114 / 120
番外編:冬
冬のコタツと猫
しおりを挟む
「看板猫のいるビア・バー」として、気温の低下は、売上の低下に直結する。
それを、なんとかしよう、と始めた温かいスープのサービスは、好評だった。
一度、お席についていただいて、メニューを眺めながら、スープで身体が暖まれば、ビールへの渇望も沸く、というものだ。
日替わりお料理での材料で余った野菜などを使えば、経済的で、一石二鳥だった。
ここで問題が一つ。
来ていただいたお客様には、このサービスは好評なのだが、やはり寒い時期にビールは、敬遠されがちだ。
暖かい部屋でのビールは最高なのだから、それをどう、アピールするか。
暖房を強めにしたら、頭がボーっとする、とクレームが出た。
そこで思いついたのが、コタツだ。
去年、自分用に買ったコタツをリビング(と当時は呼んでいた)に置いていたのだけど、本格的にお店を始めたころには、片付けていた。
コタツで呑むビールは、最高だ。
そこで、全テーブルコタツ化計画を発動した。
そして、届いた山のようなコタツ布団を前に、既に挫折していた。
開梱すれば、猫たちが潜り込むビックリ箱状態になるので、放置している。
実は、使っていたテーブルは、ほとんどがコタツ付きだった。
購入したとき、時期外れだったせいか、普通のテーブルより、安かったからだ。
行方不明になりかけていた電源ケーブルは、なんとか発掘した。
ヒーター部分を掃除機で吸ったり、電源をつないで、動作確認をしたり、満を持して届いたコタツ布団だったのだけど、小山になった。
玄関まで届けてくれたのだけど、玄関がいっぱいになってしまうので、お店手前の猫逃げ出し防止ドア前までピストン輸送しなければならず、更にお店の中まで、それだけで疲れた。
雪さんは、またなにか企んでいるんでしょわかってるんだからね、と警戒した視線を投げてきているし、雨くんは、布団山の周りをグルグルグルグル周っていた。
バターになられたら困るので、やるとしますか。
パッケージされた袋から、布団類を出して、ビニール袋は猫たちが入って窒息するのが怖いので、放置せずにゴミ箱へ。
戻ってきたら、布団山の頂上は登頂成功されていた。
仕方なく、崩さないように、コタツ敷を引き出して、テーブルをどけたラグの上に敷く。
ラグいらないかなあ、と考えていたら、既に一部がモグラでもいるように盛り上がっている。
ラグとコタツ敷の間に潜り込んでいるのがいるらしい。
素早い。
うん、踏んだら危ないから、ラグ片付けよう。
でもそれって、労働が増えるってことだよね?
テーブルをどかして、ラグを仕舞い、コタツ敷を敷いて、テーブルのコタツ部分を戻し、毛布、コタツ布団、上掛けをかけ、テーブルの天板を乗せてできあがり。
これ、繰り返すの?
どうせ平日だから、満席にならないから、全部やらなくていいんじゃないか、と囁く声と戦いながら、なんとかコタツを仕上げた。
今日の日替わり、サバのピーナッツクリーム煮が、冷やして味を染み込ませる段階になって、気がついた。
猫たちの姿が見えない。
どうやら、コタツの中に隠れているようだ。
困ったことに、そのコタツが複数あることだ。
どれ?
外見からは、布団の膨らみなどがあるコタツはない。
放置したら、お客様へのビックリ箱になってしまう。
うん?
それも面白いか。
「全席コタツ始めました。看板猫が入っていたら、その数だけビールをサービスいたします」
コタツは好評で、コタツがあるなら、と来てくださったお客様も増えたが、一つ忘れていたことがあった。
コタツは魔物で、捕らえた者を逃がさないのだ。
コタツから出るのが嫌で、カウンターまで注文しに来たくなくなるのだ。
お客様の滞在時間は長くなったが、売り上げは横這いどころか、下がり気味だった。
なんとかしなければ。
僕は、コタツに捕まりながら、ヒューガルデン・ホワイトのジョッキを干し、もう一杯呑みたいのだけど、魔物から逃れられないでいた。
--------------------------------------------------------------------
番外編の解説(作者の気まぐれ自己満足と忘備録的な)
「冬の」とあったら(以下略)
はい、コタツの冬です。
(ツッコムのも面倒だよ?)
次は食物とジム以外で、という、前回あとがきの口約を守ったお話です。
ビールと気温との戦いの第二弾でもあります。
(うわ、また三部作っぽい流れ?)
