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一戦
現実世界
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クエスチョンマークを頭の周囲に回転させながら登校して、退屈な授業を受ける。
それなりの進学校で、授業を退屈と言うのも贅沢だとわかっている。
このまま、大学、会社へといって、使命感もなく、生活費のために仕事をするのだろうか。
ぼんやりと考えながらも、手は板書を続けている。
真っ赤な水面が脳裏に浮かび、手が止まる。
そのまま左手首を見るが、やはり傷はない。
よくよく考えてみれば、自殺をする理由が思いあたらない。
夢と考えるしかないのだろうか。
>起きてくださーい!
頭の中で、少女の声が響く。
>自殺の報いに、世界を救いましょう!
ガバっと起き上がると、自室のベッドの中。
勉強机の時計を見ると、午前三時。
さっきの声は夢?
自殺の夢といい・・・
「あれ?」
部屋の照明を全て消して寝るタイプだ。
カーテンも閉めている。
それなのに、離れた時計が見えていた。
いや、時計だけでなく、部屋全体が見えている。
灯りがついているのと違い、まるで暗視カメラの映像のようだ。
「なんだ?文字?」
視界の右上に、文字が見えた。
>起きてくださーい!
>自殺の報いに、世界を救いましょう!
「自殺の報い?」
赤い水面のフラッシュバック。
>そうでーす!
頭の中で少女の声が響き、視界の文字が増える。
なぜか浮かんだ言葉は「寝起きドッキリ」で、部屋に仕込まれているだろうカメラを探す。
>顔見えた方が理解しやすいかな?
「うわっ」
少女の声と共に、少女の顔が、どアップで視界に現れた。
青色のショートカットの髪で、ちょっと釣り目がちだが、美人だ。
でも青い髪?
思春期男子の眼力は、一瞬でそこまで観察し、視線を下に下げる。
しかし、胸元は見えず、下がった視線の先に、同じアングルのままの少女の顔が変わらずあった。
>ちょっと近いかな?
少女の声と共に、少女の顔が、縮んで全身像となった。
白地に青の飾りのついたワンピース、アニメのコスプレか。
まるで、視界というディスプレイに投影された画像のようだ。
真っ暗闇で見えるのも、こいつのせい?
「だれ?」
>オペレーターでーす
何?の質問の方が正しいのかもしれないが、答はあった。
「オペ、」
>オペレーターは、ジェネラル世界の解説などを行う役目を担っていまーす
くい気味に説明がかぶせられる。
「ジェ、」
>ジェネラル世界は、自殺した罪人の償罪の場でーす
「自さ、」
>自殺されましたよね?
くい気味の質問に、咄嗟には答えられなかった。
「自殺したの?やっぱり」
質問に質問で返してしまう。
>昨夜の一時十四分に手首を切り、同日一時二十一分にショック症状に
>同日一時四十三分に死亡しました
少女、いやオペレーターの声と共に、視界に文字が増えていく。
まるで、ゲーム画面のログのようだ。
やはり自殺したんだ。
でも、なんで生きている?
>神様は自殺を許しませーん
>その罪を償うため、世界を救うため、世界の敵と戦ってくださーい
>戦い続ける間は、生きていられまーす
ついに質問する前に答えられ、更に聞かれた。
>世界を救いますか?
少女の声と共に、視界に[YES][NO]の文字が浮かび上がった。
[NO]を選べば自殺の結果である死体になる、とオペレーターに言われ、僕は[YES]を選んだ。
すると、目の前に水でできたように表面が揺れる鏡が現れた。
覗き込むと、どこかの町が鏡像で見え、鏡に触れると、世界の敵のいる場所、ジェネラル世界へ送られるらしい。
そこは現実世界ではなく、鏡写しの世界で、世界の敵と仲間しかない。
建物を壊しても、現実世界には影響がない。
世界の敵は、よくあるモンスターの姿をしていて、仲間と倒すまで戻ってこられない。
仲間は、僕と同じように自殺し、その罪を贖っている人たちで、ジェネラルと呼ばれている。
ジェネラルは、鏡像世界の中では、肉体が強化されるらしい。
自殺の実感も罪の意識もない僕は、少しワクワクして、水鏡に触れる。
「冷たっ」
骨まで染みる冷たさ、水面のように揺れる鏡。
「うわっ」
手をつかまれたように、強く引かれ、水鏡に吸い込まれた。
鏡にぶつかる寸前、鏡像の僕が笑ったように見えた。
それなりの進学校で、授業を退屈と言うのも贅沢だとわかっている。
このまま、大学、会社へといって、使命感もなく、生活費のために仕事をするのだろうか。
ぼんやりと考えながらも、手は板書を続けている。
真っ赤な水面が脳裏に浮かび、手が止まる。
そのまま左手首を見るが、やはり傷はない。
よくよく考えてみれば、自殺をする理由が思いあたらない。
夢と考えるしかないのだろうか。
>起きてくださーい!
