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命名、まで

家族

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「猫カフェができそうですね」
 猫をつれて来てくれた譲渡会の女性の第一声が、それだった。
 かなり大きな金属ケージを、その人は片手で運び、ギロギロと家の間取りなどを見ながら歩き、リビングに置くと、そう言った。
 窓の桟を指で触って、「掃除ができてない」とか怒られそうで怖い。
 ケージには、バスタオルがかかっているので、中の猫は見えない。
 リビングの入口とは逆の壁側に一畳のラグを敷き、その脇のトレーにドライフード、水を入れた器を用意した。
 ドライフードは、事前に聞いた保護主さん(さっきまで、猫が保護されていた家)のところで食べているのと同じものを購入。
 ラグの上には、ドーム型の中に入るベッド、電熱ヒーターも入れた。
 まあ、中で寝るのは期待しない方がいいらしいけど。
 少し離れたところにトイレを二つ。
 猫の数プラス一つが理想らしい。
 トイレ砂(ヒノキのペレット)の散らかりを防ぐ高め壁が周りを囲み、中はスノコ状になっていて、下に入れた吸収シートでオシッコを吸うタイプ。
 メーカーの違うこの組み合わせが、アニキのお勧めだった。
 そこに、今まで使っていたトイレ砂を匂いつけにもってきてもらっているので、ふりかける予定。
 とはいえ、このトイレ砂が合わないようならば、このベストチョイス以外を模索する必要がある。
 泣くかも、アニキ。
 全体を覆うフードのついたトイレの方が、臭いを防ぐにはいいらしけど、湿気が抜けないし、入る猫にとっては臭いが籠るので、あまりよくないそうだ。
 確かに、ほぼ密閉された仮設トイレに毎回行くことを考えれば、そのイヤさ加減は想像がつく。
 臭いの面は、将来的には、猫トイレの場所を人トイレに動かして、換気扇の恩恵を受けられるようにする野望がある。
 上下運動は、一階六畳間への階段があるから、とりあえずはそれで。
 足りないようならば、猫タワーを考える。
 あと、隠れ家になるように、空の段ボールを二つほどに、上から出入りするタイプのキャリングケース、あとは麻の爪爪とぎを適当に置いてある。
「まず、これを」
 会の人から、封筒をもらう。
 ワクチン接種の証明書などだった。
 ペットホテルや航空機に乗せるのに必要というが、当面予定はない。
 他にも、ワクチン注射をした後に、先日払った負担金返却を請求するための書類、誓約書のコピー、健康診断結果などが入っていた。
 バスタオルは、ケージの目隠しになって、落ち着きやすくなるので、このままで。
 ちなみに、保護主さんからのプレゼント。
 ケージを開けると、走ってどこかに隠れるかもしれないけど、慌てて追いかけない。
 玄関ドアの開け閉めは要注意。
 できれば、外へ出ないようにゲートも考えてほしい、ただ性格で、外に出たがらない猫もいる、などなど。
 改めて、いろいろ説明を聞いて、困った時用に、連絡先を教えてもらった。
 ケージは、あの公園で毎月やっている譲渡会に、そのうち持ってきてくれればいい。
 そう言って、帰ろうとする女性を慌てて呼び止め、聞いてしまう。
「合格、ですか?」
「はい、末永く、お幸せに」
 僕に、家族ができた瞬間だった。
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