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番外編:梅雨時
梅雨時のカクテル
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月に一、二回程度、オヤジの店に手伝いに来ている。
別に寂しいとかじゃなくて、勉強のためだ。
たまには、シェイカーを振らない、とカクテルのレシピも、お酒の銘柄も忘れてしまいそうだから。
もちろん、バーテンダーに昇格した忍さんとは、シフトが合わないようにはしている。
お互いのために、大事。
でもまあ、シフト以外にも、お父さん大好きっ娘は、やってくるので、予期せぬ鉢合わせになる。
途端に不機嫌になる忍さんには悪いけど、一番悪いのは、僕のシフトを伝えてないオヤジだ。
なんて言おうものなら、罵詈雑言なのはわかっているので、黙っている。
平日の夕方、雨の日は、客の出足も遅い。
まだ来ないお客様を待って、グラスを磨いていた。
「退屈だな」
「うん、退屈だね!」
親子の会話を邪魔しないように、口は挟まない。
「退屈だな」
オヤジが、顔を覗き込むように言ってきたので、仕方なく、
「退屈ですね」
と応える、と不機嫌になる忍さんとは反対に、妙にニヤけるオヤジ。
嫌な予感しかしない。
「よし、勝負だ」
「うん、いいよ!」
いや待て、せめて誰がとか、勝負の内容くらいは聞こうよ。
「お前ら二人で、オリジナル・カクテル勝負だ」
ほら、話が進んでいる。
「お前は、過去に出したやつから選べ」
僕に向かって言うので、思わず頷く。
ハンデとしては、順当かな。
一応、それなりに経験の差があるわけだし。
なんて、好意的に考えたが、それって、黒歴史披露の可能性もあるんじゃ、とはその瞬間には気がつかなかった。
僕の頷きに、いっそうニヤけを大きくして、オヤジは宣言した。
「テーマは、ブルー・キュラソーな」
嵌められた、と思った。
ブルー・キュラソーは、青いリキュールだ。
青いカクテルをつくりたかったら、第一選択。
この店の名前を冠したオリジナル・カクテル「MOONlight Night」にも使われている。
忍さんにとっては、バーテンダーとして認められた証のカクテルだから、ブルー・キュラソーへの思い入れは強いだろう。
それは、過去の僕も同じで、だからこそやらかしていた。
そう、一時、これを使ったオリジナル・カクテルに没頭して、怪作を発表してしまっていたのだ。
ニヤニヤとしたオヤジの顔にイラつく。
過去縛りがあるから、アレを出すしかないのだろう。
一方、忍さんも悩んでいるようだ。
青いカクテルをつくるには便利だ。
ただし、絶対に使わなければならないとなったら、青が邪魔でもある。
他のリキュールと合わせたい場合、リキュールには色がついていることが多いからだ。
かといって、ブルー・キュラソー自体は、味のベースになるほど、特長的でもない。
「あと二分」
勝手に、予告なくカウントダウンが始まった。
僕は、タンブラーに氷を入れ、オレンジジュースを注いだ。
ちょっと驚いた顔をする忍さん。
まあ、そうだよね。
「あと一分」
忍さんは慌てて、シェイカーに氷、ラム、ブルー・キュラソーを入れ始めた。
「ショートの味見が先だな」
カクテル・グラスにシェイカーから注がれた青いカクテルに、オヤジが口をつける。
ゴクリ、と忍さんが、喉を鳴らした。
「透明なミントとパイナップルジュースを使ったか。モッキンバードとブルーハワイのアイノコだな」
グラスを突き出されて、呑む。
ブルー・キュラソーの綺麗な色が出ている。
ラムをベースにして、ミント・リキュールとパイナップルジュースが爽やかな南国風だ。
パイナップルジュースとブルー・キュラソーの組み合わせは、ブルーハワイを連想させる。
ミントが前面に出ているのは、モッキンバードっぽくもある。
「美味しいと思います。飾り付けをパインにすると、ブルーハワイに寄りすぎだから、チェリーに切れ目を入れて、グラスの縁にですかね」
オヤジは頷いて、
「ミントを減らして、ステアにしたら、ミントミントしなくていいかもだな。逆に生ミントを使うのもアリか」
褒められて、忍さんが千切れそうに振っている尻尾が見えそうだ。
「さて」
オヤジがニヤつく。
