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とうぼうのたび

スネーク?

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 その数日後、また似たような指名クエストが来た。
 今度は、「巨大な蛇のようなモンスター」退治だ。
 当然、名前はわからない。
 前回のクレームを再度訴え、受けるのを渋ってみせたが、街の英雄として押し付けられ、断ることはできなかった。

 転送石を乗り継ぐこと二回、ようやく指示された場所に着いた。
 ここは草原で、少し先に森がある。
 心配していたガイドカーソルはキチン、と現れ、森を指し示していた。
 また、似たような敵が出ることを想定して、カムイはライフル装備で、ランチャーは「羊の一刺」でつくった広範囲弾。
 使ってしまえば最後、ライフルは使用不能になるので、彼女は拳銃タイプの魔力銃しか使えなくなってしまう俺たちの本当に、最後の切り札だ。
 前方の森から、木を折るような音が響いた。
 ガイドカーソルが黄色になり、あっという間に赤くなった。
 戦車とは違い、素早いのか?
 強い風が吹き、草原の草が巨大な何かが潜んでいるように波打ち、それが巨体を現した。

 赤いガイドカーソルの示す先の上空に姿を現したのは、ヘリコプターだった。
 予想外すぎて、動きが止まる。
 もしかしたら、ヘリコプターが俺みたいに、この世界に来たところに偶然、出くわしたのかな、と思った。
 そういえば、空を飛ぶ魔法はないから、この世界でモンスター以外で飛ぶのは始めて見たな。
 いや、アレもモンスターなのか、などと現実逃避していたら、コブラの名とバーが、ヘリの上に出た。
 昔、プラモデルでつくった攻撃ヘリのコブラ?
 諦めきれずに逃避している耳に轟音が響き、ヘリとの間の地面が炸裂し、俺たちは吹き飛ばされて転がった。

「なにあれ!?」
 ミチルが叫んでいるが、俺も聞きたいし、炸裂音で耳がやられて、よく聞こえない。
 カムイが、ライフルを撃ったが、素早くて中っているようには見えない。
 一度、引くか?
 それより、射線から逃げない、と次は中る。
 俺は、二人の手を引き、走り出した。
 数秒前に俺たちが居た場所へ着弾があり、俺たちは吹き飛ばされた。
 巻き上がる土埃に隠れて、逃げ出す前に、どの程度ダメージを与えられるか調べるために、ミチルにファイアー・アローを撃たせた。
 ヘリは、急上昇し、アローの追撃から逃れた。
 アロー程度を避ける、ということは、ヘリ並みの装甲なのだろう。
 それなら、まだ倒せる。
 機首下の回転銃座がこちらを向き、今度は榴弾ではなく、ガトリング砲が、土埃を上げて、着弾位置が俺たちに近づいてくる。
「二人ともバラけろ!カムイ、ライフル使わずに、ヘイトを稼いでくれ!」
 ライフルを背に担ぎ、拳銃タイプの魔力銃を撃つカムイへ向こう、と銃座が回る。
「ミチル、アロー!」
 追尾するファイアー・アローを嫌って、急上昇するコブラ。
 しかし、それではヘリからも攻撃できない。
 少し離れた場所まで飛び、低空飛行で接近してきた。
 そのままガトリング乱射で、押し切るつもりだろう。
「ヴォーパルバニー作戦!」
 俺が叫ぶ、と二人は頷いた。
 拳銃を仕舞い、ライフルを構えるカムイ。
「ミチル、スタート!」
「ファイアー・ストーム!」
 ヘリ進行方向の右斜め前に、火柱が上がる。
 そこに突っ込みかけたヘリが、左へ若干、方向を変え、そこに、
「落ちろ!」
 カムイのライフルにつけたランチャーが、切り札の範囲攻撃を仕掛けた。
 無数の弾丸が、噛み付く瞬間に、コブラは逆に右へ横滑りして、ストームの炎をかすめつつ辛うじて、その牙から逃れた。
 ガトリング砲が火を吹く、というより、炎に包まれた。
 俺が、伸ばした絆の鎖で振るった龍鱗の剣が、下からヘリの機首を縦に断ち切っていたのだ。
「くるのがわかってれば、狙うのは簡単、だろ?」
 素早いヴォーパルバニーを仕留めた方法だ。
 切り札であるミチルとカムイの範囲攻撃に逃げ道をつくって囮にして、格好良く呟いた俺に、地面に墜落したヘリが、勢いそのままに、火達磨で転がってきた。
「ひいいいいいい!」

 戦闘後、二人にこの世界にヘリコプターが存在するか聞いたが、当然のことながら、知らなかった。
 ギルドに、苦情を言ったが、「巨大な蛇のようなモンスター」退治クエストは達成になっていたものの、それがどんなモンスターだったかを裏付けるドロップアイテムもなく、証明のしようがなかった。
 そう、あれだけ苦労したのに、ドロップアイテムは無しだ。
 ものすごい攻撃力の弾丸とかが、手にはいるか、と楽しみにした、というのに。
 今までなら、キツいクエストだったな、と苦笑できたかもしれないが、もう疑うどころではなくなった俺は、全く笑えなかった。
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