レベルアップがない異世界で転生特典のレベルアップしたら魔王として追われケモ耳娘たちとひっそりスローライフ。けど国を興すか悩み中

まみ夜

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魔王国滅亡編

特性わかりました

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 シウンの魔素の特性は、中々わからなかった。
 てっきり、ドラゴンが吐く炎の類かと思っていたのだけど、そもそも炎を吐いたことがないそうだ。
「え?炎?どらごんぶれす?口、火傷しちゃわないのかな?」
 まあ、卵から産まれて一年なのだから、そんなものだろう。
 ゲームの分類上では、ドラゴン・パピーなのだろうから。
 慌てる必要はない。
 戦闘のときは、とりあえず素手。
 細腕でも元ドラゴン、ハイロウより力があるので、石を投げたりもしていた。

 そんな魔物狩りをしていたある日、ジャベリン・エイプの群にまとわりつかれた。
 前世でいうオラウータンのような外見で、木の上から、枝を槍のように投げてくる。
 遠くからチマチマ攻撃してくるので、脅威ではないが、ウザい。
 キラが矢で撃つが結構、耐久力があって、一撃では倒せない。
 長い毛は燃えやすいのだが、ヨウコの炎を中てるには、絶妙に距離をとっていて、木に隠れていることもあって、難しかった。
「火矢があれば、都合よかったな」
「そういう備えも、今後は必要ですな。主殿」
 ジャベリン・エイプの毛は、火矢の材料に使えそうだが、それを倒すために火矢がほしいという、卵か鶏かだ。
「火矢。そうか」
 シウンが、俺とハイロウの会話に納得がいったようで、
「キラ叔母さん、矢を借りるね」
 シウンは、キラの矢筒から一本抜き、それを手に、ヨウコが脇に浮かばせて、威嚇しながらジャベリン・エイプに狙いを定めている火球に近づいた。
「ヨウコちゃん、火を借りるね」
 言って、火球に矢を突っ込んだ。
 そんなことをしても、矢が燃えるだけで、火矢にはならない。
 シウンにも、俺と同じ一般常識が刷り込まれているから、わかっているはずだが。
 しかし、矢に炎が吸い込まれた。
「叔母さん、これ使って」
「え?はい」
 彼女の特性「風」でコントロールされた矢が、ジャベリン・エイプに中り、その瞬間に燃え上がった。
「お姉ちゃん、すごい!」
「シウン姉様、どうやったのですか?」
「え、できる気がして」
 みなに注目されて、シウンは恥ずかしそうだった。

 シウンの特性は、物に誰かの魔素の特性を『付与』することだった。
 付与したい物を持ち、誰かに触れると、その者が持つ魔素の特性を付与できる。
 例えば、木の棒を持って、ヤトに触ると、「切断」が付与されて、斬れる棒に強化された。
「この棍棒、斬れる棍棒だよ」
「理屈はわかっても、頭が混乱する光景ですな」
 何度かやると覚えるのか、特性の持ち主に触れなくても、『付与』できるようになった。
「あ、もうヤトちゃんに触らなくても、付与できるみたい」
「なあんだ」
「・・・ぎゅー!」
「お姉ちゃん、重い!」
「嫌だった?」
「ううん、すきー」

 『付与』された物は、俺たちから漏れているらしい魔素を勝手に吸収して、特性を維持しているようだ。
 つまり一度、「斬れる棒」になったら、そのままだった。
 ただし、シウンが付与を除去することができたので、不要な危険物を放置せずにすんだ。

 ただ、例えば、石に「火炎」を付与しただけだと、ほんのりとした温かさが維持される程度だ。
「うん、あったかいね」
 それが、勝手に吸収した魔素での限界なのだろう。
 だが、誰か、その特性の持ち主以外でも、魔素を込めれば、熱々にできた。
「わ!ヤトにも、ヨウコみたいに、お湯沸かせたよ!」
 つまり、火を熾さなくても、加熱調理などが可能となる。
 いやそれどころか、様々な「魔道具」としかいいようのないものの制作の可能性がある。

 更に、この付与を使って、俺たちの特性を検査することができた。
 ハイロウの特性を付与した石は、地面を爆発させた。
 『爆裂』とでもいう感じだ。
 キラの矢に付与したら、攻撃力が対戦車ライフル並みに強化された。
「よしっ!すごいぞ、我が爆裂!」
「魔物、吹き飛んじゃいましたけど」
「普段の狩りには、使えないか」
「兄さまの特性だけあって、使い勝手が悪いですね」
「・・・え?」
 落ち込むハイロウは、娘たちに、「爆裂は秘密兵器」と慰められていた。

 俺の魔素は、相変わらず安定していないが、とりあえずの検査の結果は、『強靭』のようだった。
 服に付与すると、手触りとかは変わらず、簡単には切れなくなった。
「これは、服一枚で、かなり安心できますな」
 金属の防具をつけなくても、防刃効果が得られるだけではない。
 娘たちが服を破かなくなるのは、お財布にとてもとても優しいのだ。
「え?服、破けないんですか?」
 まあ、どうせワー・ウルフ兄妹は「お嬢のために!」とカワイイ服を買ってくるんだろうが。

 もちろん、斬れなくても打撲はするので、防具の課題は残る。
 それでも安全優先で、すべての衣類を「強靭」化することになったけど、俺の魔素が安定しないせいか、シウンは「慣れ」なくて、俺から離れると、付与できなかった。
「お父さんと離れると、うまく付与できないみたい。ごめんなさい」
「いや、俺の魔素が安定してないからだろう、シウンすまないな」
「じゃあ。おあいこだね、お父さん」
 衣類に付与中シウンは、ずっと俺にくっついていた。
「お父さんに手を伸ばして触ってて、腕が疲れたから、背中にもたれていい?」
 最近、少しだけ嫉妬深くなってきたヨウコは、本当に「慣れ」ないのか、疑っていた。
「・・・シウン姉様のズルだと思います」
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