【完結】中身は男子高校生が全寮制女子魔法学園初等部に入学した

まみ夜

文字の大きさ
上 下
30 / 90
1806年/冬

競技会≪ブロー≫

しおりを挟む
「それでは、競技の練習をする授業を始めます」
 ローザ先生と俺たちは野外、学園の裏山にいた。
 俺たちと言っても、クラスだけではなく、隣のクラスも一緒だ。
 担当教師のヤンデル先生は、年こそローザ先生より上だと思うが、髪をひっつめてメガネの女教師。
 学園の野暮ったい教員用の制服で、体格も似ていて、ほぼそっくりに見える。
 辛うじて、メガネがツルでなく、紐で耳にかけるタイプの違いくらいだ。
 双子の姉妹、もしくはクローンと言われても信じてしまいそうだ。
 競技のチームで集められているので、俺の隣には、ハンナとアリスがいる。
 ハンナが、いろいろとアリスに話しかけ、首の縦横で、コミュニケーションをとっている。
 がんばれ、ハンナ!
 チームの連携は、君の活躍にかかっているぞ。
 人数が多いので、ナンシー先生も駆り出されていて、チームに一本づつ、棒を配っていた。
 俺が受け取ったが、思いの外、重い。
 金属製で、中が空洞で長さが約五十センチ、直径約五センチ。
 真ん中に、直径約五センチの横穴が空いている。
 競技に使うポールの短い版だが、これって・・・
「それでは、ブローの練習を始めます」
 ローザ先生が、指導するようだ。
「まず、一人が、このようにポールを持ちます」
 隣に立ったナンシー先生が、横穴の上下を握って、ポールを縦に持っている。
 ポールを持っていた俺が、そのまま持ち方を変えた。
「次に、もう一人が、ポールの上下に手をかざしてください。穴を塞がないように」
 ヤンデル先生が、一度ポールの上下を両手で挟むようにしてから、数センチ手を離した。
 俺に近かったハンナが、手をかざした。
「最後に、もう一人は、横穴が見える位置に移動します」
 アリスが、俺の正面に立った。
「三人目は、スクロールを用意して、横穴から風を入れ、ポールの上から出します」
 アリスが、右の人差し指を、さらっと動かした。
「スペルが書けた方から、コンパイルして、キャストしてください」
「あ!」
 ハンナが、声を出した。
 俺も、ハンナの手で方向が変わった風を、顔で感じた。
 先生が、キャストと言ったのと、ほぼ同時だ。
「アリス、もうやったの?」
 ハンナの問いに、頷く。
 さすが、天才だな。
 ローザ先生の声が響く。
「下からも風が出ていては、ダメです」
「出てないよ」
「できていたら、真ん中の横穴を塞いで、風が止まるのを確認してください」
 ハンナが、ポールの横穴を両手で握って塞いだので、俺は手を離して、上下に手をかざす、と風は止まっていた。
「止まってる」
「できたチームから、役目を交代してください」
 なんて、ローザ先生は言っているが、周りを見れば、できたのは、アリスだけだ。
 コンパイルすら、できていない子もいる。
 さすが、天才児。
「どんなスペル書いたの?」
「≪風/始点/横穴/上へ≫」
 おお、始点か。
「始点?」
 ハンナが聞く。
「はじまりの場所」
 アリスの声聞いたの、二回目じゃないか?

 俺たちは、教えてもらったスペルで、難なく課題を終えた。
 ハンナは、アリスと同室の子に挨拶したいようだったが、課題が終わっていなかった。
 そんなことより、俺はどうやってこのポールをクスネようかとばかり考えていた。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ

犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。 僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。 僕の夢……どこいった?

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...