20 / 67
魔王国滅亡編
特性わかりました
しおりを挟む
シウンの魔素の特性は、中々わからなかった。
てっきり、ドラゴンが吐く炎の類かと思っていたのだけど、そもそも炎を吐いたことがないそうだ。
「え?炎?どらごんぶれす?口、火傷しちゃわないのかな?」
まあ、卵から産まれて一年なのだから、そんなものだろう。
ゲームの分類上では、ドラゴン・パピーなのだろうから。
慌てる必要はない。
戦闘のときは、とりあえず素手。
細腕でも元ドラゴン、ハイロウより力があるので、石を投げたりもしていた。
そんな魔物狩りをしていたある日、ジャベリン・エイプの群にまとわりつかれた。
前世でいうオラウータンのような外見で、木の上から、枝を槍のように投げてくる。
遠くからチマチマ攻撃してくるので、脅威ではないが、ウザい。
キラが矢で撃つが結構、耐久力があって、一撃では倒せない。
長い毛は燃えやすいのだが、ヨウコの炎を中てるには、絶妙に距離をとっていて、木に隠れていることもあって、難しかった。
「火矢があれば、都合よかったな」
「そういう備えも、今後は必要ですな。主殿」
ジャベリン・エイプの毛は、火矢の材料に使えそうだが、それを倒すために火矢がほしいという、卵か鶏かだ。
「火矢。そうか」
シウンが、俺とハイロウの会話に納得がいったようで、
「キラ叔母さん、矢を借りるね」
シウンは、キラの矢筒から一本抜き、それを手に、ヨウコが脇に浮かばせて、威嚇しながらジャベリン・エイプに狙いを定めている火球に近づいた。
「ヨウコちゃん、火を借りるね」
言って、火球に矢を突っ込んだ。
そんなことをしても、矢が燃えるだけで、火矢にはならない。
シウンにも、俺と同じ一般常識が刷り込まれているから、わかっているはずだが。
しかし、矢に炎が吸い込まれた。
「叔母さん、これ使って」
「え?はい」
彼女の特性「風」でコントロールされた矢が、ジャベリン・エイプに中り、その瞬間に燃え上がった。
「お姉ちゃん、すごい!」
「シウン姉様、どうやったのですか?」
「え、できる気がして」
みなに注目されて、シウンは恥ずかしそうだった。
シウンの特性は、物に誰かの魔素の特性を『付与』することだった。
付与したい物を持ち、誰かに触れると、その者が持つ魔素の特性を付与できる。
例えば、木の棒を持って、ヤトに触ると、「切断」が付与されて、斬れる棒に強化された。
「この棍棒、斬れる棍棒だよ」
「理屈はわかっても、頭が混乱する光景ですな」
何度かやると覚えるのか、特性の持ち主に触れなくても、『付与』できるようになった。
「あ、もうヤトちゃんに触らなくても、付与できるみたい」
「なあんだ」
「・・・ぎゅー!」
「お姉ちゃん、重い!」
「嫌だった?」
「ううん、すきー」
『付与』された物は、俺たちから漏れているらしい魔素を勝手に吸収して、特性を維持しているようだ。
つまり一度、「斬れる棒」になったら、そのままだった。
ただし、シウンが付与を除去することができたので、不要な危険物を放置せずにすんだ。
ただ、例えば、石に「火炎」を付与しただけだと、ほんのりとした温かさが維持される程度だ。
「うん、あったかいね」
それが、勝手に吸収した魔素での限界なのだろう。
だが、誰か、その特性の持ち主以外でも、魔素を込めれば、熱々にできた。
「わ!ヤトにも、ヨウコみたいに、お湯沸かせたよ!」
つまり、火を熾さなくても、加熱調理などが可能となる。
いやそれどころか、様々な「魔道具」としかいいようのないものの制作の可能性がある。
更に、この付与を使って、俺たちの特性を検査することができた。
ハイロウの特性を付与した石は、地面を爆発させた。
『爆裂』とでもいう感じだ。
キラの矢に付与したら、攻撃力が対戦車ライフル並みに強化された。
「よしっ!すごいぞ、我が爆裂!」
「魔物、吹き飛んじゃいましたけど」
「普段の狩りには、使えないか」
「兄さまの特性だけあって、使い勝手が悪いですね」
「・・・え?」
落ち込むハイロウは、娘たちに、「爆裂は秘密兵器」と慰められていた。
俺の魔素は、相変わらず安定していないが、とりあえずの検査の結果は、『強靭』のようだった。
服に付与すると、手触りとかは変わらず、簡単には切れなくなった。
「これは、服一枚で、かなり安心できますな」
金属の防具をつけなくても、防刃効果が得られるだけではない。
娘たちが服を破かなくなるのは、お財布にとてもとても優しいのだ。
「え?服、破けないんですか?」
まあ、どうせワー・ウルフ兄妹は「お嬢のために!」とカワイイ服を買ってくるんだろうが。
もちろん、斬れなくても打撲はするので、防具の課題は残る。
それでも安全優先で、すべての衣類を「強靭」化することになったけど、俺の魔素が安定しないせいか、シウンは「慣れ」なくて、俺から離れると、付与できなかった。
「お父さんと離れると、うまく付与できないみたい。ごめんなさい」
「いや、俺の魔素が安定してないからだろう、シウンすまないな」
「じゃあ。おあいこだね、お父さん」
衣類に付与中シウンは、ずっと俺にくっついていた。
「お父さんに手を伸ばして触ってて、腕が疲れたから、背中にもたれていい?」
最近、少しだけ嫉妬深くなってきたヨウコは、本当に「慣れ」ないのか、疑っていた。
「・・・シウン姉様のズルだと思います」
てっきり、ドラゴンが吐く炎の類かと思っていたのだけど、そもそも炎を吐いたことがないそうだ。
「え?炎?どらごんぶれす?口、火傷しちゃわないのかな?」
まあ、卵から産まれて一年なのだから、そんなものだろう。
ゲームの分類上では、ドラゴン・パピーなのだろうから。
