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命名、まで

初日

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「にゃー」
 ケージの中から、鳴き声がした。
 あまり、怖がった感じではなく、退屈したような、と思うのは、願望だろうか。
 一階の六畳間からクッションを持ってきて、ケージの近くで文庫本を読んでいた。
 会の人が、三十分くらいしてから、ケージを開けるのがいい、とのことで、待っていたのだ。
 出せー、とでもいうように、がっ、がっとケージに爪をたてているような音もしてきた。
 そろそろいいのかな。
 ケージを開けて、音をたてないように、クッションに戻る。
 しばらくすると、ピコピコとピンクの鼻を動かしながら、ゆっくりと猫が出てきた。
 屈めた白い身体が、バスタオルの影から見える。
 僕と目が合うと、ビクっとしたが、また動き出す。
 白い猫だけど、正確には白猫ではない。
 尻尾だけ黒と茶色、つまり三毛猫の女の子だ。
 まあ、三毛猫だから女の子だし、推定三歳だから、人年齢にすれば二十代なので、女性といった方がいいかも。
 でも、イメージとして、女の子の方が、しっくりくる。
 年齢が推定なのは、保護された時の骨格などで、何歳くらい、と予想したから。
 なので、誕生日も分からない。
 匂いをかぎながら、ゆっくりと歩く猫。
 僕は、それを眺める。
 探検中の猫を、驚かさないように、なるべく動かないように。
 そして気がついた。
 準備にばかり気をとられて、名前を考えるの忘れていた。
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