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魔王国滅亡編
親戚がきました
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「主殿ー!」
「主様ー!」
パスで位置はわかっていたが、手を振る姿が実際に見えると、安心する。
百キロ以上離れたワー・ウルフ兄妹の小屋と、パス通信は問題なくでき、魔素吸収の共有もできていた。
突然、『レベルアップしました♪』と聞こえてくるのにはまだ慣れないが、パス通信の音量調節ができるのがわかり、レベルアップ通知のボリュームも下げられた。
本当に、『白い部屋の管理人』に、マニュアルを要求すればよかった。
兄妹が到着したのは、もう夕方だったので、さっそく男女別れて、露天風呂に入ることにした。
「あ"ーーーー」
初風呂に、ハイロウが野太い声を出した。
犬は入浴を嫌うイメージあって、狼も犬系なので心配していたが、関係ないようだ。
「これは、いいものですな。主殿」
「気にいってくれて、よかったよ」
がんばって湯舟を増やした甲斐があった。
ぺろり、と湯を舐めて、
「塩味ですな」
「ああ、味は薄いけど、塩もとれるぞ」
「・・・それは、一財産ですぞ」
どうしても、森の中で自給自足できない物資のひとつが、塩だったそうだ。
この辺まで、ワー・ウルフ兄妹が探索に来る前にあの場所に落ち着いたのもあるが、温泉から塩をとる、という発想もなかったようだ。
岩塩は、かなり掘らないと出ないのが、この辺りの常識だしな。
まあ、こちらとしても温泉の発見は偶然だし、ヨウコの特性「冷気」がなければ、この濃度の塩水では、塩水濃縮に時間がかかり、しかも近隣を禿山にするくらいの木材で焚く必要があっただろう。
女湯では、キラのナイスなバディに、ヨウコが自分の容姿と比べて落ち込んだらしいのがパス通信で気配が伝わってきたが、それには、俺たち男は触れるつもりはない。
「この肉は、本当に、チャージ・ボアのですか、主殿?」
夕食に出した串焼きが、ワー・ウルフ兄妹に絶賛で、ヨウコがニコニコしている。
殺し経てより数日、置いて熟成させた方が、獣肉はおいしいのだ。
だが、常温では腐りやすいので、ヨウコの特性「冷気」とそれによる冷蔵庫の威力だ。
逆に、鳥肉は、鮮度が落ちやすくて、臭いやすい。
「キッカー・バードなのに、まったく臭くないです。主様、兄さま」
ワー・ウルフである兄妹には、臭いは、食べ物として重要な要素ようだ。
その点、臭いには敏感なヨウコが食材管理・調理しているのだから万全だ。
ヨウコのニコニコ顔が止まらない。
そっと、ヤトとキラから、ほっとした気配が、パス通信で伝わってきた。
どれだけ、風呂場で落ち込んでいたんだ、ヨウコ?
翌日、畑をどうするか、現地を見ながら、農家の先輩のハイロウに相談していた。
俺は、米の収穫量が、連続して栽培すると減るのは、連作障害という、土の養分が足りなくなるのが原因であること。
それを防ぐには、いくつかに土地を分け、草を生やして土を休ませたり、その草を食べる生き物の糞で土に栄養を与えたりする方法を提案した。
俺の知識に驚くハイロウだが、残念なことに、そんな都合の良い生き物は、街近郊でしか飼われていず、魔王手配されているだろう俺には、アイディアを実現するための買い物にいけないのだ。
ハイロウも、これだけの水があるなら、と前世でいう羊に似た魔物を手にいれることを約束してくれた。
「羊?もふもふ?」
「そうですな、お嬢」
まあ、君らのケモ耳も尻尾も、俺にしてみれば、モフモフだけどね。
「お乳とれますか?」
「ヨウコちゃん、もちろん。チーズもバターもつくれますよ」
「ヤト、食べたい!」
大まかに耕作地を四つに分け、陸稲、アネ芋、草地、羊の放牧地で輪栽していくことにした。
さっそく、ワー・ウルフ兄妹にも手伝ってもらって耕し、もってきてもらった陸稲、アネ芋を植え、更に野菜はその周りで、連作にならないように、場所を移動して栽培していくことにした。
「すっごいね、叔父ちゃん」
「叔父様、叔母様が手伝ってくださって、どんどん畑が広がっていきます」
「兄さまは、大雑把だけど、こういう作業は向いてるんですよ」
「うおーーーー!」
「ハイロウ、人の言葉で頼む」
前世では、野菜なんて、肉の敷物、添え物くらいにしか思っていなかったが、実感する。
野菜があると、各段に料理がおいしくなる。
「今日のシチュー、おいしい!叔父ちゃんたちが持ってきた野菜のおかげ?」
「それもありますが、ヨウコお嬢の料理が上手だからですよ」
「それって、妹の料理はイマイチってことなのかしら、兄さま?」
「キラ、説明させてくれる気があるなら、まずは、ナイフを置いてからだ」
それだけでなく、ワー・ウルフ兄妹が採りためていたハーブを差し入れてくれたので、一層おいしくなった。
「これって、森に生えているんですか?」
「そうですヨウコちゃん。でも、根ごと掘ってくれば、植えられるハーブも多いですから今度、探してみましょうね」
「はい、叔母様」
「お腹の調子を良くするハーブもあったりするんですよ」
「それほしい!」
「ヤト姉様は食べすぎなければいいんです」
整腸しながら暴食とか、フードファイターか。
初めて『人』の村で食べた、素朴なモツ煮みたいなシチューもおいしかったが、人とは、贅沢に慣れてしまうものだな、と思った。
スパイス類は、もっと南にいかないと採れず、高級品なのだが、洞窟を温室みたいにして、つくれないのだろうか。
あ、陽が当たらないか。
いや、この場に拘らず、ここでのノウハウと種を持って、もっと南へ移動して定住するのもありかもしれない。
「あったかいとこか、お腹壊さなくていいかも」
「お姉様のは、食べすぎです」
それよりは、俺とハイロウで、南に買い付けにいくのも、いいかもしれない。
「二人だけでなんて、ズルイよ!」
「ヨウコたちも連れていくように、要求します!」
並みの魔物には負けないキャラバン。
いっそ、一か所に定住するより旅から旅の行商も、『人』に攻撃されなくて、いいかもしれないし、若返ったワー・ウルフ兄妹のお相手も探せる。
うん?
娘たちの相手のことなんて、知らん。
虫は追い払うだけだ。
俺たちは、この世界で生きていく。
そんな、『今後』の話を、夜が更けるまで、俺たちは、語り合った。
「主様ー!」
パスで位置はわかっていたが、手を振る姿が実際に見えると、安心する。
百キロ以上離れたワー・ウルフ兄妹の小屋と、パス通信は問題なくでき、魔素吸収の共有もできていた。
突然、『レベルアップしました♪』と聞こえてくるのにはまだ慣れないが、パス通信の音量調節ができるのがわかり、レベルアップ通知のボリュームも下げられた。
本当に、『白い部屋の管理人』に、マニュアルを要求すればよかった。
兄妹が到着したのは、もう夕方だったので、さっそく男女別れて、露天風呂に入ることにした。
「あ"ーーーー」
初風呂に、ハイロウが野太い声を出した。
犬は入浴を嫌うイメージあって、狼も犬系なので心配していたが、関係ないようだ。
「これは、いいものですな。主殿」
「気にいってくれて、よかったよ」
がんばって湯舟を増やした甲斐があった。
ぺろり、と湯を舐めて、
「塩味ですな」
「ああ、味は薄いけど、塩もとれるぞ」
「・・・それは、一財産ですぞ」
どうしても、森の中で自給自足できない物資のひとつが、塩だったそうだ。
この辺まで、ワー・ウルフ兄妹が探索に来る前にあの場所に落ち着いたのもあるが、温泉から塩をとる、という発想もなかったようだ。
岩塩は、かなり掘らないと出ないのが、この辺りの常識だしな。
まあ、こちらとしても温泉の発見は偶然だし、ヨウコの特性「冷気」がなければ、この濃度の塩水では、塩水濃縮に時間がかかり、しかも近隣を禿山にするくらいの木材で焚く必要があっただろう。
女湯では、キラのナイスなバディに、ヨウコが自分の容姿と比べて落ち込んだらしいのがパス通信で気配が伝わってきたが、それには、俺たち男は触れるつもりはない。
「この肉は、本当に、チャージ・ボアのですか、主殿?」
夕食に出した串焼きが、ワー・ウルフ兄妹に絶賛で、ヨウコがニコニコしている。
殺し経てより数日、置いて熟成させた方が、獣肉はおいしいのだ。
だが、常温では腐りやすいので、ヨウコの特性「冷気」とそれによる冷蔵庫の威力だ。
逆に、鳥肉は、鮮度が落ちやすくて、臭いやすい。
「キッカー・バードなのに、まったく臭くないです。主様、兄さま」
ワー・ウルフである兄妹には、臭いは、食べ物として重要な要素ようだ。
その点、臭いには敏感なヨウコが食材管理・調理しているのだから万全だ。
ヨウコのニコニコ顔が止まらない。
そっと、ヤトとキラから、ほっとした気配が、パス通信で伝わってきた。
どれだけ、風呂場で落ち込んでいたんだ、ヨウコ?
