レベルアップがない異世界で転生特典のレベルアップしたら魔王として追われケモ耳娘たちとひっそりスローライフ。けど国を興すか悩み中

まみ夜

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魔王国滅亡編

甘いものでした

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 先日、倉庫を改造し終えて、アラクネー親子の家として完成したリビングで、俺たちは夕食を食べていた。
 妹たちと話して、その場では少し元気になったシウンだったが、陽が落ちて暗くなるにつれ、また以前のような寂しがり屋がぶり返してしまって、ほとんど何も食べずに、俺にくっついていた。

 子供たちは、敏感に感じ取って、誰も口をきかずに食べている。
 ヤトとヨウコ、サクラが、なんとか明るくしようと、話すが、俺も「魔王」のことで考えに沈みがちで、重い雰囲気のままだった。

 まだ、食事の途中なのに、ヤトが立ち上がって、
「ヨウコ、アネ芋アイス、食べよう!」
「まだ、料理が残ってますよ、ヤト姉様」
「ヤト様。デザートなら、最後にいたしましょう?」
「違う違う!」
 ヤトは、首を振った。
「こんなときだから、甘い物。食べよう!」

 甘い物、と聞いただけで、年少組が、笑顔になった。
 ヨウコも、それに気がついた。
「アネ芋アイスに、ハチミツをかけましょう」
 ハチミツと聞いて、年中組が、笑顔になった。
「ヨウコ様。クリームにハチミツを入れてかけたら、どうでしょう?」
「サクラさん、それ素敵です」
 ハチミツ入りのクリーム、と聞いて、年長組が、笑顔になった。
「ヤト、冷蔵庫に、アネ芋アイスとりにいってくる!」
「あ、ヤト姉様。クリームも、って聞いてないですね」
「カエデがとってきます」
「カエデさん、お願いします。ヤト姉様が、アイスを大量に持ってこようとするでしょうから、減らしてください」
「え?アイス減らしちゃうの?」
「アヤメさん、ヤト姉様の食いしん坊ぶりを、よく知っているでしょう?」
「うん、知ってるー!」
「いっぱい、いっぱいアイスもってくるって、スミレ思う!」
「ラン、クリームにハチミツを入れる用意をしておきましょう」
「はい、ママ」

 たった一皿の甘い物で、子供たちが笑顔になった。
 そんな様子を、シウンが、少しだけ顔を上げて、見ていた。
 シウンの前には、皿を置くと、食べろというプレッシャーになるから、とアイスは用意されてはいない。
「シウン、一口だけでも、食べてみるか?」
「・・・うん」
「じゃあ、ヤトのを一口あげる」
 驚いたように、食いしん坊の妹を見て、シウンは、のろのろと身体を起こした。
「お姉ちゃん、あーん」
「・・・あーん」
「おいしい?甘い?」
「ヤト姉様、そんなに聞いたら、シウン姉様が、味わえませんよ」
 シウンは、もぐもぐごくんと飲み込んで、
「おいしいよ」
「アヤメのもあげる!」
「スミレも」
「ユリのも、あーん」
 シウンは、困ったように俺を見たので、頷いてやった。
 彼女は立ち上がると、
「あーん」
 口をあけて、子供たちを順番にまわった。
 その夜は、娘三人はアラクネー親子の家に泊まり、子供たちと雑魚寝したそうだ。
 ただ、シウンがアヤメとスミレにお願いされて、二人を抱いて寝たので、いつもの抱き枕役のヨウコが、ちょっとだけ拗ねたらしい。
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