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魔王国滅亡編
名づけました
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目が覚めたら、朝で、空が見えた。
跳ね起きると、前世でいう体育座りで朝日を眺めていたナギコが、こちらを向いた。
俺が口を開く前に、
「みんな無事」
言われてみれば、倒れていたシランとライガの姿がない。
家族は?
パスがつながり、全員の居場所がわかる。
どうやら、ワー・ウルフ兄妹の小屋にいるようだ。
ナギコも正気そうで、『白い部屋の管理者』の干渉は、消えたようだ。
ほっと息をつくが、ではなんで俺は、牧草地に転がされたまま?
「私が、お願いしたの」
まるでパスがつながっているかのように、って、つながっている。
「ナギコって『名づけ』たのは、あなたでしょうが」
呆れたように、言われてしまった。
どうやら、ナギコは、あのとき『白い部屋の管理者』に従わされ、その知識を一部共有したようだ。
「口からは言葉だだ洩れで、頭にもいろいろグチャグチャ入ってきて、もう大変。やらかしそうだったから、逃げた」
特に強く伝わったのが、『魔王には、喰い合ってもらわないと、予定外です。困りました』。
どうやら、なぜか『魔王は一人だけ』でないといけないらしい。
そのために、「対立」せず、助け合ってしまった俺たちに干渉してきたようだ。
「野蛮で乱暴で粗野で、戦争大好きなはずなのに、なんで?って非難された」
結局、魔王を殺さずに『名づけ』たことは、正解だったのだろうか。
確かにナギコの中の転生特典『魔物を従わせる』は失われ、俺へと移動していた。
これが、『魔王には、喰い合ってもらわないと』なのだろうか。
ただ、俺にとりあえず新たな転生特典を使える様子はない。
俺の不安定な魔素と関係があるのだろうか。
「それで、なんで、私を『名づけ』ようと思ったわけ?何がヒントだったの?」
推理の披露を探偵に期待するような表情から、俺は目を逸らした。
「・・・なに、その反応?」
俺は、言いたくなかったが、重い口を開いた。
「ナギコは『魔物を従わせる』に負けたけど、俺は勝ったから、『名づけ』でも勝てるんじゃないかと思った」
「・・・それで?」
「本名は知らないが、魔王を別名で『名づけ』れば、存在を上書きして、魔王ではなくせるんじゃないかな、って」
結果として、見事に「名づけ」て、転生特典を失って魔王ではなくなったわけだ。
「・・・仮説の上に仮説積んで、ほとんど勘じゃない?」
いやいや、勘というのは、様々なデータからの推測の、更に上をいく、
「うるさい黙れ」
パスが通じてるのが、不便ですよ、とっても。
「でも、ナギコと呼ばれるようになってからの笑顔を知っているから、魔王だった本名より、ナギコを選ぶと思った」
彼女は、目を見開き、細め、少し遠くを見つめると、
「・・・まあ、いっか」
立ち上がって、ワンピースの尻を払った。
「ほら、帰るよ、魔王」
彼女に魔王と呼ばれて、困惑する俺に、
「だって、私はもう魔王じゃなくなって、正真正銘ただのナギコだしぃ」
元魔王のただのナギコは、手を伸ばしてきた。
「でも、ありがとう。もう一人の魔王さん」
いい笑顔のナギコの手につかまり、
「どういたしまして。ナギコ」
カッコよく答え立ち上がろうとした俺だったが、魔王ではなくなって『人』並みのナギコが支え切れずに手を離したので、腰を打った。
元魔王改め、ただのナギコは、俺に『名づけ』られたことで、レベルアップが感染していた。
「えー?なにこれ?よっぽど、チートじゃない、これ。極悪人?」
「元魔王に、悪人呼ばわりされるとはな」
「ナギコ様に、もう少し敬意をもって接してください、魔王『様』」
「・・・」
「ライガ、目力で語るな。子供たちが怯えるぞ」
これって結局、まだ魔王が二人なんじゃないか、と思った。
とりあえず、『白い部屋の管理者』の干渉は、今のところはないが。
ちなみに、魔王が『名づけ』られたのだから、前世でいう悪魔っぽく角なり尻尾なりが生えるんじゃないかと、本人はこっそり期待していたらしく、ガッカリしていた。
「どうしたの?ナギコ?」
「シランみたいな角や、先っぽ矢印の尻尾が生えるんじゃないかと期待してたんだ」
「矢印の尻尾?」
「あー。ヤトのケモ耳や、尻尾がうらやましいだけだ」
「そうなの?ヤトは、ハイロウ叔父ちゃんみたいに、耳や尻尾を隠せたら、パパに迷惑かけなかったって思う」
「それでも、ヤトの耳も尻尾もカワイイから、うらやましがったら、ダメか?」
「そっか、カワイイなら、仕方ないなあ」
「ケモ耳も尻尾も、お好みで装飾品をつくりますよ?ナギコ様」
「キラ、その耳と尻尾の動きが、その腹筋と乳以上に、私を不安にさせているぞ」
「シランの尻尾は、切れますよ?」
「ドラゴンの誇りはどうした。トカゲ自慢か、シラン」
「ドラゴンとしての再生力の自慢です」
「あー、それをトカゲっぽいって言うんだ。この村で尻を見たときから俺も思ってた、シラン」
「魔王様二人がかり?」
「私はもう魔王じゃないしぃ」
更に、彼女が『名づけ』ていたシランとライガにも、レベルアップは感染して、俺からのパス通信も通じるようになっていた。
一応、俺は『名づけ』祖父になるのだろうか。
『ライガ、聞こえるか?』
『聞こえてます。感度良好で聞こえすぎです。むしろうるさいです。ああー、この世界には、もう静かな場所はないってことですね?』
前世でいう、車に乗ると人が変わるタイプと同じで、パス通信だと饒舌のようだ。
だが、俺はライガの肉声は、まだ聞いたことがない。
町には、元魔王国民の個人の家が建ちはじめていた。
一人で住む者もいれば、気のあった友人と暮らす者もいた。
仮設住宅は、その役目を終えたら、集会場として使う予定だ。
人手が増えたので、ネット・クロウラーを捕まえてきたり、羊を増やしたりして、冬に備えている。
「羊は増えたが、ヤトが中心になって、世話してくれ。アサガオ、ヒマワリ、ツバキは、ネット・クロウラーの世話を教えてやってくれ」
「はーい」
「はーい!はい!」
「ヤト様、羊の乳しぼりを教えてください」
「え?ヤトが教えるの?キラ叔母ちゃんじゃなくて?」
「ヤトが、羊の世話の一番のベテランだろう?」
「そっか、パパ。うん!」
「お姉さんにも、お仕事わけて、ヤトちゃん」
「お姉ちゃん、重い。邪魔」
「お父さん、妹たちの扱いが、ひどいの。慰めて?」
「妹『たち』ですか?シウン姉様」
「・・・ヨウコちゃんの方が、キツイよ?」
「それは、シウンの立ち振る舞いのせいではないのかい?」
「お兄ちゃん、ウザ」
「シランさん。口ひらくと残念って、言われてます」
「ナギコ様が?もう、困ったものだ」
「いえ、ほとんどの女性が、です」
「それって、この町の住人のほとんどでは?」
ワー・ウルフ兄妹たちが探ったが、街では「魔王は逃げた」的な噂はたっていないようだ。
対魔王戦後の『人』の小競り合いは続いており、更には、神の名でもって『人』を支配しようとするヤヌス教と『人』国の対立も目立つようになっていた。
魔王・黒騎士をヤヌス教が倒したことで、勢いに乗ったのが、孤立の原因のようなので、ヤヌス神徒と戦ったのは、結果として正解だったようだ。
本当は、もっと蹴散らして、神の権威を失墜させる予定だったのだが。
しかし、この実在しないはずの『神』の存在には、今後も気をつけていかないといけない。
町での衣類の供給が追いついたので、ひそかに、街での販売を予定している。
「あの女将さんの服屋」に、女性用下着を数着、卸したのだが、驚くような高値で売れたらしい。
次に訪れたときのキラの扱いは、ものすごく、
「なんだか、詐欺グループか人身売買の罠にかかってるみたいで、怖かったです」
これは、今までも定期的に、大量の服を購入していた信頼関係の下地があったからこそで、前世でいう「損して得取れ」とは、ちょっと違うが良く言ったものだと思う。
この下着の販売で、服屋は、お貴族様とのつながりができたようだ。
このルートは、いつか、利用させてもらおう。
ナギコは、『白い部屋の管理者』に憑依されたときに共有した知識を混乱した記憶から、ぽつぽつと思い出していた。
「けんぞくは、魔素のぷーるって、意味わかる?」
けんぞくは、『名づけ』た眷族だろう。
魔素のプールは、『緊急用魔素プール』と同じで、魔素の貯蔵庫という意味だろうか。
つまり、『名づけ』た眷族などで、魔素を溜めることが、魔王の存在意義とか、目的のひとつなのだろうか。
確かに、俺のレベルアップは、魔素を殺した魔物から吸収する。
『名づけ』た眷族にも、レベルアップが感染して、魔素を溜めていく。
ナギコの、まあ今は俺へ移動しているが、『魔物を従わせる』は、魔素を持った魔物を仲間に増やし、魔王がその魔素を共有できるチート能力だった。
どちらも、結果的には眷族を増やし、魔素が増えていく。
いやいや、俺がレベルアップを転生特典に選んだのも、ナギコがモンスターテイマー好きだったのも、偶然のはず、だ。
そもそも、俺とナギコが、異世界転生に選ばれた、そしてその原因の事故も、偶然なのか?
『あなたは、猫を助けようとして、トラックにひかれて亡くなりました。このままだと、あなたの命が歪みとして、世界を蝕んでしまうので、異世界に転生していただきます。転生特典は、何がよろしいですか?』
転生先で、即行で死んだりすると『命』が消費されないで困るので、生き残るための術が、『転生特典』だ。
その『転生特典』であるチート能力持ちが、この世界の『魔王』。
なのに、『魔王には、喰い合ってもらわないと、予定外です。困りました』?
生き残るために与えられたチート能力者同士で喰い合わないと困る。
矛盾している。
「喰い合う」も、ナギコを『名づけ』て、チート能力を奪ったことが、本当の正解だったのだろうか。
というか、『白い部屋の管理者』に会ったら、「マニュアルよこせ」とクレームを言ってやるのを忘れていた。
あの様子では、言ったらいったで、前世でいう百科事典レベルの分量のマニュアルを平然と渡されそうで怖いが。
跳ね起きると、前世でいう体育座りで朝日を眺めていたナギコが、こちらを向いた。
俺が口を開く前に、
「みんな無事」
言われてみれば、倒れていたシランとライガの姿がない。
家族は?
パスがつながり、全員の居場所がわかる。
どうやら、ワー・ウルフ兄妹の小屋にいるようだ。
ナギコも正気そうで、『白い部屋の管理者』の干渉は、消えたようだ。
ほっと息をつくが、ではなんで俺は、牧草地に転がされたまま?
「私が、お願いしたの」
まるでパスがつながっているかのように、って、つながっている。
「ナギコって『名づけ』たのは、あなたでしょうが」
呆れたように、言われてしまった。
どうやら、ナギコは、あのとき『白い部屋の管理者』に従わされ、その知識を一部共有したようだ。
「口からは言葉だだ洩れで、頭にもいろいろグチャグチャ入ってきて、もう大変。やらかしそうだったから、逃げた」
特に強く伝わったのが、『魔王には、喰い合ってもらわないと、予定外です。困りました』。
どうやら、なぜか『魔王は一人だけ』でないといけないらしい。
そのために、「対立」せず、助け合ってしまった俺たちに干渉してきたようだ。
「野蛮で乱暴で粗野で、戦争大好きなはずなのに、なんで?って非難された」
結局、魔王を殺さずに『名づけ』たことは、正解だったのだろうか。
確かにナギコの中の転生特典『魔物を従わせる』は失われ、俺へと移動していた。
これが、『魔王には、喰い合ってもらわないと』なのだろうか。
ただ、俺にとりあえず新たな転生特典を使える様子はない。
俺の不安定な魔素と関係があるのだろうか。
「それで、なんで、私を『名づけ』ようと思ったわけ?何がヒントだったの?」
推理の披露を探偵に期待するような表情から、俺は目を逸らした。
「・・・なに、その反応?」
俺は、言いたくなかったが、重い口を開いた。
「ナギコは『魔物を従わせる』に負けたけど、俺は勝ったから、『名づけ』でも勝てるんじゃないかと思った」
「・・・それで?」
「本名は知らないが、魔王を別名で『名づけ』れば、存在を上書きして、魔王ではなくせるんじゃないかな、って」
結果として、見事に「名づけ」て、転生特典を失って魔王ではなくなったわけだ。
「・・・仮説の上に仮説積んで、ほとんど勘じゃない?」
いやいや、勘というのは、様々なデータからの推測の、更に上をいく、
「うるさい黙れ」
パスが通じてるのが、不便ですよ、とっても。
「でも、ナギコと呼ばれるようになってからの笑顔を知っているから、魔王だった本名より、ナギコを選ぶと思った」
彼女は、目を見開き、細め、少し遠くを見つめると、
「・・・まあ、いっか」
立ち上がって、ワンピースの尻を払った。
「ほら、帰るよ、魔王」
彼女に魔王と呼ばれて、困惑する俺に、
「だって、私はもう魔王じゃなくなって、正真正銘ただのナギコだしぃ」
元魔王のただのナギコは、手を伸ばしてきた。
「でも、ありがとう。もう一人の魔王さん」
いい笑顔のナギコの手につかまり、
「どういたしまして。ナギコ」
カッコよく答え立ち上がろうとした俺だったが、魔王ではなくなって『人』並みのナギコが支え切れずに手を離したので、腰を打った。
元魔王改め、ただのナギコは、俺に『名づけ』られたことで、レベルアップが感染していた。
「えー?なにこれ?よっぽど、チートじゃない、これ。極悪人?」
「元魔王に、悪人呼ばわりされるとはな」
「ナギコ様に、もう少し敬意をもって接してください、魔王『様』」
「・・・」
「ライガ、目力で語るな。子供たちが怯えるぞ」
これって結局、まだ魔王が二人なんじゃないか、と思った。
とりあえず、『白い部屋の管理者』の干渉は、今のところはないが。
ちなみに、魔王が『名づけ』られたのだから、前世でいう悪魔っぽく角なり尻尾なりが生えるんじゃないかと、本人はこっそり期待していたらしく、ガッカリしていた。
「どうしたの?ナギコ?」
「シランみたいな角や、先っぽ矢印の尻尾が生えるんじゃないかと期待してたんだ」
「矢印の尻尾?」
「あー。ヤトのケモ耳や、尻尾がうらやましいだけだ」
「そうなの?ヤトは、ハイロウ叔父ちゃんみたいに、耳や尻尾を隠せたら、パパに迷惑かけなかったって思う」
「それでも、ヤトの耳も尻尾もカワイイから、うらやましがったら、ダメか?」
「そっか、カワイイなら、仕方ないなあ」
「ケモ耳も尻尾も、お好みで装飾品をつくりますよ?ナギコ様」
「キラ、その耳と尻尾の動きが、その腹筋と乳以上に、私を不安にさせているぞ」
「シランの尻尾は、切れますよ?」
「ドラゴンの誇りはどうした。トカゲ自慢か、シラン」
「ドラゴンとしての再生力の自慢です」
「あー、それをトカゲっぽいって言うんだ。この村で尻を見たときから俺も思ってた、シラン」
「魔王様二人がかり?」
「私はもう魔王じゃないしぃ」
更に、彼女が『名づけ』ていたシランとライガにも、レベルアップは感染して、俺からのパス通信も通じるようになっていた。
一応、俺は『名づけ』祖父になるのだろうか。
『ライガ、聞こえるか?』
『聞こえてます。感度良好で聞こえすぎです。むしろうるさいです。ああー、この世界には、もう静かな場所はないってことですね?』
前世でいう、車に乗ると人が変わるタイプと同じで、パス通信だと饒舌のようだ。
だが、俺はライガの肉声は、まだ聞いたことがない。
町には、元魔王国民の個人の家が建ちはじめていた。
一人で住む者もいれば、気のあった友人と暮らす者もいた。
仮設住宅は、その役目を終えたら、集会場として使う予定だ。
人手が増えたので、ネット・クロウラーを捕まえてきたり、羊を増やしたりして、冬に備えている。
「羊は増えたが、ヤトが中心になって、世話してくれ。アサガオ、ヒマワリ、ツバキは、ネット・クロウラーの世話を教えてやってくれ」
「はーい」
「はーい!はい!」
「ヤト様、羊の乳しぼりを教えてください」
「え?ヤトが教えるの?キラ叔母ちゃんじゃなくて?」
「ヤトが、羊の世話の一番のベテランだろう?」
「そっか、パパ。うん!」
「お姉さんにも、お仕事わけて、ヤトちゃん」
「お姉ちゃん、重い。邪魔」
「お父さん、妹たちの扱いが、ひどいの。慰めて?」
「妹『たち』ですか?シウン姉様」
「・・・ヨウコちゃんの方が、キツイよ?」
「それは、シウンの立ち振る舞いのせいではないのかい?」
「お兄ちゃん、ウザ」
「シランさん。口ひらくと残念って、言われてます」
「ナギコ様が?もう、困ったものだ」
「いえ、ほとんどの女性が、です」
「それって、この町の住人のほとんどでは?」
ワー・ウルフ兄妹たちが探ったが、街では「魔王は逃げた」的な噂はたっていないようだ。
対魔王戦後の『人』の小競り合いは続いており、更には、神の名でもって『人』を支配しようとするヤヌス教と『人』国の対立も目立つようになっていた。
魔王・黒騎士をヤヌス教が倒したことで、勢いに乗ったのが、孤立の原因のようなので、ヤヌス神徒と戦ったのは、結果として正解だったようだ。
本当は、もっと蹴散らして、神の権威を失墜させる予定だったのだが。
しかし、この実在しないはずの『神』の存在には、今後も気をつけていかないといけない。
町での衣類の供給が追いついたので、ひそかに、街での販売を予定している。
「あの女将さんの服屋」に、女性用下着を数着、卸したのだが、驚くような高値で売れたらしい。
次に訪れたときのキラの扱いは、ものすごく、
「なんだか、詐欺グループか人身売買の罠にかかってるみたいで、怖かったです」
これは、今までも定期的に、大量の服を購入していた信頼関係の下地があったからこそで、前世でいう「損して得取れ」とは、ちょっと違うが良く言ったものだと思う。
この下着の販売で、服屋は、お貴族様とのつながりができたようだ。
このルートは、いつか、利用させてもらおう。
ナギコは、『白い部屋の管理者』に憑依されたときに共有した知識を混乱した記憶から、ぽつぽつと思い出していた。
「けんぞくは、魔素のぷーるって、意味わかる?」
けんぞくは、『名づけ』た眷族だろう。
魔素のプールは、『緊急用魔素プール』と同じで、魔素の貯蔵庫という意味だろうか。
つまり、『名づけ』た眷族などで、魔素を溜めることが、魔王の存在意義とか、目的のひとつなのだろうか。
確かに、俺のレベルアップは、魔素を殺した魔物から吸収する。
『名づけ』た眷族にも、レベルアップが感染して、魔素を溜めていく。
ナギコの、まあ今は俺へ移動しているが、『魔物を従わせる』は、魔素を持った魔物を仲間に増やし、魔王がその魔素を共有できるチート能力だった。
どちらも、結果的には眷族を増やし、魔素が増えていく。
いやいや、俺がレベルアップを転生特典に選んだのも、ナギコがモンスターテイマー好きだったのも、偶然のはず、だ。
そもそも、俺とナギコが、異世界転生に選ばれた、そしてその原因の事故も、偶然なのか?
『あなたは、猫を助けようとして、トラックにひかれて亡くなりました。このままだと、あなたの命が歪みとして、世界を蝕んでしまうので、異世界に転生していただきます。転生特典は、何がよろしいですか?』
転生先で、即行で死んだりすると『命』が消費されないで困るので、生き残るための術が、『転生特典』だ。
その『転生特典』であるチート能力持ちが、この世界の『魔王』。
なのに、『魔王には、喰い合ってもらわないと、予定外です。困りました』?
生き残るために与えられたチート能力者同士で喰い合わないと困る。
矛盾している。
「喰い合う」も、ナギコを『名づけ』て、チート能力を奪ったことが、本当の正解だったのだろうか。
というか、『白い部屋の管理者』に会ったら、「マニュアルよこせ」とクレームを言ってやるのを忘れていた。
あの様子では、言ったらいったで、前世でいう百科事典レベルの分量のマニュアルを平然と渡されそうで怖いが。
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