視線の先には、ボクの「Earth Breath」があった。
「オレンジジュース?」
忍さんが、不思議そうに呟く。
そこには、ストローを刺したタンブラーに入ったオレンジジュースがあった。
一応、その脇には、ショットグラスに入ったブルー・キュラソーもあるんだけど。
オヤジに顎で促されて、ブルー・キュラソーをタンブラーのジュースに、慎重に注ぐ。
刺してあるストローで、ゆっくり、とかき混ぜた。
「わあー」
忍さんが、小さく歓声を上げた。
オヤジが、それを見て、唇を噛みしめていた。
吹き出すのを堪えているのだろう。
タンブラーの中は、底からオレンジ、緑、青と三色になっていた。
大地、植物、空をイメージしている。
「綺麗」
ちょっと感動している忍さんに、オヤジが無言のまま、呑め、と促す。
ストローに口をつけた忍さんは、怪訝な顔をした。
「オレンジジュース」
ストローの先が達している底の部分は、オレンジジュースだから、口に入るのもオレンジジュースのみだ。
オヤジは、血が出んばかりに唇を噛みしめたまま、かき混ぜるように指示。
忍さんの肩が、がっくり落ちたのがわかった。
ついに我慢しきれず、吹き出すオヤジ。
その前には、真緑色の液体があった。
ブルー・キュラソーはオレンジからつくったリキュールだから、オレンジジュースに合うだろう、と混ぜたら緑色になった。
そこで、止めておけばよかったのに、フロートさせて混ぜて、三色にした僕は、店で発表した。
結果が、これである。
三色の綺麗さは受けた。
しかし、飲む段になって混ぜれば、放置された沼のような色合いとなる。
出オチカクテルとして、一世を風靡したのは、正に黒歴史だった。
後に、オレンジジュースのみではない、ジンなどを加えた混ぜないで飲める改良版も出したが、出オチでなくなった、と不評だった。
「意外と美味しい」
忍さんの声が、現実に引き戻してくれた。
危うく、黒歴史の渦に取り込まれるところだった。
沼色ではあっても、味はいいのだ。
「オレンジに、オレンジのリキュールだからな」
と、オヤジは以前のように、バッサリ切って捨てたけど。
「忍の勝ちだな。今月限定のお勧めにする」
勝ちで喜んだ忍さんだったが、お勧めと聞いて、固まった。
この店のお勧めになる、と全てのお客様に、一回は勧めるのが原則だからだ。
(ショート・カクテルだから、一杯目は避けるけど)
「まあ、少し改良するがな」
言われて、ホっとした顔の忍さん。
「それで、名前は?」
「名前?」
ひどく驚いた顔で、聞き返された。
「忍さんのオリジナルだもの、忍さんが名前つけないと」
初のオリジナルの名前だ。
改良して、完成までに考えればいい、くらいの気持ちで言ったのに、あっさり答えが返ってきた。
「大好きお父さん」
「却下だ」
「お代わりはいかがですか。当店今月のお勧めはオリジナルのショート・カクテル『ナツコイ』でございます」
--------------------------------------------------------------------
番外編の解説(作者の気まぐれ自己満足と忘備録的な)
「梅雨時の」と冠つければ時期が誤魔化せるんじゃないか、と姑息な題名。
「梅雨時の」とあったら、エピローグから、3~4ケ月後までくらい、のお話です。
(番外編というよりもはや単なる続編疑惑)
「春の試験」の続編になる、カクテル勝負です。
一方は過去縛りなので、厳密には勝負でもないのですが。
忍さんへのオリジナルつくりへのオヤジなりのエール、みたいな感じでしょうか。
「ナツコイ」は、まずは「ナツマチ」で、梅雨時で早く夏来いの「夏待ち」なのですが、南国というより都会のクーラーの効いた感じもあるので「夏街」と悩んでカタナカとなりました。
だったのですが、ここを書いていて、もっと攻める感じだから「夏来い」とか「夏恋」とか「懐恋」もいいな、と変更になりました。
「Earth Breath」は、ブルー・キュラソー買ったはいいけど、減らないし、使えるカクテルが少ないぞ、とお困りの方にお勧めです。
更に、オリジナル・カクテルを出していきたい、とは思いますが。
まあ、そもそも続くかどうかがわからないのが、番外編の醍醐味ですよね?
また、機会がありましたら、このお店にお付き合いくださいませ。
(え?解説おとなしめじゃない?)
(え?いつもでしょ?)
まみ夜
別に寂しいとかじゃなくて、勉強のためだ。
たまには、シェイカーを振らない、とカクテルのレシピも、お酒の銘柄も忘れてしまいそうだから。
もちろん、バーテンダーに昇格した忍さんとは、シフトが合わないようにはしている。
お互いのために、大事。
でもまあ、シフト以外にも、お父さん大好きっ娘は、やってくるので、予期せぬ鉢合わせになる。
途端に不機嫌になる忍さんには悪いけど、一番悪いのは、僕のシフトを伝えてないオヤジだ。
なんて言おうものなら、罵詈雑言なのはわかっているので、黙っている。
平日の夕方、雨の日は、客の出足も遅い。
まだ来ないお客様を待って、グラスを磨いていた。
「退屈だな」
「うん、退屈だね!」
親子の会話を邪魔しないように、口は挟まない。
「退屈だな」
オヤジが、顔を覗き込むように言ってきたので、仕方なく、
「退屈ですね」
と応える、と不機嫌になる忍さんとは反対に、妙にニヤけるオヤジ。
嫌な予感しかしない。
「よし、勝負だ」
「うん、いいよ!」
いや待て、せめて誰がとか、勝負の内容くらいは聞こうよ。
「お前ら二人で、オリジナル・カクテル勝負だ」
ほら、話が進んでいる。
「お前は、過去に出したやつから選べ」
僕に向かって言うので、思わず頷く。
ハンデとしては、順当かな。
一応、それなりに経験の差があるわけだし。
なんて、好意的に考えたが、それって、黒歴史披露の可能性もあるんじゃ、とはその瞬間には気がつかなかった。
僕の頷きに、いっそうニヤけを大きくして、オヤジは宣言した。
「テーマは、ブルー・キュラソーな」
嵌められた、と思った。
ブルー・キュラソーは、青いリキュールだ。
青いカクテルをつくりたかったら、第一選択。
この店の名前を冠したオリジナル・カクテル「MOONlight Night」にも使われている。
忍さんにとっては、バーテンダーとして認められた証のカクテルだから、ブルー・キュラソーへの思い入れは強いだろう。
それは、過去の僕も同じで、だからこそやらかしていた。
そう、一時、これを使ったオリジナル・カクテルに没頭して、怪作を発表してしまっていたのだ。
ニヤニヤとしたオヤジの顔にイラつく。
過去縛りがあるから、アレを出すしかないのだろう。
一方、忍さんも悩んでいるようだ。
青いカクテルをつくるには便利だ。
ただし、絶対に使わなければならないとなったら、青が邪魔でもある。
他のリキュールと合わせたい場合、リキュールには色がついていることが多いからだ。
かといって、ブルー・キュラソー自体は、味のベースになるほど、特長的でもない。
「あと二分」
勝手に、予告なくカウントダウンが始まった。
僕は、タンブラーに氷を入れ、オレンジジュースを注いだ。
ちょっと驚いた顔をする忍さん。
まあ、そうだよね。
「あと一分」
忍さんは慌てて、シェイカーに氷、ラム、ブルー・キュラソーを入れ始めた。
「ショートの味見が先だな」
カクテル・グラスにシェイカーから注がれた青いカクテルに、オヤジが口をつける。
ゴクリ、と忍さんが、喉を鳴らした。
「透明なミントとパイナップルジュースを使ったか。モッキンバードとブルーハワイのアイノコだな」
グラスを突き出されて、呑む。
ブルー・キュラソーの綺麗な色が出ている。
ラムをベースにして、ミント・リキュールとパイナップルジュースが爽やかな南国風だ。
パイナップルジュースとブルー・キュラソーの組み合わせは、ブルーハワイを連想させる。
ミントが前面に出ているのは、モッキンバードっぽくもある。
「美味しいと思います。飾り付けをパインにすると、ブルーハワイに寄りすぎだから、チェリーに切れ目を入れて、グラスの縁にですかね」
オヤジは頷いて、
「ミントを減らして、ステアにしたら、ミントミントしなくていいかもだな。逆に生ミントを使うのもアリか」
褒められて、忍さんが千切れそうに振っている尻尾が見えそうだ。
「さて」
オヤジがニヤつく。
視線の先には、ボクの「Earth Breath」があった。
「オレンジジュース?」
忍さんが、不思議そうに呟く。
そこには、ストローを刺したタンブラーに入ったオレンジジュースがあった。
