7 / 66
魔王国滅亡編
街へむかいました
しおりを挟む
「忘れ物ないか?」
「うん、パパ」
「大丈夫です、お父様」
食器や鍋、予備の服などは、娘たちに分けて持たせ、俺はファング・ドッグの毛皮を大量に担いでいた。
村とは逆方向の少し大きな街へ向かうので、現金を稼ぎたいのと、身分を傭兵兼商人と名乗るためだ。
不思議だったのは、ヤトが石を削ってつくった石器ナイフで、毛皮を綺麗に剥いでいたことだ。
「え?パパやヨウコだと、これで切れないの?どうしてだろう?」
魔素を操っていたのかもしれない、本人に自覚はなかったが。
一日歩くと、魔物が弱い種類へと変わってきた。
しかし、昆虫系が多くて、食べられないのが、目下の最大の問題だ。
夜、野営をして、乏しい食料を分けあいながら、街についたら、おいしい料理を娘たちに食べさせてやりたいな、と考えていた。
不思議だったのは、ヨウコが火を熾すのが得意だった。
「え?きっとコツを覚えたんだと思います。お父様の教え方がうまいんです」
魔素を操っていたのかもしれない、本人に自覚はなかったが。
翌日、半日ほど歩き、昆虫系の魔物も減ってきた矢先、
「・・・パパ、何かいる」
緊張したヤトの声に、俺たちは足を止めた。
「初めての臭いで、昆虫系ではなく、獣っぽいとしかわかりません。ごめんなさい、お父様」
「気にするな、ヨウコ」
刷り込まれた一般常識には、魔物の名前や特徴などもあるのだが、『人』の知識なので、どんな臭いかまでは、情報がないのだ。
一度、姿を見て、名前がわかってしまえば、ヨウコが臭いを覚えてくれた。
「一頭だけど。大きい、パパ」
どうやら初遭遇の獣系の魔物が一頭で、大きいらしい。
これだけ情報があるだけでも、ありがたい。
「二人は、ここで待ってろ。片づけてくる」
武器のない自分たちが足手まといなのはわかっているのだろう、不安な顔をしながらも、娘たちは頷いた。
俺は、目を疑った。
ヤトとのパス通信で、音の元へ誘導された先にいたのは、大型の熊のような外見の魔物。
バーサーカー・ベアだった。
小さな村なら、駐在する軍の分隊ごと全滅する、こんな街に近い場所にはいないはずの強力な魔物。
手負いのようで、どこからか追われたのだろうか。
俺のレベル的には問題ないかもしれないが、なんにせよ武器が心もとない。
毛足の長い毛皮は、その下の脂肪も分厚く、一本しかない剣の切れ味をすぐに鈍くするだろうし、俺の膂力が上がっている分、力まかせに叩きつけ続けたら、折れてしまいそうだ。
本当に、村で買い物できなかったのが、ここまで響いてくるとは。
『パパ。みつけられた?』
『お父様。魔物は何でしたか?』
娘たちから、パス通信が入る。
隠しても仕方ないだろう。
『バーサーカー・ベアだ』
二人の息を飲む気配が伝わってくる。
器用だな、パス通信。
『パパ、逃げて』
『お父様、無理する必要ありません』
そうしたいところだが、
『匂いで気づかれたようだ。心配するな』
『パパ!』
『お父様!』
二人の悲鳴を背景に、鼻をヒクつかせたバーサーカー・ベアが、俺の隠れていた木に突進し、腕の一振りで、ぶち折った。
一撃をくらったら、危ないな。
千切れた手足を魔素で治せるか、試す気はない。
でも、大振りだ。
間合いを詰め、足に切りつける。
ゴムタイヤを叩いたような感触で、剣が弾き返される。
ダメージを与えた様子はない。
では、突きなら、どうだ。
膝裏を狙って切っ先を突き込む。
数センチ、沈むが、それ以上は、入らない。
毛皮すら、貫通していなさそうだ。
胴体部分にある、傷を狙うか。
『パパ!今、いくよ!』
『ダメです!ヤト!』
ヤトの位置が、こちらへ近づいてくる。
それを追って、ヨウコも移動してくる。
『来るな、二人とも!』
娘たちの予想外の行動に気をとられている間に、逃げ遅れた。
木をへし折った一撃が迫る。
俺は、少しでもダメージを減らそうと後ろに飛びすざり、反撃を考えて剣を惜しんで、咄嗟に腕で受けた。
叩きつけられた勢いで、背中から木に激突し、地面に落ちた。
どれくらいのダメージだ?
