
「福利厚生で、社内部活があるんだ」
「そうそう最近、部室もできたんですよ」
社内部活?
「仕事してると、どうしても運動不足になりがちだから、社内で運動ができるように、会議室をひとつ潰して、トレーニングルームにしたんだ」
「まだまだ用具は、全然届いてないですけどね」
どうやら、スポーツジムみたいなものを、社内につくる計画らしい。
「東海林さんも、どう?」
「えー、でも私、運動なんて」
「お待たせしました。レンコンのカナッペ風です」
クラッカーではなく、レンコンに乗せた色トリドリなカナッペのお皿が、テーブルに置かれた。
「どうそ、ごゆっくり」
店員さん、ひとりしか見てないけど、全てひとりでやっているのだろうか。
レンコンは、素揚げや焼き、蒸し、茹で、醤油味の煮物、と上の具に合わせて調理法を変えられていた。
また逆に、同じ具でも、レンコンが違えば、味わいが異なる。
一番好きだったのは、お豆腐の味噌漬けを焼いた具と素揚げの組み合わせ。
じんわり、と味噌味が染み出る焼き目が香ばしいお豆腐に、サクサクの素揚げが、いいアクセントになっていた。
二番目は、ワサビを乗せたスモークサーモンと蒸しレンコン。
味と脂の濃いサーモンに、ほこっりとした蒸しの食感がピッタリ。
佐伯さんを誘って、「また来たい」と思ったけど、どうやらこれは、日替わりのお料理らしくて、次また出会えるかは分からない。
私の食欲に火を点けたいらしいな、このお店は。
「香恋さん、食べすぎ。もっと太る」
佐伯さんが、ビールを買いにカウンターに向かった隙に、山崎さんがザックリ、と斬り込んできた。
このお店は、店員さんが少ないせいか、基本セルフサービスなのだそうだ。
「だって、美味しいんだもの」
私は、口をもぐもぐさせながら、お行儀悪く、いさぎ悪く、意地汚くも口答えした。
「男は、女性が思っているより、ポッチャリ体形が好きだって、言いますからね」
百目鬼君が、ものすごく棒読み口調で、言った。
「まあ、ご本人が、佐伯先輩を落とせると思うならいいのでは」
山崎さんが、無表情に頷いた。
食欲の炎が消火された私はゴックン、と飲み込んで、
「私、佐伯さんに好かれるように、綺麗になりたいです」
と小声で言った。
「はい、東海林さんには、ヒューガルデン。二人にはギネスだよ」
佐伯さんが、お盆でビールを持ってきてくれて、座った。
「ありがとうございます、先輩。あ、ショージさん、運動部に入るそうです」
運動部?
何それ?
「ああ、そうなんだ。俺は中々参加できないけど、楽しんで」
何が進行しているんでしょう、本人に関係なく。
「運動部は、さっき話しの出ていた社内部活のアダ名。入部おめでとう」
山崎さんが、説明してくれた。
正式名称は、福利厚生施設運動なんとか、と言うらしい。
どうして、入部することになってるの?
「ショージさん、運動部で、今より綺麗になりたいそうですよ。これ以上、綺麗になられたら先輩、困っちゃいますね」
「おお、それは、綺麗すぎて、困っちゃうな」
「はい、入部して、綺麗になります!」
と即答で私は、笑顔の素敵な佐伯さんに、入部を宣言した。
そこは、総鏡張りのガラン、とした部屋だった。
ここが通称、『部室』だ。
結構、大き目な会議室だったようだ。
ただ、前に聞いたように、まだ器具が届いていず、ほぼ空き部屋状態だ。
「じゃあ、トレーニングしましょうか」
チョロくも、佐伯さんを餌に丸めこまれて入部した私は、ウェアに着替えさせられていた。
ちなみに、このウェアもシューズ、タオルも、社員への無料貸し出しだ。
ご丁寧なことに、トップスはブラカップ付きなので、汗だくになった後の着替えのパンツさえあれば、手ぶらで運動できるのだ。
使用後は、近所にある、ランニングベースに連絡すれば、使用済を引き取った上に、補充してくれるのだそうだ。
ありがたい反面、ウェア忘れたとかの、言い訳ができない迷惑さを感じる。
ちなみに、ビル内にあるコンビにで、パンツは売っているので、「着替えを持ってくるの忘れた」という理由も通用しない。
「でも、トレーニング、しようにも、器具。ないけど?」
できれば運動したくないので、抵抗する。
「逆に器具、使った高負荷の筋トレだと、香恋さんの心が折れるのでは?」
山崎さんが、私のウェアの鳩尾あたりを見ながら言った。
実は、準備運動として、このフロアまで、階段で二階分上がって一階分下がる、という私にとっては、大運動を既にさせられていたのだ。
息は切れているし、ブラカップの下はクッキリ、と汗で濡れ色が変わっている。
「それはそうだけど、って筋トレで痩せるの?太くなりそう」
「そんなに簡単に筋肉が太くなったら、ボディビルダーなんて誰もやらない」
とても冷たく言い捨てる山崎さん。
「だって、痩せるなら、有酸素運動でしょう?」
「はい、だから筋トレを有酸素でやってもらいます」
???
アナタハ、ナニヲイッテイルノデショウカ?
ちなみに、仕事場最寄り駅の側にあるマンションの地下にあるお店で、ビールが美味しかった。
看板猫さんもいて、猫好きの佐伯さんは、常連なのだとか。
そうか、猫好きなのか、メモメモ。
ラグを敷いた上に置かれたローテーブルの周りを囲んで、クッションで座るのが、なんだか初めて友達か親戚の家に来たみたいで、新鮮だった。
椅子に座るより、佐伯さんとの距離が近い気がするのもいい。
「福利厚生で、社内部活があるんだ」
「そうそう最近、部室もできたんですよ」
社内部活?
「仕事してると、どうしても運動不足になりがちだから、社内で運動ができるように、会議室をひとつ潰して、トレーニングルームにしたんだ」
「まだまだ用具は、全然届いてないですけどね」
どうやら、スポーツジムみたいなものを、社内につくる計画らしい。
「東海林さんも、どう?」
「えー、でも私、運動なんて」
「お待たせしました。レンコンのカナッペ風です」
クラッカーではなく、レンコンに乗せた色トリドリなカナッペのお皿が、テーブルに置かれた。
「どうそ、ごゆっくり」
店員さん、ひとりしか見てないけど、全てひとりでやっているのだろうか。
レンコンは、素揚げや焼き、蒸し、茹で、醤油味の煮物、と上の具に合わせて調理法を変えられていた。
また逆に、同じ具でも、レンコンが違えば、味わいが異なる。
一番好きだったのは、お豆腐の味噌漬けを焼いた具と素揚げの組み合わせ。
じんわり、と味噌味が染み出る焼き目が香ばしいお豆腐に、サクサクの素揚げが、いいアクセントになっていた。
二番目は、ワサビを乗せたスモークサーモンと蒸しレンコン。
味と脂の濃いサーモンに、ほこっりとした蒸しの食感がピッタリ。
佐伯さんを誘って、「また来たい」と思ったけど、どうやらこれは、日替わりのお料理らしくて、次また出会えるかは分からない。
私の食欲に火を点けたいらしいな、このお店は。
「香恋さん、食べすぎ。もっと太る」
佐伯さんが、ビールを買いにカウンターに向かった隙に、山崎さんがザックリ、と斬り込んできた。
このお店は、店員さんが少ないせいか、基本セルフサービスなのだそうだ。
「だって、美味しいんだもの」
私は、口をもぐもぐさせながら、お行儀悪く、いさぎ悪く、意地汚くも口答えした。
「男は、女性が思っているより、ポッチャリ体形が好きだって、言いますからね」
百目鬼君が、ものすごく棒読み口調で、言った。
「まあ、ご本人が、佐伯先輩を落とせると思うならいいのでは」
山崎さんが、無表情に頷いた。
食欲の炎が消火された私はゴックン、と飲み込んで、
「私、佐伯さんに好かれるように、綺麗になりたいです」
と小声で言った。
「はい、東海林さんには、ヒューガルデン。二人にはギネスだよ」
佐伯さんが、お盆でビールを持ってきてくれて、座った。
「ありがとうございます、先輩。あ、ショージさん、運動部に入るそうです」
運動部?
何それ?
「ああ、そうなんだ。俺は中々参加できないけど、楽しんで」
何が進行しているんでしょう、本人に関係なく。
「運動部は、さっき話しの出ていた社内部活のアダ名。入部おめでとう」
山崎さんが、説明してくれた。
正式名称は、福利厚生施設運動なんとか、と言うらしい。
どうして、入部することになってるの?
「ショージさん、運動部で、今より綺麗になりたいそうですよ。これ以上、綺麗になられたら先輩、困っちゃいますね」
「おお、それは、綺麗すぎて、困っちゃうな」
「はい、入部して、綺麗になります!」
と即答で私は、笑顔の素敵な佐伯さんに、入部を宣言した。
そこは、総鏡張りのガラン、とした部屋だった。
ここが通称、『部室』だ。
結構、大き目な会議室だったようだ。
ただ、前に聞いたように、まだ器具が届いていず、ほぼ空き部屋状態だ。
「じゃあ、トレーニングしましょうか」
チョロくも、佐伯さんを餌に丸めこまれて入部した私は、ウェアに着替えさせられていた。
ちなみに、このウェアもシューズ、タオルも、社員への無料貸し出しだ。
ご丁寧なことに、トップスはブラカップ付きなので、汗だくになった後の着替えのパンツさえあれば、手ぶらで運動できるのだ。
使用後は、近所にある、ランニングベースに連絡すれば、使用済を引き取った上に、補充してくれるのだそうだ。
ありがたい反面、ウェア忘れたとかの、言い訳ができない迷惑さを感じる。
ちなみに、ビル内にあるコンビにで、パンツは売っているので、「着替えを持ってくるの忘れた」という理由も通用しない。
「でも、トレーニング、しようにも、器具。ないけど?」
できれば運動したくないので、抵抗する。
「逆に器具、使った高負荷の筋トレだと、香恋さんの心が折れるのでは?」
山崎さんが、私のウェアの鳩尾あたりを見ながら言った。
実は、準備運動として、このフロアまで、階段で二階分上がって一階分下がる、という私にとっては、大運動を既にさせられていたのだ。
息は切れているし、ブラカップの下はクッキリ、と汗で濡れ色が変わっている。
「それはそうだけど、って筋トレで痩せるの?太くなりそう」
「そんなに簡単に筋肉が太くなったら、ボディビルダーなんて誰もやらない」
とても冷たく言い捨てる山崎さん。
「だって、痩せるなら、有酸素運動でしょう?」
「はい、だから筋トレを有酸素でやってもらいます」
???
アナタハ、ナニヲイッテイルノデショウカ?
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