翌日、畑をどうするか、現地を見ながら、農家の先輩のハイロウに相談していた。
俺は、米の収穫量が、連続して栽培すると減るのは、連作障害という、土の養分が足りなくなるのが原因であること。
それを防ぐには、いくつかに土地を分け、草を生やして土を休ませたり、その草を食べる生き物の糞で土に栄養を与えたりする方法を提案した。
俺の知識に驚くハイロウだが、残念なことに、そんな都合の良い生き物は、街近郊でしか飼われていず、魔王手配されているだろう俺には、アイディアを実現するための買い物にいけないのだ。
ハイロウも、これだけの水があるなら、と前世でいう羊に似た魔物を手にいれることを約束してくれた。
「羊?もふもふ?」
「そうですな、お嬢」
まあ、君らのケモ耳も尻尾も、俺にしてみれば、モフモフだけどね。
「お乳とれますか?」
「ヨウコちゃん、もちろん。チーズもバターもつくれますよ」
「ヤト、食べたい!」
大まかに耕作地を四つに分け、陸稲、アネ芋、草地、羊の放牧地で輪栽していくことにした。
さっそく、ワー・ウルフ兄妹にも手伝ってもらって耕し、もってきてもらった陸稲、アネ芋を植え、更に野菜はその周りで、連作にならないように、場所を移動して栽培していくことにした。
「すっごいね、叔父ちゃん」
「叔父様、叔母様が手伝ってくださって、どんどん畑が広がっていきます」
「兄さまは、大雑把だけど、こういう作業は向いてるんですよ」
「うおーーーー!」
「ハイロウ、人の言葉で頼む」
前世では、野菜なんて、肉の敷物、添え物くらいにしか思っていなかったが、実感する。
野菜があると、各段に料理がおいしくなる。
「今日のシチュー、おいしい!叔父ちゃんたちが持ってきた野菜のおかげ?」
「それもありますが、ヨウコお嬢の料理が上手だからですよ」
「それって、妹の料理はイマイチってことなのかしら、兄さま?」
「キラ、説明させてくれる気があるなら、まずは、ナイフを置いてからだ」
それだけでなく、ワー・ウルフ兄妹が採りためていたハーブを差し入れてくれたので、一層おいしくなった。
「これって、森に生えているんですか?」
「そうですヨウコちゃん。でも、根ごと掘ってくれば、植えられるハーブも多いですから今度、探してみましょうね」
「はい、叔母様」
「お腹の調子を良くするハーブもあったりするんですよ」
「それほしい!」
「ヤト姉様は食べすぎなければいいんです」
整腸しながら暴食とか、フードファイターか。
初めて『人』の村で食べた、素朴なモツ煮みたいなシチューもおいしかったが、人とは、贅沢に慣れてしまうものだな、と思った。
スパイス類は、もっと南にいかないと採れず、高級品なのだが、洞窟を温室みたいにして、つくれないのだろうか。
あ、陽が当たらないか。
いや、この場に拘らず、ここでのノウハウと種を持って、もっと南へ移動して定住するのもありかもしれない。
「あったかいとこか、お腹壊さなくていいかも」
「お姉様のは、食べすぎです」
それよりは、俺とハイロウで、南に買い付けにいくのも、いいかもしれない。
「二人だけでなんて、ズルイよ!」
「ヨウコたちも連れていくように、要求します!」
並みの魔物には負けないキャラバン。
いっそ、一か所に定住するより旅から旅の行商も、『人』に攻撃されなくて、いいかもしれないし、若返ったワー・ウルフ兄妹のお相手も探せる。
うん?
娘たちの相手のことなんて、知らん。
虫は追い払うだけだ。
俺たちは、この世界で生きていく。
そんな、『今後』の話を、夜が更けるまで、俺たちは、語り合った。
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