魔素で、治せるか?
治せるにしても、時間はどれだけかかる?
はやく、体勢を立て直さないと。
しかし、なぜか、腕も、背骨も折れていなければ、そんなにダメージも受けていなかった。
わずかな傷が塞がり、痛みが薄くなっていく。
俺の身体の周りを、灰色の靄のようなものが、巡っている。
これは、なんだ?
「パパ!」
パス通信ではなく直接、ヤトの声が聞こえた。
「来るな!」
ヤトが、木の枝を手にジャンプするのが、スローモーションで見えた。
その枝に纏わりつく、灰色の靄のようなもの。
ヤトは、バーサーカー・ベアの背後から、枝を左肩に叩きつけた。
切り落とされた左腕が、地面を転がる。
「え?」
一番、呆気にとられていたのは、ヤト本人だった。
俺のために、勝算もなく、ただ一矢報いるためだけの一撃。
それで左肩から、血しぶきを、咆哮を上げるバーサーカー・ベア。
ヤトが、石器のような石のナイフで、皮を剥ぐのが上手かったのは、やはり魔素を操っていたからだ。
俺の周りにある、灰色の靄のようなものも魔素なんだろう。
拳法の達人が、気で身体を強化して、鉄の棒で叩かれてもダメージを受けない、というのを前世にテレビで見たことがある。
さっき一撃で、俺が怪我なく生きているのも、魔素を操ったそれだろう。
では、ヤトと同じように、武器に魔素を纏わせれば。
ここまでが、ヤトの声がしてから数舜。
バーサーカー・ベアが、自分を傷つけたヤトを見つけた。
彼女は、自分が与えた予想外のダメージに驚いて、動けないでいる。
俺は、転がっていた剣を掴むと、剣に力を注ぎ込むイメージをした。
灰色の靄が、剣を包む。
俺は、バーサーカー・ベアの右足を太ももから、切り飛ばした。
バランスを崩し、俺の方へ倒れてくる首筋を狙い、頭を切り落とす。
音を立てて、倒れるバーサーカー・ベア。
俺は、ヤトに駆け寄った。
「大丈夫か、ヤト?」
ヤトは、展開が意外すぎて、急すぎて、茫然としているようだ。
でも、まあ、怪我なく終わった。
「だめー!」
ヨウコの叫びが響き、炎の塊が、頭部を失ってなお、俺たちに向かって振りかぶっていたバーサーカー・ベアの右腕を粉砕した。
『レベルアップしました♪』
『レベルアップしました♪』
『レベルアップしました♪』
この世界のすべての生物は、魔素を持ち、普通の野生動物も魔物だ。
だから、ヤトもヨウコも、元魔物だが、火事から救出したときの無力感から、前世でいう普通の小動物・無力な兎と狐とだ思ってしまっていた。
改めて、彼女らに、自分らが人の知識に擦り合わせたら何の魔物か、聞いたところ、
「ヤトは、ヴォーパル・バニー」
大人になると、鋭い前歯で、革の鎧くらいなら、すっぱり斬る魔物だ。
油断していると、指や手首を切り落とされることがあるらしい。
「ヨウコは、ファイア・フォックスです」
大人になると炎を吐き、革の鎧くらいなら、数センチ大の穴をあける魔物だ。
油断していると、目や指先を炭化させられることがあるらしい。
『レベルアップ』で魔素を吸収して、増えた魔素を操つり、「切断」、「火炎」の特性を開花させたようだ。
自分たちの魔素の特性を自覚すると、ヤトは素手でも物が斬れたし、ヨウコは焚火を使わなくても鍋でお湯を沸かせるようになった。
「石器ナイフなくても皮、剥げるよ。指の方が、やりやすいかも」
「薬草茶を淹れましたから、一息つきましょう。あ、暗くなる前に、焚火も点けないと」
俺の魔素は安定していないが、部分的な防具や武器のような使い方ができそうだ。
かなりの訓練が必要そうだが。
『人』には使えないはずの『魔法』のような力。
でもそれは、『人』の持つ魔素が少ないのが原因だ。
つまり、魔素を吸収することのできる俺は、『人』ではないのだろうか。
俺たちは、バーサーカー・ベアを倒した場所から、少し離れた場所で野営していた。
「足音とか、聴こえないよ。パパ」
「近くに魔物の臭いはしません。お父様」
手負いのバーサーカー・ベアを恐れて、他の魔物は逃げ出していたようで、娘たちの聴覚・嗅覚に反応はなく、魔物の空白地帯となっていた。
あんな外見の魔物なのに、バーサーカー・ベアの肉はおいしく食べられるので、食糧事情は一気に好転したし、毛皮も高値がつくだろう。
