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??ローグ
ルート000:過去?
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俺は道に迷っていた。
右眼を悪くして、アーチェリーでのオリンピック選考を諦めた俺は、アーチェリーで就職できていた会社を辞め、持て余した体力を消費すべく、実家近所の山を歩いていたのだ。
山とは名ばかりの丘で、頂上の広場は、小学生の遠足での昼食ポイントだ。
俺の足ならば、昼食までに帰って来られるだろう、とペットボトルのお茶一本を手にぶら下げただけで、登っていたのだが、迷った。
こういう場合は、登るに限る。
麓に向かう、と何処に出るかわからないが、頂上は、ひとつだ。
数分歩き、茂みを抜ける、と拓けた場所に出た。
しかし、そこは頂上ではなく、村だった。
進む先はひとつ、ではなかったのだ。
ここは、プルーセンという土地で、住人が百名程度の村だった。
中世ヨーロッパ、といえばいいのだろうか。
電気ガス水道がない。
言葉は、英語が通じた。
しかし、俺の英語力も怪しいし、彼らの使っている言葉も英語ではなく、それに近い言語のようだ。
それでも、意思疏通ができたのは、ありがたい。
集まってきた村人に、旅人であること、道に迷ったことを説明した。
どうやら、言葉と服装から旅人と信じてもらえ、荷物がないことから、盗賊から逃げてきたのでは、と同情してもらえたようで、村長の家に泊めてもらえることとなった。
とはいえ、実は「盗賊の先遣隊かも」、と疑われていて、村長一家は常にナイフを隠し持っていた、と後で聞いた時には、笑い話だったが、笑えなかった。
夕食時に、村長が、小さな本を掲げて、家族でお祈りをした。
俺は、マネをするのは不敬な気がして、仏教的に手を合わせた。
祈ったのは、食事と村長一家への感謝だけだった。
ワラにシーツをかけたベッドに寝転びながら、帰れなかったら、どうしよう、と考えた。
しかし、人生の目標を失い、仕事も失い、戻れなくても、どうでもいい気持ちが強かった。
しかし、実家の家族が心配するのが、少しだけ申し訳ない気持ちだった。
朝食の時、俺は吹き出すのを、必死に堪えていた。
昨夜、ロウソクの灯りでは気がつかなかったが、お祈りに村長が掲げた本の表紙に日本語で、「魔法の教科書」と書かれていたからだ。
食事の後に、村長に聞く、とやはり神の聖典だったが、失われた言葉と文字で書かれていて、誰にも読めない。
大都市の教会では、偉い人に研究されている、とのこと。
中身を見せてもらう、と中身も日本語だった。
しかも、手書きなのだが、活字のような文字だった。
羊皮紙に、自分で書き写すそうだが、大元(といっても写しの写しの×十以上らしいが)が、こういう文字なのだそうだ。
読ませてほしい、とお願いすると、奥さんの聖典を貸してくれた。
そこには、スクロール、スペル、コンパイル、プロセッサ、キャストからなる魔法の使い方が書かれていたのだった。
フラグ:『魔法発見』
右眼を悪くして、アーチェリーでのオリンピック選考を諦めた俺は、アーチェリーで就職できていた会社を辞め、持て余した体力を消費すべく、実家近所の山を歩いていたのだ。
山とは名ばかりの丘で、頂上の広場は、小学生の遠足での昼食ポイントだ。
俺の足ならば、昼食までに帰って来られるだろう、とペットボトルのお茶一本を手にぶら下げただけで、登っていたのだが、迷った。
こういう場合は、登るに限る。
麓に向かう、と何処に出るかわからないが、頂上は、ひとつだ。
数分歩き、茂みを抜ける、と拓けた場所に出た。
しかし、そこは頂上ではなく、村だった。
進む先はひとつ、ではなかったのだ。
ここは、プルーセンという土地で、住人が百名程度の村だった。
中世ヨーロッパ、といえばいいのだろうか。
電気ガス水道がない。
言葉は、英語が通じた。
しかし、俺の英語力も怪しいし、彼らの使っている言葉も英語ではなく、それに近い言語のようだ。
それでも、意思疏通ができたのは、ありがたい。
集まってきた村人に、旅人であること、道に迷ったことを説明した。
どうやら、言葉と服装から旅人と信じてもらえ、荷物がないことから、盗賊から逃げてきたのでは、と同情してもらえたようで、村長の家に泊めてもらえることとなった。
とはいえ、実は「盗賊の先遣隊かも」、と疑われていて、村長一家は常にナイフを隠し持っていた、と後で聞いた時には、笑い話だったが、笑えなかった。
夕食時に、村長が、小さな本を掲げて、家族でお祈りをした。
俺は、マネをするのは不敬な気がして、仏教的に手を合わせた。
祈ったのは、食事と村長一家への感謝だけだった。
ワラにシーツをかけたベッドに寝転びながら、帰れなかったら、どうしよう、と考えた。
しかし、人生の目標を失い、仕事も失い、戻れなくても、どうでもいい気持ちが強かった。
しかし、実家の家族が心配するのが、少しだけ申し訳ない気持ちだった。
朝食の時、俺は吹き出すのを、必死に堪えていた。
昨夜、ロウソクの灯りでは気がつかなかったが、お祈りに村長が掲げた本の表紙に日本語で、「魔法の教科書」と書かれていたからだ。
食事の後に、村長に聞く、とやはり神の聖典だったが、失われた言葉と文字で書かれていて、誰にも読めない。
大都市の教会では、偉い人に研究されている、とのこと。
中身を見せてもらう、と中身も日本語だった。
しかも、手書きなのだが、活字のような文字だった。
羊皮紙に、自分で書き写すそうだが、大元(といっても写しの写しの×十以上らしいが)が、こういう文字なのだそうだ。
読ませてほしい、とお願いすると、奥さんの聖典を貸してくれた。
そこには、スクロール、スペル、コンパイル、プロセッサ、キャストからなる魔法の使い方が書かれていたのだった。
フラグ:『魔法発見』
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