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手紙、まで

手紙

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 翌日、カスミちゃんから、手紙が届いた。
 あれから、帰ってすぐ書いてくれたのだろう。
 あと、アニキ夫妻からのお礼状も届いていた。
 家族して、早っ!
 手紙って、年賀状以外でもらったのって、高校生以来かもしれない。
 一応、ラブレターをもらったことくらいあるのだ、と自慢しておく。
 高校生以降初の手紙、であることは、自嘲しておく。
 カスミちゃんの手紙には、雪さんと会えて楽しかったこと、遊べて楽しかったこと、また会いたいこと、などなど。
 僕の存在には、一切触れない暖かな内容だった。
 お礼状には、カスミちゃんが、雪さんを抱っこしたいと言ったこと、また来たいと言ったこと、手紙を書きたいと言ったこと、などなど。
 いつもの引っ込み思案とは違う積極性への驚き、感謝と親馬鹿が綴られていた。
 これも、八割がた僕の存在には、触れない内容だ。
 手紙をどこにしまおうと考えて、百円ショップでコルクボードを買ってきた。
 リビングの壁に吊るして、手紙と、ついでに昨日のオヤジとの写真をピンで(オヤジの額を貫いて)留めていると、ふと思った。
 雪さんとカスミちゃん、アニキ夫妻の写真を撮ってあげればよかったな、と。
 そして、またそんな写真を撮る機会が、この場所に訪れるのだろうか、と。
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