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1806年/冬

被服≪エイミー・バッグ≫

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 俺は、ナンシー先生のいる警備隊の建物そばに、来ていた。
 目的は、彼女らの射撃練習場で、弾を掘り返すことだ。
 土塀前に的を置いて、射撃練習しているのは、ナンシー先生にマスケットを見せてもらったときに、見学させてもらっていた。
 練習の後は、特に弾の回収もしていなかったのもだ。
 正面から、弾ください、と言うのも手かもしれないが、なんで? と言われたら、銃開発してます以外に納得してもらえないだろうし、言えない。
 言ったら拒否されて、警戒されるだろうから、とりあえずは、黙って入手できるなら、してしまおう、と思っている。
 もし、見つかったら、裏山のウォーキング(とは言えないので散歩か)で迷ったテヘペロで誤魔化せればいいが。
 土塀の表面を拾ってきた木の枝で、コスると、ボロボロと弾が、転がり出てきた。
 やはり、射程距離や威力の関係で、そんなに深く埋まっていなかったか。
 いろいろ使える、木製のフタ付きコップに、土のついたまま、入れていく。
 思ったより簡単に、たくさんの弾を手にいれることがでした。
 これで、しばらくは、困らないだろう。
 コップのフタを閉めて、麻袋に入れ、上下に渡した麻紐で背中に背負った。
 そのまま、足音を忍ばせ、離れていく。
 ところが、走りにいくナンシー先生に、ばっちり会ってしまった。
「どうした? なんでこんなところにいる?」
「あー、いつもの朝の散歩をしていて、別の道を歩いたら、迷ってここまで」
 って、信じてくれ。
 これで、誤魔化されてくれ。
 ナンシー先生は、俺を細めた目で、じっと見つめた。
「なんだ、それ?」
 弾でも、服にくっついてたか?
「え? どれ?」
「これだ!」
 俺が背負った麻袋を取り上げる。
 やばい、バレた!?
「なんだ、これ?」
 俺の麻袋を、鼻先に押し付けてくる。
「えと、あの」
「この背中に背負う袋は、なんなんだ!?」
 え?
 これのこと?
 中に隠した弾じゃなくて?
「これで、背中に背負えば、両手も空くし、肩にタスキ掛けにしなくてもいいから、胸が苦しくないぞ!」
 ナンシー先生が、自分でも背負ってみる。
 くそ、肩掛けの紐で、胸強調してんじゃねえぞ。
「かの、クィントゥス・イキリウス卿が、その著書で書いたとおり、タスキ掛けはキツイからな」
 なんだ、えらくインテリな言葉が、ナンシー先生の口から聞こえた気がしたが。
「これ、なんて袋だ?」
「い、いや、だから、適当につくったから・・・」
 前世(?)の記憶での名前、リュックサックを言うわけにもいかない。
 その後、「エイミー・バッグ」の名で警備隊で一大ブームを起こし、軍の正式装備としても採用されるのだか、今現在、俺は袋の中を漁られないように、ドキドキしっぱなしだった。

 教師ローザ・ロッテルーノは、軍へエイミー・バッグの提案書を書くために、忙しく手を動かしながら、呟いた。
「また、エイミー?」 

 ちなみに、学園では、オシャレではないとして、流行らなかった。
 女心は、よくわからん。
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