慌てる必要はない。
戦闘のときは、とりあえず素手。
細腕でも元ドラゴン、ハイロウより力があるので、石を投げたりもしていた。
そんな魔物狩りをしていたある日、ジャベリン・エイプの群にまとわりつかれた。
前世でいうオラウータンのような外見で、木の上から、枝を槍のように投げてくる。
遠くからチマチマ攻撃してくるので、脅威ではないが、ウザい。
キラが矢で撃つが結構、耐久力があって、一撃では倒せない。
長い毛は燃えやすいのだが、ヨウコの炎を中てるには、絶妙に距離をとっていて、木に隠れていることもあって、難しかった。
「火矢があれば、都合よかったな」
「そういう備えも、今後は必要ですな。主殿」
ジャベリン・エイプの毛は、火矢の材料に使えそうだが、それを倒すために火矢がほしいという、卵か鶏かだ。
「火矢。そうか」
シウンが、俺とハイロウの会話に納得がいったようで、
「キラ叔母さん、矢を借りるね」
シウンは、キラの矢筒から一本抜き、それを手に、ヨウコが脇に浮かばせて、威嚇しながらジャベリン・エイプに狙いを定めている火球に近づいた。
「ヨウコちゃん、火を借りるね」
言って、火球に矢を突っ込んだ。
そんなことをしても、矢が燃えるだけで、火矢にはならない。
シウンにも、俺と同じ一般常識が刷り込まれているから、わかっているはずだが。
しかし、矢に炎が吸い込まれた。
「叔母さん、これ使って」
「え?はい」
彼女の特性「風」でコントロールされた矢が、ジャベリン・エイプに中り、その瞬間に燃え上がった。
「お姉ちゃん、すごい!」
「シウン姉様、どうやったのですか?」
「え、できる気がして」
みなに注目されて、シウンは恥ずかしそうだった。
シウンの特性は、物に誰かの魔素の特性を『付与』することだった。
付与したい物を持ち、誰かに触れると、その者が持つ魔素の特性を付与できる。
例えば、木の棒を持って、ヤトに触ると、「切断」が付与されて、斬れる棒に強化された。
「この棍棒、斬れる棍棒だよ」
「理屈はわかっても、頭が混乱する光景ですな」
何度かやると覚えるのか、特性の持ち主に触れなくても、『付与』できるようになった。
「あ、もうヤトちゃんに触らなくても、付与できるみたい」
「なあんだ」
「・・・ぎゅー!」
「お姉ちゃん、重い!」
「嫌だった?」
「ううん、すきー」
『付与』された物は、俺たちから漏れているらしい魔素を勝手に吸収して、特性を維持しているようだ。
つまり一度、「斬れる棒」になったら、そのままだった。
ただし、シウンが付与を除去することができたので、不要な危険物を放置せずにすんだ。
ただ、例えば、石に「火炎」を付与しただけだと、ほんのりとした温かさが維持される程度だ。
「うん、あったかいね」
それが、勝手に吸収した魔素での限界なのだろう。
だが、誰か、その特性の持ち主以外でも、魔素を込めれば、熱々にできた。
「わ!ヤトにも、ヨウコみたいに、お湯沸かせたよ!」
つまり、火を熾さなくても、加熱調理などが可能となる。
いやそれどころか、様々な「魔道具」としかいいようのないものの制作の可能性がある。
更に、この付与を使って、俺たちの特性を検査することができた。
ハイロウの特性を付与した石は、地面を爆発させた。
『爆裂』とでもいう感じだ。
キラの矢に付与したら、攻撃力が対戦車ライフル並みに強化された。
「よしっ!すごいぞ、我が爆裂!」
「魔物、吹き飛んじゃいましたけど」
「普段の狩りには、使えないか」
「兄さまの特性だけあって、使い勝手が悪いですね」
「・・・え?」
落ち込むハイロウは、娘たちに、「爆裂は秘密兵器」と慰められていた。
俺の魔素は、相変わらず安定していないが、とりあえずの検査の結果は、『強靭』のようだった。
服に付与すると、手触りとかは変わらず、簡単には切れなくなった。
「これは、服一枚で、かなり安心できますな」
金属の防具をつけなくても、防刃効果が得られるだけではない。
娘たちが服を破かなくなるのは、お財布にとてもとても優しいのだ。
「え?服、破けないんですか?」
まあ、どうせワー・ウルフ兄妹は「お嬢のために!」とカワイイ服を買ってくるんだろうが。
もちろん、斬れなくても打撲はするので、防具の課題は残る。
それでも安全優先で、すべての衣類を「強靭」化することになったけど、俺の魔素が安定しないせいか、シウンは「慣れ」なくて、俺から離れると、付与できなかった。
「お父さんと離れると、うまく付与できないみたい。ごめんなさい」
「いや、俺の魔素が安定してないからだろう、シウンすまないな」
「じゃあ。おあいこだね、お父さん」
衣類に付与中シウンは、ずっと俺にくっついていた。
「お父さんに手を伸ばして触ってて、腕が疲れたから、背中にもたれていい?」
最近、少しだけ嫉妬深くなってきたヨウコは、本当に「慣れ」ないのか、疑っていた。
「・・・シウン姉様のズルだと思います」
20
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?
八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ
『壽命 懸(じゅみょう かける)』
しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。
だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。
異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる