【完結】中身は男子高校生が全寮制女子魔法学園初等部に入学した

まみ夜

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1806年/春

魔法練習授業≪つながれ≫

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「それでは、魔法を練習する授業を始めます」
 ローザ先生が、教壇に立っている。
 なんだか、最近は競技会の練習ばかりで、久しぶりな気もする。
 競技会の方は、模擬戦まで行ったので、しばらくは戦略などを練る時間が空けられるみたいだ。
 そっちも考えないといけないんだよなあ。
 アリスはコンパイルの天才だが、リソースが致命的に少ない。
 ただ、一時的な大出力は大丈夫なようなので、どう生かすかだ。
「今日は、みなさんに声を出さずにお話してもらいます」
 なんだそりゃ?
 トランシーバーみたいに、離れた人と会話できるのか?
 便利だ!
「では、お隣同士で、向かい合ってください」
 ハンナの方を向く。
 なんとなく、礼をしてしまう。
「こちら側の席の人は、スクロールをイメージします」
 ハンナが、頷いた。
「そのスクロールに、≪つながれ≫と書きましょう」
 黒板に、≪つながれ≫と実際に書く。
 その文字を真似して、ハンナが俺には見えないスクロールを指でなぞる。
「みなさん、書けましたか?」
 ハンナが、小さく頷く。
「では、スクロールが相手に見えるようなイメージで、コンパイルしてください」
『コンパイル』
 しばらく前の授業なら、隣のクラスで、アリスだけがコンパイルできていたんだろうな。
「誰か、失敗した人はいますか?」
 先生が聞くが、誰も手を上げない。
「では、キャストしてください」
『キャスト』
「おお」
 俺の目の前に、ハンナの文字で、≪つながれ≫と書かれたスクロールが現れた。
「それでは、魔法をそのままで、スクロールに相手に見てほしい言葉を書きましょう」
 ハンナが、「うーん」と悩んだあと、指を動かした。
『アリスが早く元気になるといいね』
 リアルタイムに、文字が現れる。
 しかも、ハンナが書くのと、俺に見えている角度が違うようだ。
 向かい合った彼女は、普通に文字を書いているのに、俺にも普通に読めるように正面からの文字だ。
 すごいな、変換されてるのか。
 俺も、思わず、返事を書こうとしたが、ダメだった。
 これって、一方通行?
「今度は、こちら側の席の人は、スクロールをイメージします」
 俺の方の列だ。
「そのスクロールに、≪つながれ≫と書きましょう」
 黒板に、≪つながれ≫と書かれた文字を指で示す。
「みなさん、書けましたか?」
 俺は、頷いた
「では、スクロールが相手に見えるようなイメージで、コンパイルしてください」
『コンパイル』
「誰か、失敗した人はいますか?」
 先生が聞くが、誰も手を上げない。
「では、キャストしてください」
『キャスト』
「ああ」
 ハンナが、小さく声を上げた。
 さっきの俺と同じように、スクロールが見えたのだろう。
「それでは、魔法をそのままで、スクロールに相手に見てほしい言葉を書きましょう」
 俺は、さっき書きかけた「そうだな」と書いた。
『すごいすごい』
 ハンナが書くと、俺の書いた「そうだな」の下に現れた。
 チャットみたいだ。
 これ、どのくらい遠くまで使えるのだろう?
「相手が見える場所からでしたら、使えます。でも、授業中は使わないように」
 みんなが思っただろう質問に、先生が答え、笑いが起こった。
 そうか、見えている相手でないと使えないなら、旗でも振った方が早い。
 しかも、お互いがプロセッサを使わないと会話にならない。
 でも、待てよ?
 スクロールに、≪動け≫と書く。
 そのままの文字が、現れた。
「なに、これ? 動けばいいの?」
「あ、いや、どう見えるのかな、と思って」
 考えてみれば、今スクロールに書いているのは、俺たちが普段使っている母国語だ。
 そして、スペルも母国語だ。
 会話と同じ言葉と文字なのだから、スペルも書ける。
 事実、≪つながれ≫も残っている。
 
 教師ローザ・ロッテルーノは、エイミー・ロイエンタールの指が止まったのを、静かに見守っていた。
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