【完結】中身は男子高校生が全寮制女子魔法学園初等部に入学した

まみ夜

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1805年/秋

魔法学園入学

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 俺の名は、エイミー・ロイエンタール、六歳だ。
 女の名前なのに、俺と自称しているのには、訳がある。
 昨日、頭をぶつけたら、知らない記憶が浮かんできた。
 そこでは、俺は男子高校生で科学文明の恩恵を受けて生活していた。
 気絶から目が覚めると、六歳の自分の身体に戻っていて、心配そうな両親に看病されていた。

 今、その両親に連れられて、馬車で初等学校の入学式に向かっている。
 俺は、昨日から、不思議な前世(?)の記憶に魅入られていた。
 そして、昨日までの自分自身とは、感性が異なってきていることに気がつく。
 考えてみれば、エイミーとしての六年より、前世(?)の記憶は十六年分なので、そちらの方がボリュームがある。
 前世(?)にアイデンティティーが寄っても仕方ないのかもしれない。
 身体は子供で、頭脳は大人(高校生だが)状態だ。
 問題は、この身体が女の子で、俺の意識は男であり、でも、女の子としての記憶もあって、複雑な性不一致とも言える。
 昨日の今日なので、前世(?)の記憶が鮮烈なだけで、しばらくすれば、落ち着くのかもしれない。

 国の名前は、プロイセン王国。
 こんな名前、歴史でも地理でも習った覚えがないのだが。

 この世界は、前世(?)の記憶でいうところの産業革命直前の感じだ。
 蒸気機関が発明され、工場や鉄道ができはじめている。
 電気は、雷は電気、程度の理解で、一般的に利用されていないなのが、俺的には、不便だ。
 しかし、魔法はある。

 退屈な入学式を終え、親とは別れて、教室に連行される。
 この女子学校、白薔薇魔法学園は、初等部、高等部ともに全寮制のため、しばらく親に会わないで済むのは、前世(?)の記憶のせいで、少々行動が不自然になっていた俺としては、ありがたい。
 なので、親との別れを惜しむ雰囲気の教室には、馴染めないでいた。
 そもそも、俺は男子高校生でもあるので、初等部の女の子に囲まれて、馴染めるわけもない。
 とはいえ、隣の席でしのび泣いている子にハンカチを差し出すくらいはできる。
「ありがとう、ええと、」
「俺、じゃなくてワタクシ、エイミー・ロイエンタール」
「はじめまして。私は、ハンナ・チェスタ」
「よろしく、ハンナって呼んでいいか?」
「え?」
 やばい、言葉使いに気をつけないと。
「呼んでいいかな?」
「う、うん。いいよ、私もエイミーって呼ぶね」
 名乗りあっていると、教師が入ってきた。
「お静かに」
 髪をひっつめてメガネの女教師。
 メガネは、最新式の耳にかける部分があるタイプだ。
 学園の野暮ったい教員用の制服のためか、三十代に見える。
 黒板に、チョークで文字を書き、
「担任のローザ・ロッテルーノです」
 え?
 文字が読めない?
 前世(?)の記憶とは文字が違う。
「初等部の皆さんには、まだ文字のすべてを読めない方もいるでしょう」
 確かに、この魔法学園に入るのが決まってから、読み書きを習い始めたばかりだった。
「いっしょに勉強していきましょう」
 頭脳は大人の気でいたが、あいうえお(なのか?)から、始めないといけないらしい。
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