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1805年/秋

体育授業

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「授業やんぞー!」
 ナンシー先生が、中庭で大声を出した。
 この学園には、女子学校なのに、最先端の教育の考え方から、体育の時間がある。
 身体を動かすことを学び、魔法を扱う集中力、体力を養うのが目的だ。
 もちろん、学年があがれば、魔法で身体を強化することも可能だが、素地ができていないと、怪我をするだけなので、基礎体力は重要だ。
 体育着は、麻のシャツとスカートで、魔法がかかっている。
 まだ、体育というカリキュラムが始まったばかりで未熟なため、体調不良者を出さないために魔法で、体温や発汗の状態などを監視している。
 それは、ローザ先生の役目で、中庭の隅で椅子に座り、目を閉じ集中している。
 このため、体育専門のナンシー先生が、実技指導する。
 彼女は、正式な教員ではなく、学園の警備隊の傭兵だ。
 将来を担う、かもしれない子供たちを警護するために、女性の傭兵が集められているのは、少し不安だが、軍には男しかいないのだから、仕方ない。
 ナンシー先生は、くすんだ金髪のショートカット。
 雰囲気は、バカ先輩に似ている。
 更にいえば、兵隊ってナニ食べてんの? ってくらい出るトコが出ている。
 これも、バカ先輩っぽい。
 同じ体育着なのに、縮尺がおかしいぞ。
「まず、中庭を三周走るぞ。ゆっくり、無理するなよー」
『はーい!』
 ゆっくり、と言ったくせに、兵士のゆっくりは素人の全力疾走、とでもいうように、自ら先頭を突っ走る。
 わき腹、いてー!
 俺らが三周走る間に、十周近く走っているナンシー先生。
 寄せた谷間を汗でテカらせてんじゃねえぞ。
 みなも、同じことを考えているのか、鋭い視線を胸元にやっている。
 基本、でかい乳は、敵だ。
「身体温まったから、身体の筋、伸ばすぞ」
 先生の指示で、身体を伸ばす。
 準備運動にストレッチやってから、じゃなくて、走ってからストレッチなのか。
 それにしても、身体が固いな、俺。
 無駄な動きも多いのか、息が切れるー。
 隣のハンナは、疲れた様子がない。
「実家じゃ、農作業とかもやってたから、全然平気」
 
 手を叩いて、ローザ先生が歩いてきた。
「エイミーさん、休憩です」
 どうやら、体育着の魔法で、引っかかったようだ。
 中庭の隅、水を飲んだ後、ローザ先生の隣で、座って見学しているのは、ナンシー先生の揺れ具合を見るはめになって、激しくムカついた。
 まあ、また医務室に運ばれなかっただけ、まだましか。
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