一応、その脇には、ショットグラスに入ったブルー・キュラソーもあるんだけど。
オヤジに顎で促されて、ブルー・キュラソーをタンブラーのジュースに、慎重に注ぐ。
刺してあるストローで、ゆっくり、とかき混ぜた。
「わあー」
忍さんが、小さく歓声を上げた。
オヤジが、それを見て、唇を噛みしめていた。
吹き出すのを堪えているのだろう。
タンブラーの中は、底からオレンジ、緑、青と三色になっていた。
大地、植物、空をイメージしている。
「綺麗」
ちょっと感動している忍さんに、オヤジが無言のまま、呑め、と促す。
ストローに口をつけた忍さんは、怪訝な顔をした。
「オレンジジュース」
ストローの先が達している底の部分は、オレンジジュースだから、口に入るのもオレンジジュースのみだ。
オヤジは、血が出んばかりに唇を噛みしめたまま、かき混ぜるように指示。
忍さんの肩が、がっくり落ちたのがわかった。
ついに我慢しきれず、吹き出すオヤジ。
その前には、真緑色の液体があった。
ブルー・キュラソーはオレンジからつくったリキュールだから、オレンジジュースに合うだろう、と混ぜたら緑色になった。
そこで、止めておけばよかったのに、フロートさせて混ぜて、三色にした僕は、店で発表した。
結果が、これである。
三色の綺麗さは受けた。
しかし、飲む段になって混ぜれば、放置された沼のような色合いとなる。
出オチカクテルとして、一世を風靡したのは、正に黒歴史だった。
後に、オレンジジュースのみではない、ジンなどを加えた混ぜないで飲める改良版も出したが、出オチでなくなった、と不評だった。
「意外と美味しい」
忍さんの声が、現実に引き戻してくれた。
危うく、黒歴史の渦に取り込まれるところだった。
沼色ではあっても、味はいいのだ。
「オレンジに、オレンジのリキュールだからな」
と、オヤジは以前のように、バッサリ切って捨てたけど。
「忍の勝ちだな。今月限定のお勧めにする」
勝ちで喜んだ忍さんだったが、お勧めと聞いて、固まった。
この店のお勧めになる、と全てのお客様に、一回は勧めるのが原則だからだ。
(ショート・カクテルだから、一杯目は避けるけど)
「まあ、少し改良するがな」
言われて、ホっとした顔の忍さん。
「それで、名前は?」
「名前?」
ひどく驚いた顔で、聞き返された。
「忍さんのオリジナルだもの、忍さんが名前つけないと」
初のオリジナルの名前だ。
改良して、完成までに考えればいい、くらいの気持ちで言ったのに、あっさり答えが返ってきた。
「大好きお父さん」
「却下だ」
「お代わりはいかがですか。当店今月のお勧めはオリジナルのショート・カクテル『ナツコイ』でございます」
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番外編の解説(作者の気まぐれ自己満足と忘備録的な)
「梅雨時の」と冠つければ時期が誤魔化せるんじゃないか、と姑息な題名。
「梅雨時の」とあったら、エピローグから、3~4ケ月後までくらい、のお話です。
(番外編というよりもはや単なる続編疑惑)
「春の試験」の続編になる、カクテル勝負です。
一方は過去縛りなので、厳密には勝負でもないのですが。
忍さんへのオリジナルつくりへのオヤジなりのエール、みたいな感じでしょうか。
「ナツコイ」は、まずは「ナツマチ」で、梅雨時で早く夏来いの「夏待ち」なのですが、南国というより都会のクーラーの効いた感じもあるので「夏街」と悩んでカタナカとなりました。
だったのですが、ここを書いていて、もっと攻める感じだから「夏来い」とか「夏恋」とか「懐恋」もいいな、と変更になりました。
「Earth Breath」は、ブルー・キュラソー買ったはいいけど、減らないし、使えるカクテルが少ないぞ、とお困りの方にお勧めです。
更に、オリジナル・カクテルを出していきたい、とは思いますが。
まあ、そもそも続くかどうかがわからないのが、番外編の醍醐味ですよね?
また、機会がありましたら、このお店にお付き合いくださいませ。
(え?解説おとなしめじゃない?)
(え?いつもでしょ?)
まみ夜
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