「本当に、うまいんだな。バーサーカー・ベア」
前世でも、熊肉は、珍味で高価とか聞いたことあるしな。
「このお肉、おいしー!」
ヤトが、木の棒を刺して焼いた塊肉にカブりついている。
「食べて、敵を討ちます。お父様を傷つけるなんて」
ヨウコ、それって、肉をバクバク食べたい、言い訳に聞こえるぞ、カワイイが。
それに、バーサーカー・ベア戦後、ヨウコに、ヤトも俺も、めちゃくちゃ怒られて泣かれたから、本気で敵討ちに食べているのかもしれない。
「ヤトは、言いつけ守らずに走っていっちゃうし!お父様は、まだ狙われてることに気がつかないし!」
「ごめんね。ヨウコ」
「すまん、ヨウコ」
「二人とも、大怪我しちゃうって思って!ヨウコ、ヨウコ必死で!ふえーん」
「ごめん、ごめんなさい。ヨウコ」
「ヨウコのおかげで二人とも無事だったんだ。ありがとう」
戦いは、かなりのピンチだったが、魔素を操れるようになり結果は良しだろう。
一番、切望していた食料と武器の両方が、一気に解決してしまったので、街へ行く必要もないかとも思ったが、娘たちに服を買ってあげたいし、おいしい料理も食べさせたい。
ただ、彼女らの外見が、『人』ではないのが、バレないか心配だ。
マントや帽子を手に入れて、隠せばいいのだが、不安は残る。
成り行きとはいえ兵士を無力化した村から、俺の手配が街にまで届いていないかも心配だ。
そして、『人型の魔物』、『魔王』。
この世界には、いないはずの魔物に関する情報を、集めておきたい。
「うん、パパ」
「大丈夫です、お父様」
食器や鍋、予備の服などは、娘たちに分けて持たせ、俺はファング・ドッグの毛皮を大量に担いでいた。
村とは逆方向の少し大きな街へ向かうので、現金を稼ぎたいのと、身分を傭兵兼商人と名乗るためだ。
不思議だったのは、ヤトが石を削ってつくった石器ナイフで、毛皮を綺麗に剥いでいたことだ。
「え?パパやヨウコだと、これで切れないの?どうしてだろう?」
魔素を操っていたのかもしれない、本人に自覚はなかったが。
一日歩くと、魔物が弱い種類へと変わってきた。
しかし、昆虫系が多くて、食べられないのが、目下の最大の問題だ。
夜、野営をして、乏しい食料を分けあいながら、街についたら、おいしい料理を娘たちに食べさせてやりたいな、と考えていた。
不思議だったのは、ヨウコが火を熾すのが得意だった。
「え?きっとコツを覚えたんだと思います。お父様の教え方がうまいんです」
魔素を操っていたのかもしれない、本人に自覚はなかったが。
翌日、半日ほど歩き、昆虫系の魔物も減ってきた矢先、
「・・・パパ、何かいる」
緊張したヤトの声に、俺たちは足を止めた。
「初めての臭いで、昆虫系ではなく、獣っぽいとしかわかりません。ごめんなさい、お父様」
「気にするな、ヨウコ」
刷り込まれた一般常識には、魔物の名前や特徴などもあるのだが、『人』の知識なので、どんな臭いかまでは、情報がないのだ。
一度、姿を見て、名前がわかってしまえば、ヨウコが臭いを覚えてくれた。
「一頭だけど。大きい、パパ」
どうやら初遭遇の獣系の魔物が一頭で、大きいらしい。
これだけ情報があるだけでも、ありがたい。
「二人は、ここで待ってろ。片づけてくる」
武器のない自分たちが足手まといなのはわかっているのだろう、不安な顔をしながらも、娘たちは頷いた。
俺は、目を疑った。
ヤトとのパス通信で、音の元へ誘導された先にいたのは、大型の熊のような外見の魔物。
バーサーカー・ベアだった。
小さな村なら、駐在する軍の分隊ごと全滅する、こんな街に近い場所にはいないはずの強力な魔物。
手負いのようで、どこからか追われたのだろうか。
俺のレベル的には問題ないかもしれないが、なんにせよ武器が心もとない。
毛足の長い毛皮は、その下の脂肪も分厚く、一本しかない剣の切れ味をすぐに鈍くするだろうし、俺の膂力が上がっている分、力まかせに叩きつけ続けたら、折れてしまいそうだ。
本当に、村で買い物できなかったのが、ここまで響いてくるとは。
『パパ。みつけられた?』
『お父様。魔物は何でしたか?』
娘たちから、パス通信が入る。
隠しても仕方ないだろう。
『バーサーカー・ベアだ』
二人の息を飲む気配が伝わってくる。
器用だな、パス通信。
『パパ、逃げて』
『お父様、無理する必要ありません』
そうしたいところだが、
『匂いで気づかれたようだ。心配するな』
『パパ!』
『お父様!』
二人の悲鳴を背景に、鼻をヒクつかせたバーサーカー・ベアが、俺の隠れていた木に突進し、腕の一振りで、ぶち折った。
一撃をくらったら、危ないな。
千切れた手足を魔素で治せるか、試す気はない。
でも、大振りだ。
間合いを詰め、足に切りつける。
ゴムタイヤを叩いたような感触で、剣が弾き返される。
ダメージを与えた様子はない。
では、突きなら、どうだ。
膝裏を狙って切っ先を突き込む。
数センチ、沈むが、それ以上は、入らない。
毛皮すら、貫通していなさそうだ。
胴体部分にある、傷を狙うか。
『パパ!今、いくよ!』
『ダメです!ヤト!』
ヤトの位置が、こちらへ近づいてくる。
それを追って、ヨウコも移動してくる。
『来るな、二人とも!』
娘たちの予想外の行動に気をとられている間に、逃げ遅れた。
木をへし折った一撃が迫る。
俺は、少しでもダメージを減らそうと後ろに飛びすざり、反撃を考えて剣を惜しんで、咄嗟に腕で受けた。
叩きつけられた勢いで、背中から木に激突し、地面に落ちた。
どれくらいのダメージだ?
魔素で、治せるか?
治せるにしても、時間はどれだけかかる?
はやく、体勢を立て直さないと。
しかし、なぜか、腕も、背骨も折れていなければ、そんなにダメージも受けていなかった。
わずかな傷が塞がり、痛みが薄くなっていく。
俺の身体の周りを、灰色の靄のようなものが、巡っている。
これは、なんだ?
「パパ!」
パス通信ではなく直接、ヤトの声が聞こえた。
「来るな!」
ヤトが、木の枝を手にジャンプするのが、スローモーションで見えた。
その枝に纏わりつく、灰色の靄のようなもの。
ヤトは、バーサーカー・ベアの背後から、枝を左肩に叩きつけた。
切り落とされた左腕が、地面を転がる。
「え?」
一番、呆気にとられていたのは、ヤト本人だった。
俺のために、勝算もなく、ただ一矢報いるためだけの一撃。
それで左肩から、血しぶきを、咆哮を上げるバーサーカー・ベア。
ヤトが、石器のような石のナイフで、皮を剥ぐのが上手かったのは、やはり魔素を操っていたからだ。
俺の周りにある、灰色の靄のようなものも魔素なんだろう。
拳法の達人が、気で身体を強化して、鉄の棒で叩かれてもダメージを受けない、というのを前世にテレビで見たことがある。
さっき一撃で、俺が怪我なく生きているのも、魔素を操ったそれだろう。
では、ヤトと同じように、武器に魔素を纏わせれば。
ここまでが、ヤトの声がしてから数舜。
バーサーカー・ベアが、自分を傷つけたヤトを見つけた。
彼女は、自分が与えた予想外のダメージに驚いて、動けないでいる。
俺は、転がっていた剣を掴むと、剣に力を注ぎ込むイメージをした。
灰色の靄が、剣を包む。
俺は、バーサーカー・ベアの右足を太ももから、切り飛ばした。
バランスを崩し、俺の方へ倒れてくる首筋を狙い、頭を切り落とす。
音を立てて、倒れるバーサーカー・ベア。
俺は、ヤトに駆け寄った。
「大丈夫か、ヤト?」
ヤトは、展開が意外すぎて、急すぎて、茫然としているようだ。
でも、まあ、怪我なく終わった。
「だめー!」
ヨウコの叫びが響き、炎の塊が、頭部を失ってなお、俺たちに向かって振りかぶっていたバーサーカー・ベアの右腕を粉砕した。
『レベルアップしました♪』
『レベルアップしました♪』
『レベルアップしました♪』
この世界のすべての生物は、魔素を持ち、普通の野生動物も魔物だ。
だから、ヤトもヨウコも、元魔物だが、火事から救出したときの無力感から、前世でいう普通の小動物・無力な兎と狐とだ思ってしまっていた。
改めて、彼女らに、自分らが人の知識に擦り合わせたら何の魔物か、聞いたところ、
「ヤトは、ヴォーパル・バニー」
大人になると、鋭い前歯で、革の鎧くらいなら、すっぱり斬る魔物だ。
油断していると、指や手首を切り落とされることがあるらしい。
「ヨウコは、ファイア・フォックスです」
大人になると炎を吐き、革の鎧くらいなら、数センチ大の穴をあける魔物だ。
油断していると、目や指先を炭化させられることがあるらしい。
『レベルアップ』で魔素を吸収して、増えた魔素を操つり、「切断」、「火炎」の特性を開花させたようだ。
自分たちの魔素の特性を自覚すると、ヤトは素手でも物が斬れたし、ヨウコは焚火を使わなくても鍋でお湯を沸かせるようになった。
「石器ナイフなくても皮、剥げるよ。指の方が、やりやすいかも」
「薬草茶を淹れましたから、一息つきましょう。あ、暗くなる前に、焚火も点けないと」
俺の魔素は安定していないが、部分的な防具や武器のような使い方ができそうだ。
かなりの訓練が必要そうだが。
『人』には使えないはずの『魔法』のような力。
でもそれは、『人』の持つ魔素が少ないのが原因だ。
つまり、魔素を吸収することのできる俺は、『人』ではないのだろうか。
俺たちは、バーサーカー・ベアを倒した場所から、少し離れた場所で野営していた。
「足音とか、聴こえないよ。パパ」
「近くに魔物の臭いはしません。お父様」
手負いのバーサーカー・ベアを恐れて、他の魔物は逃げ出していたようで、娘たちの聴覚・嗅覚に反応はなく、魔物の空白地帯となっていた。
あんな外見の魔物なのに、バーサーカー・ベアの肉はおいしく食べられるので、食糧事情は一気に好転したし、毛皮も高値がつくだろう。
「本当に、うまいんだな。バーサーカー・ベア」
前世でも、熊肉は、珍味で高価とか聞いたことあるしな。
「このお肉、おいしー!」
ヤトが、木の棒を刺して焼いた塊肉にカブりついている。
「食べて、敵を討ちます。お父様を傷つけるなんて」
ヨウコ、それって、肉をバクバク食べたい、言い訳に聞こえるぞ、カワイイが。
それに、バーサーカー・ベア戦後、ヨウコに、ヤトも俺も、めちゃくちゃ怒られて泣かれたから、本気で敵討ちに食べているのかもしれない。
「ヤトは、言いつけ守らずに走っていっちゃうし!お父様は、まだ狙われてることに気がつかないし!」
「ごめんね。ヨウコ」
「すまん、ヨウコ」
「二人とも、大怪我しちゃうって思って!ヨウコ、ヨウコ必死で!ふえーん」
「ごめん、ごめんなさい。ヨウコ」
「ヨウコのおかげで二人とも無事だったんだ。ありがとう」
戦いは、かなりのピンチだったが、魔素を操れるようになり結果は良しだろう。
一番、切望していた食料と武器の両方が、一気に解決してしまったので、街へ行く必要もないかとも思ったが、娘たちに服を買ってあげたいし、おいしい料理も食べさせたい。
ただ、彼女らの外見が、『人』ではないのが、バレないか心配だ。
マントや帽子を手に入れて、隠せばいいのだが、不安は残る。
成り行きとはいえ兵士を無力化した村から、俺の手配が街にまで届いていないかも心配だ。
そして、『人型の魔物』、『魔王』。
この世界には、いないはずの魔物に関する情報を、集めておきたい。
20
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
転生したら妖精や精霊を統べる「妖精霊神王」だったが、暇なので幼女になって旅に出ます‼︎
月華
ファンタジー
21歳、普通の会社員として過ごしていた「狐風 空音」(こふう そらね)は、暴走したトラックにひかれそうになっていた子供を庇い死亡した。 次に目を覚ますとものすごい美形の男性がこちらを見、微笑んでいた。「初めまして、空音。 私はギレンフイート。全ての神々の王だ。 君の魂はとても綺麗なんだ。もし…君が良いなら、私の娘として生まれ変わってくれないだろうか?」えっ⁉︎この人の娘⁉︎ なんか楽しそう。優しそうだし…よしっ!「神様が良いなら私を娘として生まれ変わらせてください。」「‼︎! ほんとっ!やった‼︎ ありがとう。これから宜しくね。私の愛娘、ソルフイー。」ソルフィーって何だろう? あれ? なんか眠たくなってきた…? 「安心してお眠り。次に目を覚ますと、もう私の娘だからね。」「は、い…」
数年後…無事に父様(神様)の娘として転生した私。今の名前は「ソルフイー」。家族や他の神々に溺愛されたりして、平和に暮らしてたんだけど…今悩みがあります!それは…暇!暇なの‼︎ 暇すぎて辛い…………………という訳で下界に降りて幼女になって冒険しに行きます‼︎!
これはチートな幼女になったソルフイーが下界で色々とやらかしながらも、周りに溺愛されたりして楽しく歩んでいく物語。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お久しぶりです。月華です。初めての長編となります!誤字があったり色々と間違えたりするかもしれませんがよろしくお願いします。 1週間ずつ更新していけたらなと思っています!
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
異世界転生はうっかり神様のせい⁈
りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。
趣味は漫画とゲーム。
なにかと不幸体質。
スイーツ大好き。
なオタク女。
実は予定よりの早死は神様の所為であるようで…
そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は
異世界⁈
魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界
中々なお家の次女に生まれたようです。
家族に愛され、見守られながら
エアリア、異世界人生楽しみます‼︎
スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます
銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。
死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。
そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。
そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。
※10万文字が超えそうなので、長編にしました。
異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~
丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月
働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。
いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震!
悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。
対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。
・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。
もう少しマシな奴いませんかね?
あっ、出てきた。
男前ですね・・・落ち着いてください。
あっ、やっぱり神様なのね。
転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。
ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。
不定期更新
誤字脱字
理解不能
読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。
異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う
馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない
そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!?
そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!?
農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!?
10個も願いがかなえられるらしい!
だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ
異世界なら何でもありでしょ?
ならのんびり生きたいな
小説家になろう!にも掲載しています
何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします
孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル
異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた
なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった
孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます
さあ、チートの時間だ
前世は最悪だったのに神の世界に行ったら神々全員&転生先の家族から溺愛されて幸せ!?しかも最強➕契約した者、創られた者は過保護すぎ!他者も!?
a.m.
ファンタジー
主人公柳沢 尊(やなぎさわ たける)は最悪な人生だった・・耐えられず心が壊れ自殺してしまう。
気が付くと神の世界にいた。
そして目の前には、多数の神々いて「柳沢尊よ、幸せに出来なくてすまなかった転生の前に前の人生で壊れてしまった心を一緒に治そう」
そうして神々たちとの生活が始まるのだった...
もちろん転生もします
神の逆鱗は、尊を傷つけること。
神「我々の子、愛し子を傷つける者は何であろうと容赦しない!」
神々&転生先の家族から溺愛!
成長速度は遅いです。
じっくり成長させようと思います。
一年一年丁寧に書いていきます。
二年後等とはしません。
今のところ。
前世で味わえなかった幸せを!
家族との思い出を大切に。
現在転生後···· 0歳
1章物語の要点······神々との出会い
1章②物語の要点······家族&神々の愛情
現在1章③物語の要点······?
想像力が9/25日から爆発しまして増えたための変えました。
学校編&冒険編はもう少し進んでから
―――編、―――編―――編まだまだ色んなのを書く予定―――は秘密
処女作なのでお手柔らかにお願いします。文章を書くのが下手なので誤字脱字や比例していたらコメントに書いていただけたらすぐに直しますのでお願いします。(背景などの細かいところはまだ全く書けないのですいません。)主人公以外の目線は、お気に入り100になり次第別に書きますのでそちらの方もよろしくお願いします。(詳細は200)
感想お願いいたします。
❕只今話を繋げ中なためしおりの方は注意❕
目線、詳細は本編の間に入れました
2020年9月毎日投稿予定(何もなければ)
頑張ります
(心の中で読んでくださる皆さんに物語の何か案があれば教えてほしい~~🙏)と思ってしまいました。人物、魔物、物語の流れなど何でも、皆さんの理想に追いつくために!
旧 転生したら最強だったし幸せだった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる