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番外編:写真
木の根元の陽だまりの
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その時あたしは、猫だったモノを見ていた。
道路の端に転がった、猫だったモノ。
正直、気持ち悪かった。
触ることなんて、できなかった。
でも、そのままにしておくのは、嫌だった。
小学校からの帰り道、無力なあたしは、ただ立ち尽くして、見ているしかできなかった。
知らない大人が、ソレにタオルをかけて、持ち上げた。
ああ、ゴミに出されるんだ、と思った。
以前、学校で飼っていたウサギが、休日当番で自宅に持ち帰った翌朝、死んでいた。
アレは、今でもトラウマで、しばらく口がきけなくなった。
まあ、今でも、考え考え喋るので、特徴のある口調だと言われてしまうけど。
ウサギの話だ。
困った母親は、学校の担任に電話したが、学校に持ってくるのは、拒否された。
死んでいるのを児童に見せたくない配慮だったのだろうけど、校庭の隅にでも埋めてもらう気だった母は、困った。
アパート住まいでは墓のつくりようがないし、近所の公園で墓穴を掘るのも外聞が悪い。
更に、市役所に電話をして、相談した回答は、「燃えるゴミにだしてくれ」だった。
今はもう、ビニール製のゴミ袋が主流になったけど、紙製のゴミ袋も、中身を想像してしまって、怖かったのもトラウマだ。
猫だったモノを包んだタオルを持った大人は、歩きだした。
せめて、ゴミ袋に入れるまでは、見届けたかったので、後をつけた。
大人は、途中で木の棒を拾う、とクラスの男子みたいに、振り回して歩いた。
大人のくせに、子供みたいだ。
公園について、木の根本に棒で地面を掘りだしたときには、驚いた。
お墓をつくる気だ。
母親が、その選択をしなかったせいで、大人がしてはいけないことだと思っていたのだ。
「大人が、そんなこと、していいの?」
つい、口に出してしまった。
大人は、驚いた様子もなく、
「まだ俺、大人じゃないから」
答えて、穴を掘り続ける。
そうか、大人じゃないなら、いいんだ。
あたしも子供だし、手伝ってもいいだろう。
「もっと、隅っこが、いいよ」
「でも、こっちの方が、温かくて、気持ちよさそうじゃないか?」
ほんわり、と陽の当たる根本に、猫が寝転がっている姿が見えた。
それで納得して、あたしも棒を探してきて、穴掘りを手伝った。
タオルごと埋め、土をかけた後、気がついた。
「アイスの、棒とか、刺さないの?」
学校の水槽で死んだ金魚を埋めたとき、そんなことをした。
すぐに、なくなってしまったけど。
大人は、側の木をばんばん叩いて、
「もう立派なボヒョーがあるじゃないか」
ボヒョーが何かはわからなかったけど、アイスの棒より立派だし、何より、なくなりそうもない。
大人が手を合わせたので、マネをした。
「今更だが、あの猫、お前が飼ってたのか?」
「ううん、知らない猫だよ」
「首輪をしてないし、飼い猫じゃなさそうだから埋めたが、姿が見えなくなって、悲しむヤツもいるんだろうな」
それが、いいことなのか、悪いことなのかは、その時にはわからなかった。
「ま、放っておくより、いいか」
その言葉は、深く、あたしの心に焼き付いた。
そして、今でも思い出し、そして自信を与えてくれる。
最良じゃないかもしれないけど、放っておくよりいい、と。
ぐー、と腹の鳴る音がした。
もう、既に陽も暮れかけている。
よれよれな包装のチョコバーをポーチから出した大人が、
「お前、腹減ってないか?」
聞かれたが、
「知らない人にモノもらったらダメだって、お母さんが」
「おお、いい母親だな」
親切を断られたのに笑顔で、しかもウサギをゴミに出した母親を褒めてくれて、嬉しかった。
「帰るね、ばいばい!」
「おー」
大人じゃない、と言い、子供にしては身体が大きい人に手を振って、家へ向かって走った。
とても、母親の顔が見たかったのを覚えている。
でも、今日のことは話さない、と決めていた。
今でも思う。
スーパーに行くたびに探しても見つからなかったあのチョコバーは、どんな味だったんだろう、と。
月に一回、「この会場」で行っている譲渡会を、自分で差し入れたオニギリを齧りながら、眺めて思う。
すべてを幸せにできていない。
でも、放っておくよりは、いい。
後に続く者もいる。
だからこそ、伝えなくてはいけない、背負いすぎて潰れてしまわないように。
大人な態度で、割り切らないように。
「ま、放っておくより、いいか」ということを。
「ごめんねー。責めてるんじゃないのー。感謝してるのよー」
でも、と続ける。
「猫に幸せになってほしいのかー、自分が納得したいだけなのか、よーく考えてみてー」
「くそっ、暗い中じゃ描けねー。忘れちまう。いい方法ないのか」
「あれ? これ写真みたいに見えるけど、スケッチ? オジサンが描いたんですか?」
木の根元の陽だまりで、寝転んだ猫に手を伸ばす少女のスケッチ画を見て、アニキに聞いた。
「はい。写真を撮るようになる直前の作品ですね」
--------------------------------------------------------------------
番外編の解説(作者の気まぐれ自己満足と忘備録的な)
いかにも番外編な、こいつ誰だよ、なお話、第伍弾。
「写真」は、登場人物の「過去・出会い」に焦点を当てた番外編で(以下略)
(写真?どこに?)
本編でのブレない大人、猫オバチャンが、いつどうやって「大人」を認めたのか、的なお話です。
また、「オジサン会の写真」での絵から写真に転向した理由も明かされます。
あと、猫オバチャン誕生秘話でもあります(そのまんますぎ)。
ちなみに本編の時代でも、彼女は、墓彫りが誰か知らない設定です。
(どうせ実は、って後付け設定で、変わるんでしょ?)
保護猫活動メインのスピンオフも面白いかも、ってガチすぎるか。
(番外編とかスピンオフとかばっかだな)
まあ、そもそも続くかどうかがわからないのが、番外編の醍醐味ですよね?
また、機会がありましたら、このお店にお付き合いくださいませ。
(お店どころか、写真すらも出てないだろ?)
(気にしない気にしない)
(人類猫科のパクリだよね?)
(気にしない気にしない)
(いや、パクリは気にしようよ!)
(パクリじゃなくて、インスパイア!)
(そこは気にするのかよ)
まみ夜
道路の端に転がった、猫だったモノ。
正直、気持ち悪かった。
触ることなんて、できなかった。
でも、そのままにしておくのは、嫌だった。
小学校からの帰り道、無力なあたしは、ただ立ち尽くして、見ているしかできなかった。
知らない大人が、ソレにタオルをかけて、持ち上げた。
ああ、ゴミに出されるんだ、と思った。
以前、学校で飼っていたウサギが、休日当番で自宅に持ち帰った翌朝、死んでいた。
アレは、今でもトラウマで、しばらく口がきけなくなった。
まあ、今でも、考え考え喋るので、特徴のある口調だと言われてしまうけど。
ウサギの話だ。
困った母親は、学校の担任に電話したが、学校に持ってくるのは、拒否された。
死んでいるのを児童に見せたくない配慮だったのだろうけど、校庭の隅にでも埋めてもらう気だった母は、困った。
アパート住まいでは墓のつくりようがないし、近所の公園で墓穴を掘るのも外聞が悪い。
更に、市役所に電話をして、相談した回答は、「燃えるゴミにだしてくれ」だった。
今はもう、ビニール製のゴミ袋が主流になったけど、紙製のゴミ袋も、中身を想像してしまって、怖かったのもトラウマだ。
猫だったモノを包んだタオルを持った大人は、歩きだした。
せめて、ゴミ袋に入れるまでは、見届けたかったので、後をつけた。
大人は、途中で木の棒を拾う、とクラスの男子みたいに、振り回して歩いた。
大人のくせに、子供みたいだ。
公園について、木の根本に棒で地面を掘りだしたときには、驚いた。
お墓をつくる気だ。
母親が、その選択をしなかったせいで、大人がしてはいけないことだと思っていたのだ。
「大人が、そんなこと、していいの?」
つい、口に出してしまった。
大人は、驚いた様子もなく、
「まだ俺、大人じゃないから」
答えて、穴を掘り続ける。
そうか、大人じゃないなら、いいんだ。
あたしも子供だし、手伝ってもいいだろう。
「もっと、隅っこが、いいよ」
「でも、こっちの方が、温かくて、気持ちよさそうじゃないか?」
ほんわり、と陽の当たる根本に、猫が寝転がっている姿が見えた。
それで納得して、あたしも棒を探してきて、穴掘りを手伝った。
タオルごと埋め、土をかけた後、気がついた。
「アイスの、棒とか、刺さないの?」
学校の水槽で死んだ金魚を埋めたとき、そんなことをした。
すぐに、なくなってしまったけど。
大人は、側の木をばんばん叩いて、
「もう立派なボヒョーがあるじゃないか」
ボヒョーが何かはわからなかったけど、アイスの棒より立派だし、何より、なくなりそうもない。
大人が手を合わせたので、マネをした。
「今更だが、あの猫、お前が飼ってたのか?」
「ううん、知らない猫だよ」
「首輪をしてないし、飼い猫じゃなさそうだから埋めたが、姿が見えなくなって、悲しむヤツもいるんだろうな」
それが、いいことなのか、悪いことなのかは、その時にはわからなかった。
「ま、放っておくより、いいか」
その言葉は、深く、あたしの心に焼き付いた。
そして、今でも思い出し、そして自信を与えてくれる。
最良じゃないかもしれないけど、放っておくよりいい、と。
ぐー、と腹の鳴る音がした。
もう、既に陽も暮れかけている。
よれよれな包装のチョコバーをポーチから出した大人が、
「お前、腹減ってないか?」
聞かれたが、
「知らない人にモノもらったらダメだって、お母さんが」
「おお、いい母親だな」
親切を断られたのに笑顔で、しかもウサギをゴミに出した母親を褒めてくれて、嬉しかった。
「帰るね、ばいばい!」
「おー」
大人じゃない、と言い、子供にしては身体が大きい人に手を振って、家へ向かって走った。
とても、母親の顔が見たかったのを覚えている。
でも、今日のことは話さない、と決めていた。
今でも思う。
スーパーに行くたびに探しても見つからなかったあのチョコバーは、どんな味だったんだろう、と。
月に一回、「この会場」で行っている譲渡会を、自分で差し入れたオニギリを齧りながら、眺めて思う。
すべてを幸せにできていない。
でも、放っておくよりは、いい。
後に続く者もいる。
だからこそ、伝えなくてはいけない、背負いすぎて潰れてしまわないように。
大人な態度で、割り切らないように。
「ま、放っておくより、いいか」ということを。
「ごめんねー。責めてるんじゃないのー。感謝してるのよー」
でも、と続ける。
「猫に幸せになってほしいのかー、自分が納得したいだけなのか、よーく考えてみてー」
「くそっ、暗い中じゃ描けねー。忘れちまう。いい方法ないのか」
「あれ? これ写真みたいに見えるけど、スケッチ? オジサンが描いたんですか?」
木の根元の陽だまりで、寝転んだ猫に手を伸ばす少女のスケッチ画を見て、アニキに聞いた。
「はい。写真を撮るようになる直前の作品ですね」
--------------------------------------------------------------------
番外編の解説(作者の気まぐれ自己満足と忘備録的な)
いかにも番外編な、こいつ誰だよ、なお話、第伍弾。
「写真」は、登場人物の「過去・出会い」に焦点を当てた番外編で(以下略)
(写真?どこに?)
本編でのブレない大人、猫オバチャンが、いつどうやって「大人」を認めたのか、的なお話です。
また、「オジサン会の写真」での絵から写真に転向した理由も明かされます。
あと、猫オバチャン誕生秘話でもあります(そのまんますぎ)。
ちなみに本編の時代でも、彼女は、墓彫りが誰か知らない設定です。
(どうせ実は、って後付け設定で、変わるんでしょ?)
保護猫活動メインのスピンオフも面白いかも、ってガチすぎるか。
(番外編とかスピンオフとかばっかだな)
まあ、そもそも続くかどうかがわからないのが、番外編の醍醐味ですよね?
また、機会がありましたら、このお店にお付き合いくださいませ。
(お店どころか、写真すらも出てないだろ?)
(気にしない気にしない)
(人類猫科のパクリだよね?)
(気にしない気にしない)
(いや、パクリは気にしようよ!)
(パクリじゃなくて、インスパイア!)
(そこは気にするのかよ)
まみ夜
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