頭の中で、少女の声が響く。
>自殺の報いに、世界を救いましょう!
ガバっと起き上がると、自室のベッドの中。
勉強机の時計を見ると、午前三時。
さっきの声は夢?
自殺の夢といい・・・
「あれ?」
部屋の照明を全て消して寝るタイプだ。
カーテンも閉めている。
それなのに、離れた時計が見えていた。
いや、時計だけでなく、部屋全体が見えている。
灯りがついているのと違い、まるで暗視カメラの映像のようだ。
「なんだ?文字?」
視界の右上に、文字が見えた。
>起きてくださーい!
>自殺の報いに、世界を救いましょう!
「自殺の報い?」
赤い水面のフラッシュバック。
>そうでーす!
頭の中で少女の声が響き、視界の文字が増える。
なぜか浮かんだ言葉は「寝起きドッキリ」で、部屋に仕込まれているだろうカメラを探す。
>顔見えた方が理解しやすいかな?
「うわっ」
少女の声と共に、少女の顔が、どアップで視界に現れた。
青色のショートカットの髪で、ちょっと釣り目がちだが、美人だ。
でも青い髪?
思春期男子の眼力は、一瞬でそこまで観察し、視線を下に下げる。
しかし、胸元は見えず、下がった視線の先に、同じアングルのままの少女の顔が変わらずあった。
>ちょっと近いかな?
少女の声と共に、少女の顔が、縮んで全身像となった。
白地に青の飾りのついたワンピース、アニメのコスプレか。
まるで、視界というディスプレイに投影された画像のようだ。
真っ暗闇で見えるのも、こいつのせい?
「だれ?」
>オペレーターでーす
何?の質問の方が正しいのかもしれないが、答はあった。
「オペ、」
>オペレーターは、ジェネラル世界の解説などを行う役目を担っていまーす
くい気味に説明がかぶせられる。
「ジェ、」
>ジェネラル世界は、自殺した罪人の償罪の場でーす
「自さ、」
>自殺されましたよね?
くい気味の質問に、咄嗟には答えられなかった。
「自殺したの?やっぱり」
質問に質問で返してしまう。
>昨夜の一時十四分に手首を切り、同日一時二十一分にショック症状に
>同日一時四十三分に死亡しました
少女、いやオペレーターの声と共に、視界に文字が増えていく。
まるで、ゲーム画面のログのようだ。
やはり自殺したんだ。
でも、なんで生きている?
>神様は自殺を許しませーん
>その罪を償うため、世界を救うため、世界の敵と戦ってくださーい
>戦い続ける間は、生きていられまーす
ついに質問する前に答えられ、更に聞かれた。
>世界を救いますか?
少女の声と共に、視界に[YES][NO]の文字が浮かび上がった。
[NO]を選べば自殺の結果である死体になる、とオペレーターに言われ、僕は[YES]を選んだ。
すると、目の前に水でできたように表面が揺れる鏡が現れた。
覗き込むと、どこかの町が鏡像で見え、鏡に触れると、世界の敵のいる場所、ジェネラル世界へ送られるらしい。
そこは現実世界ではなく、鏡写しの世界で、世界の敵と仲間しかない。
建物を壊しても、現実世界には影響がない。
世界の敵は、よくあるモンスターの姿をしていて、仲間と倒すまで戻ってこられない。
仲間は、僕と同じように自殺し、その罪を贖っている人たちで、ジェネラルと呼ばれている。
ジェネラルは、鏡像世界の中では、肉体が強化されるらしい。
自殺の実感も罪の意識もない僕は、少しワクワクして、水鏡に触れる。
「冷たっ」
骨まで染みる冷たさ、水面のように揺れる鏡。
「うわっ」
手をつかまれたように、強く引かれ、水鏡に吸い込まれた。
鏡にぶつかる寸前、鏡像の僕が笑ったように見えた。
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