(うん、三部作だね、また)
ビール売り上げアップのための寒さ対策として、コタツを選択したらどうなるか?な発想からのお話です。
結果は、お読みいただいた通りです。
じゃあ、どう打破するか、商人(あきんど)としての腕が試されるのでしょう。
(そんなノリの話だっけ?)
(まあ、そんな回があってもいいんじゃない?)
(いやいや、回によってバラバラすぎでしょ?)
(え?)
(え?)
というか、番外編で、次回へ続くっぽくして大丈夫か、って気もしますが。
まあ、そもそも続くかどうかがわからないのが、番外編の醍醐味ですよね?
また、機会がありましたら、このお店にお付き合いくださいませ。
(久しぶりに本編っぽいノリじゃない?)
(そう?)
(本編といえば、どうするの全体として?)
(前に考えていた、続編に興味薄くなっちゃったしね)
(まあでも、たまーにそういうことがあるお店ってのでもいいんじゃない?)
(たまに?)
(いつもは、いつものノリで、ちょっとそんな夜もあるよ的な?)
(需要あるかな?)
(人気が出るのを書けると思ってる?)
(え?)
(え?)
まみ夜
それを、なんとかしよう、と始めた温かいスープのサービスは、好評だった。
一度、お席についていただいて、メニューを眺めながら、スープで身体が暖まれば、ビールへの渇望も沸く、というものだ。
日替わりお料理での材料で余った野菜などを使えば、経済的で、一石二鳥だった。
ここで問題が一つ。
来ていただいたお客様には、このサービスは好評なのだが、やはり寒い時期にビールは、敬遠されがちだ。
暖かい部屋でのビールは最高なのだから、それをどう、アピールするか。
暖房を強めにしたら、頭がボーっとする、とクレームが出た。
そこで思いついたのが、コタツだ。
去年、自分用に買ったコタツをリビング(と当時は呼んでいた)に置いていたのだけど、本格的にお店を始めたころには、片付けていた。
コタツで呑むビールは、最高だ。
そこで、全テーブルコタツ化計画を発動した。
そして、届いた山のようなコタツ布団を前に、既に挫折していた。
開梱すれば、猫たちが潜り込むビックリ箱状態になるので、放置している。
実は、使っていたテーブルは、ほとんどがコタツ付きだった。
購入したとき、時期外れだったせいか、普通のテーブルより、安かったからだ。
行方不明になりかけていた電源ケーブルは、なんとか発掘した。
ヒーター部分を掃除機で吸ったり、電源をつないで、動作確認をしたり、満を持して届いたコタツ布団だったのだけど、小山になった。
玄関まで届けてくれたのだけど、玄関がいっぱいになってしまうので、お店手前の猫逃げ出し防止ドア前までピストン輸送しなければならず、更にお店の中まで、それだけで疲れた。
雪さんは、またなにか企んでいるんでしょわかってるんだからね、と警戒した視線を投げてきているし、雨くんは、布団山の周りをグルグルグルグル周っていた。
バターになられたら困るので、やるとしますか。
パッケージされた袋から、布団類を出して、ビニール袋は猫たちが入って窒息するのが怖いので、放置せずにゴミ箱へ。
戻ってきたら、布団山の頂上は登頂成功されていた。
仕方なく、崩さないように、コタツ敷を引き出して、テーブルをどけたラグの上に敷く。
ラグいらないかなあ、と考えていたら、既に一部がモグラでもいるように盛り上がっている。
ラグとコタツ敷の間に潜り込んでいるのがいるらしい。
素早い。
うん、踏んだら危ないから、ラグ片付けよう。
でもそれって、労働が増えるってことだよね?
テーブルをどかして、ラグを仕舞い、コタツ敷を敷いて、テーブルのコタツ部分を戻し、毛布、コタツ布団、上掛けをかけ、テーブルの天板を乗せてできあがり。
これ、繰り返すの?
どうせ平日だから、満席にならないから、全部やらなくていいんじゃないか、と囁く声と戦いながら、なんとかコタツを仕上げた。
今日の日替わり、サバのピーナッツクリーム煮が、冷やして味を染み込ませる段階になって、気がついた。
猫たちの姿が見えない。
どうやら、コタツの中に隠れているようだ。
困ったことに、そのコタツが複数あることだ。
どれ?
外見からは、布団の膨らみなどがあるコタツはない。
放置したら、お客様へのビックリ箱になってしまう。
うん?
それも面白いか。
「全席コタツ始めました。看板猫が入っていたら、その数だけビールをサービスいたします」
コタツは好評で、コタツがあるなら、と来てくださったお客様も増えたが、一つ忘れていたことがあった。
コタツは魔物で、捕らえた者を逃がさないのだ。
コタツから出るのが嫌で、カウンターまで注文しに来たくなくなるのだ。
お客様の滞在時間は長くなったが、売り上げは横這いどころか、下がり気味だった。
なんとかしなければ。
僕は、コタツに捕まりながら、ヒューガルデン・ホワイトのジョッキを干し、もう一杯呑みたいのだけど、魔物から逃れられないでいた。
--------------------------------------------------------------------
番外編の解説(作者の気まぐれ自己満足と忘備録的な)
「冬の」とあったら(以下略)
はい、コタツの冬です。
(ツッコムのも面倒だよ?)
次は食物とジム以外で、という、前回あとがきの口約を守ったお話です。
ビールと気温との戦いの第二弾でもあります。
(うわ、また三部作っぽい流れ?)
(うん、三部作だね、また)
ビール売り上げアップのための寒さ対策として、コタツを選択したらどうなるか?な発想からのお話です。
結果は、お読みいただいた通りです。
じゃあ、どう打破するか、商人(あきんど)としての腕が試されるのでしょう。
(そんなノリの話だっけ?)
(まあ、そんな回があってもいいんじゃない?)
(いやいや、回によってバラバラすぎでしょ?)
(え?)
(え?)
というか、番外編で、次回へ続くっぽくして大丈夫か、って気もしますが。
まあ、そもそも続くかどうかがわからないのが、番外編の醍醐味ですよね?
また、機会がありましたら、このお店にお付き合いくださいませ。
(久しぶりに本編っぽいノリじゃない?)
(そう?)
(本編といえば、どうするの全体として?)
(前に考えていた、続編に興味薄くなっちゃったしね)
(まあでも、たまーにそういうことがあるお店ってのでもいいんじゃない?)
(たまに?)
(いつもは、いつものノリで、ちょっとそんな夜もあるよ的な?)
(需要あるかな?)
(人気が出るのを書けると思ってる?)
(え?)
(え?)
まみ夜
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
下宿屋 東風荘 2
浅井 ことは
キャラ文芸
※※※※※
下宿屋を営み、趣味は料理と酒と言う変わり者の主。
毎日の夕餉を楽しみに下宿屋を営むも、千年祭の祭りで無事に鳥居を飛んだ冬弥。
しかし、飛んで仙になるだけだと思っていた冬弥はさらなる試練を受けるべく、空高く舞い上がったまま消えてしまった。
下宿屋は一体どうなるのか!
そして必ず戻ってくると信じて待っている、残された雪翔の高校生活は___
※※※※※
下宿屋東風荘 第二弾。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
わが家のもふもふ様
景綱
キャラ文芸
やんちゃで不思議な四歳の女の子エマ。
エマをあたたかな目で見守る十二歳の兄の侑真。
そして、猫のゴマと狐神様。わが家は幽霊道先案内人?
エマが「えへへ、汚れちった」と泥だらけになってお宝をみつけるところから物語ははじまる。
そのことがきっかけでエマの霊感が強くなり狐神様と縁を結ぶことに。
もともと狐神様は家にいたみたいでけど。
エマは狐神様のことを『もふもふ様』と呼ぶ。小さなまんまる狐で愛らしい存在。
そして、幽霊さんにおもてなしする?
はたしてこの兄妹に何が起こるのか。
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
ろくろな嫁~あやかし系上司が妻になります~
蒼真まこ
キャラ文芸
憧れの上司は、あやかし系でした──。
文房具メーカーに勤める田村草太の憧れの女性は、上司の春野美冬。
仕事ができて優しい完璧美人。しかしある晩、草太はオフィスで見てしまう。
春野美冬の首が、音もなくするすると伸びていくのを……。
美冬は先祖にろくろ首がいたために、自らもろくろ首体質のあやかし系上司だったのだ。
秘密を必死に隠しながら、懸命に生きてきた美冬を気の毒に思う草太だったが、
自分にだけ素顔を見せてくれる美冬に、いつしか本気になってゆく。
しかし問題は山積みで──。二人の恋は成就するのか?
優しさだけがとりえの童顔青年草太と、ろくろ首体質のあやかしヒロイン美冬。
ふたりが紡ぐ世にも奇妙で、ピュアなほのぼのラブコメファンタジー。
10万字程度(本1冊分)で完結。
エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載中。
第1回ノベルアップ+小説大賞二次選考通過作(最終選考落選)
エブリスタのあやかし特集ピックアップ
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる